第16話 やはり今世界に必要なのはエロ

 ゴートスフィンクス退治したが、一行はデーン村へ戻るのはやめ、グリン村に戻ることになり、街道をとことこ歩いていた。


 というのも、ルサシネを岩に縛りつけ、生贄にしていたのはあの村の人々であったからである。


「いやね、あたしも悪かったとは思うわよ。魔物退治を引き受けといて、返り討ちにあっちゃったんだから……でも、だからって生贄は酷くない?」


 ルサシネは憤懣やるかたなしといった様子だ。


「そうですねぇ……ノルマリス様も生贄は求めていませんし……なんであそこまで……」


「お前のことだから、よっぽど調子に乗って、大船に乗ったつもりでいなさいよとか言っておきながら、いざアイツが出てきたら両脚ガクガクでまともに戦うことでもできずにM字開脚で倒れてたんじゃないのか?」


「何で一字一句違えずに正解するのよ!!」


 ぽかぽか殴られた。


「ま、まぁ、それにしたって生贄はやりすぎだけどな……」


「そうでしょ!」


「アマゾオンと魔族と……戦争続きですからねぇ……みなさん心が荒んでいるのでしょう……」


『やはり今世界に必要なのはエロ』


「と言っても、どうしたもんかなあ……勇者として魔族を倒すって言ったものの……」


「あれほどの怪物がいたってことは、近くまで魔族が来てるんでしょ。たぶん、軍からはぐれた魔物だろうし」


「そうなのか?」


「そりゃそうでしょ。あんなのノルマリス様の作る世界にはいないもの。魔族が連れて来たものよ」


「なんであんなやばい生き物を連れて来るんだ?」


「は、あんた何も知らないのね」


 嘲笑うように言うルサシネ。


「……そんなんだから生贄にされるんだ」


「なっ、それは今関係ないでしょ!」


「まぁまぁ~、魔族はめちゃくちゃ強いそうですから、魔物なんかも兵隊代わりに使ってるみたいですよ~」


「はぁ!?」


 あんな猛獣を操れるような奴らだというのか。


『魔族ってのはな、もとは魔界に住んでたんだが、そこはデスマリスっつー、超テキトーな神が作った世界だもんで、バランスぐちゃぐちゃの過酷な環境だったから、強い奴しか生き残ってねえんだ。強えぞ~イヒヒヒ』


 サキュレが大介の頭の上に降りて、言う。

 純粋培養な狂戦士たちということだろうか。


 そんなのに勝てるわけが――


「なによ、あんた勇者のくせに怖いの?」


「なんでそんなに自信満々なんだよお前……逆にすごいよ、尊敬する」


「バカにしてるでしょ」


 やいのやいのやっている二人の様子を見て、サキュレが今度は耳元に降りてくる。


『お前、童貞のくせに、ルサシネとは普通に喋れるんだな』


 サキュレだけに聞こえるようにぼそぼそと返す大介。


「やめろ、意識しちゃうから。こいつは、なんか野郎の同級生とか後輩みたいな感じなんだよ。胸もないし」


「全部聞こえてるんだけど。殺すわよ。いや殺す!」


「じ、地獄耳!」


 折れた剣を振り回し、大介を追いかけるルサシネ。


「……むぅ、仲良しでいいなぁ……」


 ホルシュが少し寂しそうにつぶやいた。


『……全くこいつらはどうしてこう、めんどくせえのかねえ……』

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