第22話 ――――――――――――――――――――――――!!!????
大介の手が、その体毛に覆われていない腹に触れる。
「『感度三千倍』」
「は?」
直後、ギマリリスが、跳ねた。
雷に打たれたように、背中を大きく反らせて。
「かっ……はっ!?」
腹に触れられただけだ。
だが、今まさに彼女の腹部には、背筋を逆撫でにされた時の感触を極大化した感覚が襲いかかっていた。
腰のレイピアに手を伸ばそうとするが、体毛の触れ合う感覚ですら、いや風が撫でる感覚ですら彼女には電流を流されるようなもの。
まともに剣を握れず取り落としてしまう。
「貴様、下名に何をし……」
「ごめん……ごめんっ!」
大介は、繰り返した。
そして、無造作に、彼女の引き締まった胸を、掴んだ。
「――――――――――――――――――――――――!!!????」
ギマリリスが、声にならない絶叫を上げた。
それは人間には、いや魔族ですら本来出せないであろう高音。
声だけではない。
体は弓のように大きく反らされ、全身が激しく痙攣、涙が溢れ出し、口の端がらよだれが滂沱のように噴き出した。本人の名誉のために詳細は伏せたほうがよいものも、まき散らされた。
そして、大きく痙攣すると、その場に崩れ落ちた。
完全に、気絶していた。気絶してなお、その体はビクビクと痙攣していた。
『完全にイったな』
「イったなじゃねえよ、やりすぎだろ……」
大介はドン引きしていた。
先ほどまで自分を殺そうとしていた魔族だが、ここまでの姿は、あまりに忍びない。
『よし、このままヤっちまえ』
「その必要もないだろ……」
ギマリリスの勇者を倒す術すら効かなかった上、たった一撃、それも目にもとまらぬ速さで倒されてしまった。
魔族の動揺は凄まじいものだった。
強さだけで統率された彼らの軍勢は、途端に中心を失った。
そこに、いつの間にやら気を取り戻していたホルシュが腰に手を当てて高らかにこう言った。
「どうですっ! 見ましたかっ! これが勇者ダイスケさんの力ですっ!!」
「ゆっ、勇者だと!?」
「倒したはずでは……」
「ちくしょう、こいつが本物だったんだ!」
魔族たちに動揺が広がる。
その気になれば大介たちなど簡単にすりつぶせてしまう魔人たちが、慌てふためいていた。
「ひけーっ! ひけーっ!!」
副官らしき巨漢が大声で叫ぶと、魔族の軍勢は雪崩をうって反転した。
いや、その声がなくても既に魔物たちが逃げ出していた。
魔族たちは後を追いかけるように遁走していく。
その逃げ足は見事なものだった。
あっという間に平野のかなたに逃げ去っていき、地面はぺんぺん草も残さぬ踏み荒らされようで、巨大な街道のようにすらなっていた。
そして、体液まみれのギマリリスだけが残された。
「えっと……どうしよう?」
『とりあえず一発ヤっとけ』
「却下」
とりあえず大介は、倒れたギマリリスに上着をかけた――
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