第4話 神はどこに?
「あぁ、空が赤く染まっている。情熱的で、燃えるような赤。まるで、今の私の心のよう。」
って、私は何を言っているんだろうか。多分、というか絶対に疲労が原因だ。そして、それの全ての元凶は、この世界の神!いるかは知らないけど。
「うん、だっておかしいもの。異世界来て?気づいたら大草原。初めからチートを持っているわけでもなく?どこに何があるかもわからず
何故だろう、とてつもなく虚しくなってきた。
「くっ、ダメよ!せっかくの異世界、誰もが体験できるわけじゃないことよ。楽しく生きるのよ!姫宮!」
そう自分を奮い立たせる。
が、よくよく考えればもう夜である。うん、夜だ。視界はよく見えないし、かつ知らない場所。そして、敵となるモンスターも蔓延る中で、果たして自由に歩けるのか?
(えっ、本当にどうましょ?かなり詰みじゃない?せめて、人がいる近くに転移して欲しかったのだけど。え?本当にどうしよ)
今更ながら、頭が混乱し始めた。もちろんテントなんて持ってない。明かりとして使えるのは、スマホぐらい?でも、それでも弱すぎる。
「とりあえず、本当に注意しながら歩く、これしか出来ることはないわね」
どうかモンスターと遭遇しませんように、そう願いながら、川に沿ってある行く。あ、あと、人と会えますように。
「私はきっと神がいるならば、恨むだろう。いや、すでにある程度キレてたけど。」
そう暗闇の中呟く。きっと神様は今の私の現状を見て、おもしろがっている。あるいは、私を使って遊んでいる。そう思わずにはいられなかった。だって、お願いして歩いて2分も経たないぐらいで、エンカウントよ?!ありえないわー。
いま、私の前には、グギャグギャ、気持ちの悪い声をあげながらこちらに向かってきているモンスター、恐らくゴブリンがいる。
私が、恐らく、と言ったのは月明かりでかろうじてそのシルエットが見えているだけだからだ。まぁ、序盤のモンスターで、気持ち悪い、と言えばゴブリンに限られるし、そのシルエットが人型であるからだ。
そして、その手には何かを持っている。恐らく、棍棒。幸い、相手は走りが遅いので、適度に後退しながら、距離をとっている。
個人的には、隙を見てスライムの時のように、一撃で終えられたらベストである。が、万が一あの棍棒の一撃を受けてしまったら?相手の頭は私の胸の位置よりも低い。だから、受けるとしたら脚になるのだろうか?これからのことを考えてもかなり致命的である。
そんなことを考えながら、躓かないように注意しつつ下がっていると、後ろから
「グギャァ!」
という声が聞こえてきた。咄嗟に横に跳んで、その勢いのまま体を一回転させる。
ドゴッ、という地面に何かを打ちつける音の後に、グギャァ、という、2体目のゴブリンの声が聞こえる。
「マジで、最悪」
思わずそう呟いてしまう。正直腰が引けていた。もう少しぐらい自信を持って、戦いにいけばよかった。
2体のゴブリンは互いに目を合わせて、グギャグギャ言いながら、こちらを見て笑う。何を話しているかは知らないが、口から涎が垂れていて、気持ち悪い。
やがて、2体のゴブリンが駆け寄ってくる。
(とりあえずここであいつらの武器を奪えば少しぐらい後が楽になるはず。逃げるより、戦った方が、、、、)
そんなことを考えつつ、ゴブリンの様子を伺っていると、4,5m前で二手に分かれた。
どうやら、それをするぐらいの頭は回るようだ。
とりあえず、挟まれた状況を変えるために
後ろに下がりつつ、カバンから何か適当なものを取り出す。何を取り出そうか、なんて考えている暇はない。
そして、取り出したもの、ポケットティッシュを右手側のゴブリンに投げる。
(いや、この際ラノベでもいいから、もっと攻撃力あるやつが良かったんだけど⁈)
そんなことを思いつつ、左手側から迫ってきたゴブリンの攻撃を右に跳んで避ける。
ポケットティッシュでも、この暗い中だったのでゴブリンもよく見えなかったのだろう、驚いてくれて助かった。
そして、もう一体のゴブリンの横からの棍棒の攻撃を後ろに跳んで避けて、着地すると同時に前に一歩踏み込み、蹴り上げる。
「グギャッ!」
「イッヨシ!決まったって、危なっ!」
ギリギリのところで元気なゴブリンの攻撃を避けつつ、その一体にも蹴りを決める。
グギャッ、だという声の後に、ゴトッ、と地面に棍棒が落ちる音が聞こえる。それをすぐに拾い上げて、再び仕掛けてきたポケットティッシュを当てられたゴブリンの攻撃を受けと止めて、押し返す。
(はぁぁ、本当にスライム狩っといてよかったー。ある程度強くなってたおかげね。こんなにうまくいったのは)
「さぁて、暗くてよく見えないけど、覚悟しなさい!フッフッフッ、武器を得た私に敵なしよ!」
そうして、私はゴブリンに棍棒を振るった。あぁ、ストレス発散、最高!
で、私は2体のゴブリンを倒し終えて、再び歩き出したのだが、今、私の目の前にはゴブリンがいた。一体だけ。だけど、さっきから5分経っただろうか、、、、?
「あぁ、哀れな私に恵みを施してくれる神はどこに?」
そうして、星々が輝く綺麗な夜空を仰いだのだった。
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