ep.16 牙出現!!

 生徒会室では、鳴と茜の二人が壱の対処について話し合っていた。

「何も退学だなんて、そこまでする必要なんてないんじゃないかな?」

「ここまでやらないと、アイツも真剣にならないわよ。アンタも分かってるでしょ?」

「それもそうだけど…

あの子も、この学校には必要な存在だと思うんだけどな?」

「どんな要因で必要なのよ?

他の生徒が彼女の真似をするようになって、風紀が乱れる事になる可能性を考えられないのかしら?

それにアイツ、クリーチャーガンハンターとかいう怪しい組織のメンバーに…」


その時鳴の脳裏に浮かび上がったのは、以前、壱によってクリーチャーガンを持った生徒から助けられた事だ。


「(あの時は全然ありがたみがない態度だったけど…

でもアイツがいなければ、私は死んでたかもしれないのも事実だわ…)」

「どうしたの?会長?」

「な、何でもないわよ!

それよりも他の生徒会役員達に、月岡をどうするべきか聞くわ」


「月岡壱について、わたくしに質問でも?」

美鈴が、振り向きながら言った。


「岸間、いつの間にかいたのね

アンタ、月岡についてどう思ってるの?」

「確かに会長の仰る通り、彼女は不要な存在かも知れません

でも、彼女をここから放り出した所で、何をしでかすか知ったことではありません

月岡壱の事は、わたくしが一番存じ上げて申しますわ

ですから、彼女のことをどうするかは、このわたくしが決めますわ!」

「…アンタ、一体何を言ってるの?」

「要するに、会長のような方は手出し無用だということですわ

わたくしは用がありますの、ここで失礼させてもらいますわ」

こう言って、美鈴は生徒会室を出ていった。


「相変わらず、岸間の考えてることはよく分からないわ…

出田は今は居ないし…

串野美優と丹優、アンタ達はどう思う?」

鳴は、パソコンに向かう串野姉妹に話しかけた。


「お言葉ですが会長

会長は月岡壱という生徒のことをよく理解した上で、物を言っているのですか?」

先に口を開いたのは、姉の美優。

「なっ!アンタなんて事を!」

「この金剛台の生徒会長である以上、ここに通う生徒達の内情は概ね理解しているというのが理想なのですが…

まさか、生徒一人のことも理解していないと?」

次に丹優が言う。

「アンタ達もバカね

この学校に何人の生徒がいると思ってるの?

そんな沢山の生徒一人一人の事なんて分かるわけないでしょ?」


「「甘いです、会長」」

以下、交互に美優、丹優が話す。

「この世を制すには、あらゆる事象を知り尽くすこと、つまりデータが物を言うのです」

「生徒達の声に耳を傾けることもせず、自分に都合のいいルールをふりかざすような人に、この学校の未来を任せられるとは思えません」

「「それとも私達、何か間違ったこと言いましたか?」」


「私は月岡の事について訊いたのよ

私についてどう思ってるのかなんて訊いてないわ!」

鳴が言い放つ。


「そうですか?」

「私としてはここまで堕落した生徒がいることについて、模範となるべき会長がどうあるべきかを…」


「二人とも、これ以上会長のことは悪く言わないでよ」

茜が口を挟んだ。

「米田!」

「確かに会長は周りの人のことを考えるのが苦手なのかもしれない

でも、だからこそ私は会長の力になりたいんだよ

この学校のみんなのためにね」


「…美優、こんなことで張り合ってる暇はないと思う」

「そうね丹優

会長、好きなようにするといいです」

串野姉妹は、再びパソコンに向かった。


「ぐッ…」

鳴は歯を噛み締め、悔しそうな様子を見せる。

「どう、会長

後輩にあんなふうに思われるなんて」

茜が話しかける。

「あんなの、別に気にしないわ

私は私のやり方を貫く」

「どうしても自分がダメだって感じたなら、たまには頼ってもいいんだよ?

私はいつだって会長…

いや、鳴の味方なんだから」

茜は両手を鳴の肩に乗せ、顔を合わせながら言った。

「ちょっ!…

「アンタ、顔近いわよ!!」

「フフ

鳴ったら、照れくさいんだから」



 壱らの前に現れた女は、次藤陽奈と名乗った。

彼女はNONA FANGSなる組織の一員であり、壱を見て何やら繋がりがあるような素振りを見せていた。


「壱?

