第6話 村
「よし、それじゃあ今から村長、呼んでくるね。ちょっだけ待っといて。じゃあシェリ、行こ!」
そんな
「すみません。あんな人懐っこくって。」
「いえ、全然気にしませんよ。あのぐらいの年齢だったら、逆にちょうどいいですよ」
そんな続かない会話、と呼んでよいのかすら怪しいが、をして晴れ渡った空を見る。この2日連続の快晴を見ると、この世界には雨の日なんてないんじゃないか、というぐらい綺麗だった。
私が空をぼーっと眺めている間に、腰に剣をさして、恐らくあの2人の護衛として同伴していたのだろう、同い年ぐらいのレクは、こちらの様子をチラチラと窺っている。
このなんともいえない空気感を破ったのは、1人の老人と見るからに屈強な男を引き連れた、シェリとレイサだった。
「とゆーことで、戻ってきたよ!それじゃあ紹介するね!」
と、ご老人の方を指して
「この人は、この村『ソリアス』の村長で、ゾリエゾさんです!」
そう元気よく紹介すると、その老人は、フォフォフォ、とその様子を微笑ましそうに眺めながら、こちらに会釈する。続けて
「この筋肉モリモリの人は、この村で一番強い、ガイエルさんです!」
そうして、紹介された男、ガイエルは、よろしく、とこちらに手を差し出す。
(いや、まだ私名乗ってないけど?)
そう思いつつ、どうも、とその手を握る。その手はゴツゴツしていて、マメも見られた。
「それじゃあ今度はお姉さんの番ね?」
目をキラキラ輝かせながら言う。ただの自己紹介にそれほど期待されても仕方がないのだが。
「えーと、リンカです。草原をよくわからず歩いていたところを、この3人に拾ってもらいました。」
と、少し相手の様子を窺うように言う。
「ふむ、それは苦労したじゃろう。何せ、モンスターもおるしな。しかし、いったいどのようなことがあってあのようなところを迷うのじゃ?見た感じでは、我々よりもずっと上の立場のように見えるが?」
そう目を細めながら、こちらを見る。うん、確かにね。あなた達の服は、現代の地球で生きていた人とはかけ離れてるしね。
そう思いながら、特に凝った装飾や、ポケットすらもなさそうな服を見た。だいぶ簡素で、冬服とかもこの感じならだいぶ寒そうだ。流石に動物の毛皮ぐらいは使うだろうけど。
(って、そうじゃないわよ。確かにいきなり現れて、草原で迷子でした、とかこの服とか怪しいわよね。異世界ものじゃ、テンプレみたいなものだったのに、失念してわ!)
そう自分の馬鹿さに呆れつつ、
「えーと、正直自分でもあまりよく分かってなくて、、、、」
と、そう答えると、そんな私の発言に少し困ったようにこちらを見る村長さん。そして、それに初めに反応したのは村長ではなかった。
「ふーん?ほんと変わってるねー。でも、別に悪そうな感じじゃないしいいんじゃない?」
そうレイサが言う。うーん、こう言う時にありがたいよね。この周りの雰囲気を感じ取れない人。
若干呆れつつ、レイサを見て、
「そうですね。私としても、受け入れてくれるとありがたいです」
そして、しばらく村長は沈黙したのち、
「わかった。それじゃあ、わしについてきてくれ。少し話をしたい。」
そして、先を歩いていった。
「というわけで、状況が自分でもよく分かっていない、ということじゃが、どうしようかのぉ、、、、」
と、困ったようにこちらを見る。
「うーん、本当に正直自分でもよく分かってないから何にもいえないんですけど、、、、
ただ、この村で短い期間でもいいので受け入れてくれたら、嬉しいです。やってほしいことはやりますから」
「ふむ、若い娘がそんなことを言うものではないぞ?発言には気をつけなさい。じゃが、しかし、そうじゃなぁ」
と、受け入れていいのか、否か随分悩んでいるようだった。
(確かに、今ある情報だけだったら十分怪しいものね。どうしたらこの村で泊めてくれるかしら。自分の持ち物を見せても、さらに怪しまれるだけよね。うぐぅぅぅ)
内心頭を抱えつつ、どうしようか考えていると
「あら、そんな若い子なんでしょう?受け入れて差し上げたら?不安なら、監視役として誰かに見てもらえばいいじゃない」
思いがけない助け舟が、横から来た。うん、本当に村の人に救われてるわー。
そこには、村長の夫人と思われる人が優しいそうな顔を浮かべてこちらを眺めていた。
「いや、しかしじゃなぁ、監視と言ってもどうするのじゃ?相手はまだ若い娘じゃぞ?」
「そうですねぇ、基本的に昼はこの村の男の誰か最低1人と行動してもらうことにして、夜は、ガイエルさんご夫婦の家で寝てもらえばいいじゃない」
「いや、しかし同じ家にいるからといって、安心できるものか?」
「もう、あなたはぐちぐちうるさいですね。さっさと受け入れてあげなさい。こんな村に、たった1人の小娘に盗まれて困るようなものはないでしょう?」
村長は再び沈黙したのち、
「わかった。受け入れよう。ただし、こちらとしても多少の条件は付けさせてもらうが構わんか?」
「えぇ、受け入れてくれるだけでありがたいです!体でも何でも使いますから!」
村長に対して、そう身を乗り出しながら答えると、相手は苦笑して、そこまでせんでも大丈夫じゃよ、と答えた。
あぁ、ようやく、ようやくこの理不尽な私の身に安寧の時が!
そうして、私はしばらく歓喜に身を震わしつつ、村長の話を聞いていた。
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