第3話



 氷室かざねが所属している『生活環境捜査課』とは、グラウンド・ゼロの街の保全を管理している「都市公安委員会」の生活保安部第3課に当たる。


 主な業務は市街地内部、及び郊外の危険因子の調査や“環境汚染度”のチェックだ。


 グラウンド・ゼロでは数百年も前から『黒点エネルギー』と呼ばれる謎の暗黒物質が各地で蔓延し、人々の生活を脅かしていた。


 街で暮らしている人々の寿命は、平均50歳にも満たない。


 これは蔓延した暗黒物質の影響を受けているからとされており、「黒死病」と呼ばれる病を発症する人が、都民の6割以上にも上っていた。


 暗黒物質の成分は未だ解読できておらず、この物質は人々の細胞を変質させ、体内にある高分子生体物質のデオキシリボ核酸(DNA)の改竄を行うことで知られている。


 また、この暗黒物質は“意思を持つウイルス”とも揶揄されており、黒死病に罹った人が個々の人格を失い、「アポトーシス」と呼ばれる怪物に変異してしまうことから、現在は都市の総力を挙げて原因の解明に当たっている。


 生活環境捜査課の職員は皆、日々拡大を続けている暗黒物質の駆除活動にも尽力しており、その業務は多方面に及ぶ。



 ——もっとも、捜査課の中の『特務捜査班』だけは、一部の例外を除き、主に“戦闘面“での業務に当たることがほとんどだが。

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