それについて何か知ってるのか?」

仁子が訊いた。

「いや

ただ、脳の片隅に僅かに残ってる…気がするんだ」


「テメェら命拾いしたな…」

舞は二人を睨みつけながら言う。

「とにかく彼女を傷付けられちゃ困るんでね

キミ達と戦うのはまた今度さ

それじゃあ失礼!」

麻希は羽根のようなものを広げ、舞を連れて飛び去って行った。


「待てッ!!」

仁子は叫ぶも、もう遅かった。


「また、厄介なのが増えた気がします」

と、美久。



 日が流れ、試験の当日は近づいていく。

1年D組の教室に、ある生徒が入ってきた。

「失礼いたしますわ」

その生徒とは、美鈴だった。


「生徒会役員にして2年A組学級委員長、岸間美鈴と申します

このクラスに乙女ヶ原奈緒という方はいらっしゃいまして?」

「私に何の用があるっていうの?」

奈緒は席から立ちながら言う。

「屋上で呼んでいる方がいますわ、至急そちらへいらっしゃいませ」


「何か怪しい匂いがする

私もついていこう」

「月岡壱、あなたに用はありませんわ!」

美鈴は、壱を止めた。


「ちょっ…」

「これは乙女ヶ原奈緒自身の問題ですの

さぁ、お急ぎになって!」


奈緒は訳も分からず、言われた通り屋上に向かった。


屋上で待っていたのは、奈緒にとって見覚えがあった三人だった。

G組のいじめっ子、藜崋とその仲間だ。


「アンタ達、もう顔も見たくなかったんだけど…

一体何の用?」

奈緒が訊くと、藜崋は答えた。

「乙女ヶ原奈緒ォ!!

アタシはあの日から、テメェを痛い目に合わせてやることだけを考えてきた!」


奈緒は以前、壱に頼まれて圭についての聞き込みをした際に、G組に入ったことがある。

ここで藜崋に会ったとき、奈緒は彼女に対して、今まで会った人物の中で本気で殴りたいと思ったほど最低な人間だと感じたのだ。


「まあ、黒木みたいなゴミクズが、今もなお生きてるって事を考えると胸糞悪いがな…

アイツに恨みを持つ奴を利用して、処分を任せようとしたんだがよ

全員しくじって地獄行きだ

マジでクソの役にも立たねぇゴミどもだよ

そんでアタシはムカついてる

もう黒木はいいから、次に腹立たしいテメェをぶっ潰さねぇと気がすまねぇんだよ!!

乙女ヶ原奈緒!

もう知らん顔して逃げたって無駄だ!

テメェの顔はもう覚えた!地平の果てまで追いかけても、テメェをぶっ殺す!!」


藜崋の話を聞き終えると、奈緒は半ば呆れたような顔をして言った。

「へぇ

相変わらず、聞いただけで吐き気を催すような口振りだこと

お陰であのクラスも、毒気に侵されてるはずだわ

それで?私を殺すなんて勇気、どこにあるというの?」

「ほう、ならばコレを見ても、そんなこと言ってられるか?」


藜崋の制服の袖口から、赤紫色のうねうねした物体が現れた。

それが藜崋の右腕に絡みつくと、銃のような形状に変化した。

『タイプレプタイル0005:コブラ』。

それを目にした途端、奈緒の表情は驚愕の表情に変わった。


「そ、それは…!

クリーチャーガン!?」

「おうよ」


「お前への復讐心が、藜崋にアレを受け取らせた!!」

「そうだ!大人しく、藜崋に殺されろ!!」

取り巻きの二人の琴音とエミが言った。


「…ふふっ」

奈緒は、先程から一転、鼻で笑った。

「何が面白い!?

これから殺されるってのにふざけてんのか!?」

藜崋は激昂して言う。

「そんなものに頼らなきゃ相手を超えることが出来ないなんて、みっともないと思わないの?

誰かをぶっ潰したいと思うなら、何か別の方法があるでしょ?」

「野郎、まだ生意気を言うか?」

「これから試験があるのは分かってるわよね?

もし、それで私を超えることが出来たのなら、アンタの好きにしていいわ

その代わり負けたなら、誰も殺さないこと

そして、生徒会長に言って退学にさせてもらうわ!」


「ハァ!?何言ってんの?

こんな話に乗らなくていいから、早く!」

琴音が止めようとするが、藜崋は奈緒の話に乗る。

「ふん、おもしれぇじゃねぇか

やってやる!お望み通り、テメェを泣かせてやんよ!ハハハハハハ!!」

そして藜崋は笑いながら、屋上を去っていった。


「勢いであんなこと言っちゃったけど、どうしよう…」

去っていく一同の背中を眺めて立ち尽くしながら、奈緒は呟いた。



 その日の夜、奈緒は繭に言い寄られた。

「ええっ!?

