第11話



 ——同時刻



 地上への落下を試みるイノセントが、2体いた。



 「ツインタワービル」56階からの跳躍。


 飛び出した窓枠の足元で、散らばっていたガラスが飛散する。



 イノセントたちの身体能力は、個々によってばらつきがある。


 それはあらゆる地上生物にも言えることだが、“イノセント自体”には、特有の固有情報(遺伝子情報)が存在しない。


 正しくは、遺伝子情報が一つの枠組みに中に“構成されない”と言った方がいいだろう。


 彼らは自らの体内情報を外に流出することができ、かつその生体領域に於いてあらゆる情報の組み換えを“断続的に”行うことができる。


 言い換えれば、ビデオの中に保存された映像を部分部分で自由に入れ替えることができ、その上で、1つの「時空間情報=X座標」を消失しない。


 つまり一つの個体として存在しながらも、“特定の情報境界=遺伝子配列のコーディング領域が無い”超臨界状態にあるとされており、物質としての外側と内側、——1個の生物として完全な機能をもつ最小の単位が、常に剥き出しな状態にあるとされていた。




 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る