第21話


 かざねへと直接攻撃に転じていたイノセントの一体は、拳を振り下ろすことに躊躇はなかった。


 敵の命を断ち切ること。


 そのために必要なエネルギーの一切は、彼らにとっての「呼吸」にも等しい所作である。


 自律する神経系。


 反射的に動く筋繊維。


 それらはまるで自然の法則のど真ん中を横断するように、なんの歪みもなく“通過”していた。


 着弾までの断片的な間合いや距離は、すでに思考の“外”だった。


 シールドのある無しに関わらず、イノセントは落下する重力の「底」にいた。


 かざねの心臓の近くへと。



 ボッ



 シールドの表面、すなわち形成された量子エネルギーの外殻に触れるや否や、イノセントの右腕が吹き飛ぶ。


 それは回転するエネルギー流域に引き裂かれたからではなく、外殻の内側から伸びてきた「一撃」に、細胞ごと弾き出されたからだった。


 かざねは待ち構えていた。


 落下してくる「地点」を。


 量子エネルギーの流域は球面上に渦巻きながら、圧縮された密度をある一定の範囲内に集束させていた。


 シールドは敵の攻撃を「受け」流す。


 そしてその受けの部分においてエネルギーを一部吸収し、自らの体内へと変換していた。


 ——外部への、出力へと。

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