アンタ、あの河合と成績で勝負を?無茶よそんな!!」

「まぁ勝てばいいだけのことじゃないの

勝負を仕掛けたのはこっちの方だし

それにあんなヤツの成績なんて、どうせ碌なものじゃないでしょ?」

「それは間違いだわ!!

G組の委員長から聞いたけど、あの子、柄の悪さと裏腹に成績は学年トップの5位以内よ!

ましてや数学苦手のアンタに勝てるわけないじゃない!

その上に何?負けたら命をかけていいって!?冗談じゃないわ!!」


「そうだ

お前が死んだら、また新しい奴隷を探さなきゃいけないからな」

と、壱。

「アンタはもうちょっと心配とかしなさいよ…

でもこれはほんのその場しのぎよ

こうするしかなかったの」


「だけど、簡単に命をかけようとするのはよくないよ

ウチだってこの前、書道部の友達だったあやめちゃんが死んじゃったのを知った

これ以上、仲良くなった子を失うのは嫌だよ!」

ゆかりが訴える。

「椎名先輩…」


「そうだよ!

ウチも、奈緒っちにあやめっちみたいな目に遭ってほしくないんだよ!!」

続けて四乃も言う。皐も同じ心境であろう瞳で、奈緒を見つめている。


「みんなの気持ちは嬉しいけど…

それでも、私はやる

たった一人の生徒の自由を奪った奴を、許すわけにはいかないの、だから!」


「ッ!!」

繭は勢いよく立ち上がり、奈緒の頬を平手打ちした。

「痛っ!!」

「命の重さも知らないくせに、簡単に命を投げ捨ようとしないで

アタシとアンタじゃ、背負ってるものが違うのよ!!」


奈緒がふと繭の顔を見上げると、彼女は本気で深刻な顔をしていた。

何があったのかは分からなかったが、目を見ただけで、少なくとも自分とは違う状況で生きてきたということを悟った。


「ごめんねぇ〜乙女ヶ原ちゃん

いおたんだって多分、悪気はないと思うんだけどねぇ

だけど、あんなことがあったなら、黙っていてはいられないよねぇ…」

と、ゆかり。


「ノーンノンノン!!

せっかくの空気を重くしちゃあダメだ!

もっとリラックスしていこうぜ!」

「サツキっち!」

「重い物を載せたスケボーは進まない

だから、余計なことは考えず、今やるべきことだけに集中すべきだぜ」


皐の活気に溢れた言葉によって、曇っていた繭の表情は一気に晴れた。

「…なははは

完全に目的を見失ってたわ

気を取り直していくわよ乙女ヶ原!本気で私についてきなさい!絶対アイツに負けるんじゃないわよ!」


「おう、頑張れよ」

と、壱。

「アンタはもっと頑張んなきゃでしょ!」


「数学なら、ミーも力になるぞ!」

「ウチも頑張らないとなー」



 「はァ…

なんだ…この衝動は…

無性に、誰か殺したくなってくる…」

藜崋は、湧き上がる殺人衝動に駆られながらも、試験勉強を続けていた。


そんな中、窓がバンバンと音を立てる。

外側から石を投げつける者がいる。

幸い窓は強化ガラスなので、割れることは無いのだが。


藜崋が窓から身を乗り出すと、そこに舞がいた。

「出てきやがったな!」

「ヘッ

勉強の息抜きだ、テメェと遊んでやるよ」

藜崋はコブラをちらつかせながら挑発する。


「テメェは河合藜崋

黒木を虐めてたっていうヤツだな

この前、あの雑魚どもを送り込んだのもテメエだな?

