第23話 「くっ、殺せ!」と女将軍は言った
「くっ、殺せ!」
「それ本当に言うやつ初めて見た……」
『アタシ様も』
魔族の軍勢は去り、残されたギマリリスは後ろ手で縛られ、地面に座らされていた。
ただのロープであり、あるいは彼女の力ならすぐに抜け出せるかもしれないが、暴れるつもりはないようだ。
魔族というのは、本当にシンプルに力に従う文化だと言える。
一騎討ちを受けるのも、そのためだ。
将が強さを示さなくては簡単に瓦解してしまう集団なのである。
これは、創造神デスマリスが急ごしらえした世界・デスマースを見放して去ってしまったことに起因し、女神に見放された種というコンプレックスから、何より名誉を好む。
人権思想は全ての人は平等という観点から始まるが、彼らの場合は見捨てられた者たちゆえ力を示して存在を認めさせるという地点がスタートになる。
勇者という仕組みはそれを逆手にとったものだ。
種としてアンバランスなほど強力な彼らに対抗すべく、最強の一人を生み出し、名誉を煽って敵将を釣り出し、一騎討ちで倒して追い返す――
機械みたいに合理的なノルマリスらしい、とはサキュレの談だ。
なんにせよ、ギマリリスが大人しいのは、自分を破った大介を勇者として認めているからだろう。
「下卑た男め……その下衆な視線で下名を下層に貶める下劣で下品な妄想をしているのだろう。下の下の下だ!」
その口以外は。
『モノでもぶち込んで黙らせたらどうだ?』
「……食いちぎられちまうだろこれ」
「なんだ、下名の唇ばかり見て……ハッ、やはりこの体に下衆な行為を働こうと、下世話な下心を……!」
「よくそんな下の語彙あるな……」
「シモの行為だと!?」
「お前何なんだよ! サキュレか!」
『オイ!』
顔を真っ赤にしながら、怒りの視線を向けてくるギマリリス。
「っていうかどうすんのよコイツ?」
ルサシネが眉をハの字にして嘆息した。
「ほ、捕虜として王都に連れて行くのがいいんですかねぇ……?」
「ですかねぇって、アンタ神官なんでしょ? 作法というか、こういう時どうやるのかって知らないの?」
「すいませぇん……私、勇者さまを召喚するまでがお仕事で……本来はそこから先は軍の管轄なので……ぜんぜん……」
「煮るなり焼くなり好きにしろ! 下名も四天王の一人! ひとたび地にまみれ、敵に下ったからには、例え下劣な運命が下されようと、受け入れる!」
ギマリリスは芝居がかった様子で宣言すると、土下座の姿勢になってお尻を持ち上げた。
「さぁ! さっさと私を穢せ! 下衆め!」
「はぁ!? アンタ何やってんの!?」
『ナイスヒップ!!』
「そ、そうですよぉ! は、ははははは、はしたないですよぉ!?」
「馬鹿め! 下卑た男の考えることなど同じ! 女を己のモノにして支配下におくことだけなのだ! コイツは今、下名を隷下におき下半身に精を放ちたくて放ちたくて仕方ないに決まっているのだ!」
「き、決まってなんかいませぇん! ダイスケさまは崇高な……」
「ダイスケがエロいからって、アンタに欲情するとは限らないでしょ!」
「はっ! 貴様らのような処女に、下名から溢れ出る色気がわかるはずがないだろう!」
「ふぁああああああ!?」
「しょっ、処女!? な、なに言ってんの! ケーケンホーフに決まってるでしょ!」
「はははは! 嘘をつけ! 貴様のようなちんちくりん、恋人すらできたことがないだろう!」
「なによ! なんでそんなこと言えるのよ! 見たこともないくせに! あ、あああ、アタシのテクニックなら、一晩10発は軽いんだから!」
「だったら下名は20発だ!」
「げ、げげ、現実的に考えて、8発くらいが限度だと思います! ああ、私、発なんてはしたないことを……」
「カマトトぶってんじゃないわよ! だいたい、何食べたらそんな胸になるのよ! 教えなさいよ! 牛乳? 牛乳でいいの!?」
「馬鹿め! 大事なのは下半身だ!」
「うっさい! 全裸の痴女は黙ってなさいよ!」
「誰が全裸だ! じゃあ何か? 毛皮を着ている人間は全裸か? これだから下等な人間は。そんな貧弱な胸と下半身をビキニで強調するなど、下策も下策!」
「うっさいうっさい! アタシはこれから成長するからいいんですーっ! ぜーったい巨乳になるんだから! だってママはすっごいんだから! っていうか何あれ、スイカ? ってくらいなんだから!」
「プー、クスクス! そうだといいな下等種族!」
「よーし、ブッ殺すわ痴女将軍!」
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