第3話 異世界生活の始まり
透き通るような心地の良い風に、小さく揺れる、しっかりとしたみずみずしい草。その上空を覆うのは雲ひとつない青空。そして、そこに
目が覚める、私はそんな場所にいた。ここは日本のどこかの平野だろうか?あるいは、世界の。薄暗い、足元も見にくいような路地裏からこんなひらけた場所に突如人が現れるなど私は驚くし、周りも驚くだろう、、、、
って、そういうことじゃない!いや、確かに驚くだろうね。そりゃあ、人が本当に瞬間移動したみたいな話だしね!
じゃあ、どういうことなのかって?決まってるでしょーが!
私、姫宮 凛華は晴れて異世界に来ました!二度目の人生を謳歌し始めます!いやっふぃ!
「いやぁ、私がいかに寛容でも?流石にチュートリアルぐらいはほしかったよ?転移前に神様に会うとかね?でも、まぁ、きっと神様から最高のチートが与えられてるはず!それで、許す!」
チート、例えば、聖剣〇〇召喚とか、魔法無限に使える、とか。いや、別にね?チートをめちゃくちゃを欲しい、って思ってるわけじゃないのよ?ただ、チュートリアルがなかった代わりにそれぐらいはあってもいいのかなぁ、って思うじゃん。
「って、私は誰に何を言ってんだか。まぁまずは異世界に来たんだしね。やることやんないと」
そして、私は大きく息を吸い込み
「開け!私のステータス!」
右手を空高く突き上げながら叫ぶ。が、うん。普通に考えたらヤバいやつじゃん。いや、周りに誰もいないけど!いないけども!
「いくら1人だからって、やることに限度はあるわよね。」
うん、これからは考えて動こう。これでステータス出てこなかったら、ただのイタイやつで終わってたわ。
自分の行動に反省しつつ、いそいそと目の前に現れた、宙に浮かぶ文字の羅列、ステータスを見る。
名前 ヒメミヤ リンカ
年齢 17歳
体力 130
筋力 100
魔力 150
スキル ブースト(1/5)
魔法適正 無
加護 武の神(強)、愛の神(強)
知の神(強)、自然の神(強)
「、、、、なんというか、反応しづらい。」
思わずそう呟いてしまう。いや、確かにチートは授かっているのかもしれない。最後の加護の項目は恐らく、この世界の標準から外れている、はず。もちろん、いい意味で。いや、そうでなければ困るのだが。
その他のステータスのところは、正直なんとも言えない。というか、この世界の標準、知らないし。当然だけど。
ただ、一つだけ文句が言えるところがある。というか、ほっっっっっっんとうに意味がわからない。だって、
「異世界にきて?魔法適正『無』?は?舐めてんじゃねぇぞ!おい、コラ。上から私のこと、見てる神!さっさと、欲しい魔法使えるようにしろや!ステータス、魔力が一番高いだろうが!」
そう澄み渡った綺麗な青空に向かって叫ぶも、ピィピィ、という鳥の甲高い鳴き声のみが返ってくる。え、鳥が私のこと煽ってる?さっきまで鳴いてなかったくせに。
「おい、コラ!降りてこいや!焼き鳥にしてやっからよ!あ、そっちから喧嘩仕掛けてきて、逃げんな!おい待て!食事!」
そうして、私は空高く飛ぶ、鳥を追いかけた。
で、はい。落ち着きました。もうスタート地点がどこか分かりません。いや、ちゃんとカバンは持ちながら走った。うん、全てあの鳥のせいだ。
そんなことを考えつつ、完全に肩で息をしてしまっているので、ここでひとつ深呼吸。
「さぁて、どうしましょ?私の持ち物は、ラノベと筆記用具にスマホとハンカチ、それから、、、、」
そして、一旦持ち物を確認して、武器になりそうものは特になく、そして、食べられる物もなかった。近くに村か集落とか、なんでもいいけど人がいなければかなり詰みである。
「なんてったって、異世界だもの。モンスターがいないわけがないわよね。」
と、ゴブリンやスライム、空を舞うドラゴンを想像して、ゾッと悪寒を感じたところで、カサッ、という音が聞こえてきた。
(まさか、本当にモンスターがきた?いや、あんな叫びながら走ってたし、もしいたら、気づかなくてもおかしくないっ!)
そう勝手な自分の愚行に後悔しつつ、音のした方の様子を伺うと、ポヨン、という音が似合いそうな感じの水色の『何か』が跳んでいた。
「って、あれ、スライムよね?目も鼻も口もないけど。絶対にこっちに向かってきてるわね」
一定のリズム間隔で近づいてくるスライムに、後ろに下がって距離を置きつつ、どうするかを思索。
(相手のことは、よくわからない。どんな能力を持ってるかとか。でも、人が近くにいるかどうかわからない以上、ある程度鍛えることも重要。あれを、定番の雑魚と捉えるかどうか。強い可能性だって否定できない。)
そして、私が出した結論は、スライムが跳んだ瞬間、
「ふっ!」
そんな掛け声と共に、スライムの横に脚を入れる。シャッ、という蹴りが空気を割く音の後に、スライムの体は大きく飛んでいきます、ポヨン、ポヨンとバウンドする。
「さぁ、かかってきなさい!あなたが死ぬまで相手してやるわよ!」
そう覚悟を決めて時、
『レベルが1から4に上昇しました』
という、機械っぽくはないけど、事務的な感じの声が脳に響く。その知らせに、私は
「は?」
固まった。
こうして、私の異世界初戦闘は覚悟とは裏腹に、呆気なく一撃で終わった。
「いや、もう少し粘れよ!」
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