アタシはその辺の奴らとは違う、テメェも雑魚同然よ!!」

舞は即座に攻撃を放ち、次々と弾幕を形成する。

これには藜崋も巻き込まれ、花火のように爆散するか…に思われたが…


なんと自分の体が細長く変化し、弾丸の間をすり抜けていった。

そのまま舞の後ろに回り、首を抑え込んだ。

「なにッ!?」

「生憎だがよ、アタシだって進化してんだよ」

「そんな、嘘だッ!!」

「雑魚らしく、醜くくたばりな!!」

藜崋は、舞の頭部にコブラを押し当てる。


「私の妹に、手を出さないで!!」

藍が、そこに駆けつけた。


「何だ?」

「うりゃ!!」

藍は、落ちていた石を拾うと、藜崋に向かって投げつけた。

「いてえッ!!」

石は藜崋の額に当たり、その痛さのあまりに舞を手放した。


「お、お姉ぇ!!」

「舞!早くこっちに!」

舞は、痛がる藜崋に向かって、無言で銃を向ける。


「いいから早く!」

しばらくしてから、舞は立ち去り、藍と共に去っていった。


 「…フン、何だこれくらい

まだあめぇ」

藜崋は立ち上がり、額の傷を一瞬で直して見せた。


この様子を、黒コートの女が見ていた。

「見込み通りだ

今までの生徒と違い、クリーチャーガンの融合率が高くなっている

アイツは、確実に使える…」



 誰も通らない暗い夜道の中、藍は、舞を連れて家に向かう。

「お…おいお姉ぇ、何するんだよ」

「なるべく静かにしてて、いつ誰が出てくるか分からないわ」

藍は、自分の制服のベストを舞の頭から被せ、姿を見えないようにしている。

近所の住民が見ようものなら、彼女を怪物扱いして町から追い出すことであろう。

最も夜遅いので、誰も住民は出てこなかったのが幸いだったが。


二人の家に着いた。

「舞、ここで待ってて」

藍はバッグから下着を結んでロープ状にし、先に針金を付けたものを出すと、二階の窓の縁に針金を引っ掛けて登り、部屋に入った。

「よかった、誰も入ってきてない」


「貴様!どこに行ってた!」

「!!」

藍の父親が部屋に入ってきた。どうやらいない間に、部屋の中を見られていたようだ。

「まったく試験前だと言うのに、こそこそ逃げ出すとは、何を考えてるんだ!

いいか、この家の者はいい大学に入ってもらわなければならない

金剛台に通ってる以上はな!

くれぐれも、逃げ出した挙句に暴れ回って捕まった、あの馬鹿者の二の舞になるんじゃないぞ

いいな!」


「はぁ〜…」

父親が立ち去ると、藍は溜息をついた。

「相変わらず、癪に障る…」

舞は垂直な家の壁を歩きながら、窓へ近づく。

「もう入ってきていいわ舞

今なら、多分大丈夫

もう、邪魔者扱いはしないわ」

「折角の機会だ、甘えさせてもらうぜ」

「当然だけど靴は脱いで」

「そんな細けぇこたぁいいだろ」

「全然細かくは無いんだけどね?」

舞は、仕方なく靴を脱ぎ、窓から部屋に入り込んだ。

脱いだ靴は、藍が机の引き出しに仕舞った。


「しかし、ここに来るのもいつぶりだろうな

…別に懐かしんでる訳じゃねえけどな」

「本当に素直じゃ無いのね

ずっと変わらないわ」

「ほっとけよ

それより、試験近いんだってな」

「まぁね

今回という今回は、しくじったら追い出されるかもしれないんだから、気合い入れなきゃってところ」

「こんな時だってのに、アタシを連れてこうっていう余裕はあんのな

前だったらこういう時、やり場のないストレスをアタシにぶつけてたってのによ」

「そんなのもう過ぎた話よ

その件に関しては謝っても謝りきれないわ

だから私、あなたの居場所の見つけてあげたいの」

「償いのつもりか?」

「ずっと気づいてくれなかったかもしれないけど、私は誰よりも、あなたのことを愛してた

だから、私にはどうしてもあなたが必要なの!

何ならこの場であなたに撃たれても構わない!

あなたと一緒に居れるなら!」

「…言ってくれるじゃねえかよ

いいぜ、しばらく一緒に居てやるよ

撃つのはまだ後の楽しみだ!!」



 奈緒は、繭に教えてもらいつつも、必死に勉強した。

全ては、あの女に勝つために。

一方壱はというと…言うまでもないだろうか。


そしてついに、試験の当日を迎えた。

「委員長のおかげで、大分力が付いたわ

あんなイジメっ子女には負けないんだから!」

「凄い気合いだな奈緒、私も完璧だ」


「その調子よ月岡!アタシに教えてもらったことを生かして、頑張るのよ!!」

繭は、壱のことを激励する。


「完璧に全部忘れた」

壱のその一言で、奈緒と繭はズッコケた。



 試験が終わった数日後、答案が返却された。

「ウチ頑張ったんだよ!

ほら、いい点取ったでしょ〜!!」

拠点の教室にて、四乃はテストの点数を自慢する。

「ふーん、そうか」

と、壱が言い放つ。

「何だよ、そんな興味なさそうな顔しちゃってさ?」

「私の点数を見て、アッと驚くがいいさ」

「あぁ、驚く自信なら十分にあるよ

あまりの悪さにね!」

「じゃあ見せるぞ」

「…!?!?!?

