第20話
イノセントとの戦闘は“空間認識能力”がもっとも肝心となる。
それは敵の移動範囲が空中や地面を問わず、地面の「内側」にまで及ぶためだ。
レベル5(ファイブ)のイノセントともなれば、その身体能力は対イノセント用の一小隊を殲滅させるほどの脅威となる。
真正面からぶつかり合うことは、生身の人間が、向かってくる電車の真正面に立つことにも等しかった。
“通常”であれば。
しかしこの場面。
相対する二者間の間によって生じた凄まじい衝撃波の波紋は、決してイノセントの優勢とその「脅威」を示唆するものではなかった。
イノセントに「意思」があれば、かざねのフィールドに立ち入ることを躊躇しただろう。
それほどまでに、二者の間には決定的な力の差があった。
かざねは“第6地区”の特務捜査班の中で、ナンバー2の実力者だった。
イモータルには戦闘員としての技術と訓練を受ける者もいれば、人々の生活の中で特別な職を持っている者もいる。
医療施設の職員や、工場で働く者。
カフェの経営者や大工。
その形態は様々だ。
かざねは生まれながらの前者だった。
イノセントを殲滅するためだけに訓練を積み、特別な待遇を受けてきた存在。
一部の人たちからは、“使い捨てのモルモット”という蔑称を受けていた。
彼女は、『神々の実験』と呼称される傭兵養成プログラム、「スカイ・ビークル」の一員だったから。
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