第16話


 イノセントたちは即座に次の行動に移っていた。


 衝突範囲を狭めない地上への投擲は、かざねへの直接攻撃を狙ったものではない。


 空間の中に伝わる電磁波の流れを読み取り、かざね自身の危険性を即座にキャッチしていた。


 地上へのダイブ。


 巻き上げられた粉塵によって視界が遮られていたが、関係なかった。


 イノセントたちには光のエネルギーを感知するための器官が備わっていない。


 すなわち、人間の体に備わっている「視覚」は元より存在しておらず、周囲の電磁波の流れや熱の流域によって空間の状態と広さを把握する。


 彼らにとっての「視覚」は、空間上に広がっている”面そのもの“だった。


 局所的な部分を捉えるのではなく、“全ての角度、方向から”、物の形や動きの識別ができる。


 対象をいろいろの見地から見ることができる複眼——


 そう言った方が良いだろうか?


 あらゆる場所と箇所に設置された、無数のカメラレンズを通した世界。


 そのレンズの先に映し出されるのは、全方位からの立体映像だ。


 イノセントは“把握していた”。


 かざねの位置を。


 「場所」を。

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