嘘でしょ!?」

四乃は驚きで言葉を失った。

なんと、壱の点数は、どれも高得点だったのだ。



 

奈緒は、答案を持って真っ直ぐ屋上へ向かう。

そこに、当然のように彼女らは待ち受けていた。

「(クッソー、止まらない殺人衝動の所為でろくに勉強できなかったんだよな…)」

藜崋はどこか不満そうな顔をしている。


「私が先に出すけど、いいわね?」

「オウ、テメェの好きにしろ」

「私は、全教科合わせて415点だったわ

あなたはどうなの?」

そのうち、苦手だった数学は68点。

我ながらよくやった、と奈緒は思っていたことだろう。


藜崋はその点数を見て、歯を食いしばっている。

「早く見せちゃいなよ藜崋

どうせ負けるのは解ってるんだし」

取り巻きの二人が耳打ちする。


「ああ分かったよ!

合計226点!アタシの負けだッ!!」

藜崋は吹っ切れたように叫びながら、答案を見せてきた。

どれも上手く行ってなかった模様。

「これで分かったわね

アンタの行ってきたことが如何に愚かだったか

さぁ、今までのことを悔いるのよ」

「あぁ、全部アタシが悪かった

許してくれ、このとおり!」

藜崋はこう言って土下座した。


だが…


「奈緒!危ない!」

壱の叫びが聞こえた。


藜崋の靴下からコブラの銃口が顔を出し、弾を放った。

「うわっ!!」

奈緒は下がった。


「アンタ…

卑怯よこんなの!」

「ヘッ、そんなつまんねぇ約束、いちいち守ってやる程真面目じゃねえんだよ!」

「まぁ、こうなることは大体予測できてたんだけど…

確信したわ

アンタ、本物のクズ野郎ね!!」

「ぬかしやがれ

その口が開けなくなる前にな!」

藜崋はコブラを手に取りながら言った。

「その前に、コイツの威力を思い知らせてやんなきゃな!」


「いいよ藜崋!やっちまえー!

…って、え?」

取り巻きの一人、琴音に、コブラの銃口が向けられる。


「じゃあな」

藜崋が引き金を引くと、コブラの弾が琴音の顔面を貫いた。

琴音は頭に空いた穴から血液と脳漿を飛び散らせながら倒れた。


「ひッ、ひィィィ!!!」

その様子を見て恐れを抱いたエミは、逃走した。


「仲間のはずだった人まであんなふうに…

許せない…」

静かに怒りを爆発させながら言う奈緒。


「お前は下がってろ

アイツは私がやる」

壱はバクを手にし、藜崋のもとに近づいた。


「ミーも一緒だぜ!」

伸びてきた美久のセイスモの頸を伝い、皐が現れた。

「他の三人はどうした?」

壱が訊いた。

「みんな忙しいんだ

今は二人で行くぞ!」

壱と皐の二人で、藜崋に攻撃を仕掛ける。


「んなモン効かねぇよ!!」

藜崋は体を蛇のように細く変化させ、攻撃を回避する。


「なんだあの動きは…こんなの初めてだ!」

「どういうことだ?」

「副会長から聞いたことがある

クリーチャーガンには人によって適合率が異なると

四乃がこのパターンだけど、恐らく今のアイツは、クリーチャーガンとの適合率が高い!」

皐は、こう語った。


「その通り

見事だ貴様ら」

黒コートの女が現れた。


「アンタが、仁子先輩達が言ってた黒コートの女

本当に私とは無関係の存在だったのね」

その姿を見て奈緒は言った。


「奴に目をつけておいて正解だったようだ

今までに類を見ないこの適合率の高さ、奴こそ最強のクリーチャーガン兵士の器に相応しい!

さぁ、ここにいる鼠どもを一網打尽にしろ!!」


「フハハハハハハ!!!!

殺す!乙女ヶ原、殺す!!」

藜崋は、奈緒に近づいた。

「きゃあっ!!」

奈緒は、しゃがみ込みながら悲鳴を上げる。


「へへへ…

!?

グアア!!」

コブラが攻撃を受ける。

藜崋の目の前にはさっきまでいた奈緒の姿が消え、代わりにバクの銃口を向けた壱がいた。

壱が、バクの能力で自分を奈緒の姿に見せていたのだ。


「こんなのに引っかかるとは甘いな」

「もっと本気でかかってこいよ

逆境になるほど、燃えるからね!」

壱と皐の二人が、藜崋を挑発するように言う。


「てめぇら、よくも馬鹿にしてくれたな

本当の恐ろしさを見せてやる…

うあああああああ!!!」

藜崋は叫び声を上げる。



To be continued…

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