第二部:現れた牙

ep.14 蛇悪!!

  時期は6月の下旬。

金剛台に、期末試験の時期がやって来た。

ゆえに、生徒会もピリピリしているのだ。


「とうとうこの時期が来たね

頑張らなきゃ」

副会長の茜が言った。


「そんなの当然よ!

それよりも、問題はアイツ…」

と、生徒会長の鳴は返す。


そこに…

「よう!

どうもよろしくだぜ!会長!!」

ある生徒が入ってきた。


「あなたは…!」

「新聞部の出田でるた!!」

その姿を見て、二人は驚いた。

彼女は、以前騒ぎを起こした新聞部の部長、出田 ひかるだった。


「なんでここに!?」

「前にあんな事件起こしたからなー…

そんでもって、生徒会に入って心を入れ替えてこい、ってさ」

鳴の言葉に光はこう返す。


「成る程ね…

いい心がけじゃない、まぁいいわ

じゃあ早速仕事を振るけど、そこの資料を片付けてくれる?」

「分かったぜ!かいちょー!」

光が動いた時、はらりと一枚の写真が落ちた。


「何でしょうかこれ?」

茜がその写真を拾った。

「こ、これは…!!」


「どうしたのよ?

…って、何よこれ!?」

茜が拾った写真は、鳴の着替え場面を盗撮した写真だった。


「やべっ!文芸部のヤツらに売ろうとしてたのが!

おいこれ返せ!」

「うわ!」

光は茜から写真を取り上げた。

「どういうことよこれ…

返しなさい!

早速心掛けなってないじゃないの!!」

鳴は、光を追い回した。


「あはは、生徒会も賑やかになってきましたね」

その様子を見て、茜は言った。



 「はァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜…」

四乃は、拠点の部屋の机の上に突っ伏しながら大きい溜め息をつく。

「どうしたの?

この世の終わりみたいな顔して」

部屋に入ってきた奈緒が言った。

「聞いてくれよ奈緒っち!

今度の期末試験で赤点とったら、クリーチャーガンハンターのメンバーをやめさせられるんだ!」

と、四乃。


「へぇ

納得だわ」

「なに全然気にしてないような顔してんの!?

こちとら大変なんだよ!!」

「どこかの誰かさんは、もっと大変よ

今頃生徒会室に呼び出されてるわ

出てきた頃にはどうなってるか、容易に想像がつくわね」


「そうそう

今度こそ、本当に退学かもしれないな

四乃もああならないよう頑張るんだぜ!」

皐が言った。

「そうは言ってもさぁ…」


「話を逸らすけど、残りの二人はどこ?」

奈緒が訊く。

「今、ちょっと忙しいってさ

あの二人なら、大丈夫そうで羨ましいよ

美久は全教科成績優秀だし、仁子は英語が少し苦手なくらいで、他は問題なし」

と、皐は返した。

「あなたはどうなの?」

「ミーは、文系科目が苦手で心配だな

他は得意なんだけどね、特に英語は」


「みんなずるいよー!そんなに頭よくてさー!」

と、嘆く四乃。

「ユーには姉ちゃんと二人の兄ちゃんがいるだろ?その人達に教えてもらわないのか?」

「三人とも忙しいから聞く暇なんてないよ

仮に教えてもらえても、わかりずらいしさ」

「そうか…

じゃあ美久に教えてもらったらどうだ?」

「美久っちに?

…いいね!

美久っちなら、教えるの上手そうだし!」

「よし、ついでにミーも文系科目を教えてもらおう!

奈緒も、こんな所立ち寄ってる暇があったら、早く帰って勉強したほうがいいぞ」


「それもそうね

その前に、壱のことを迎えに行かないと」



 一方、新聞部の部室にて。

「まさか小石があんな目に遭うなんて…

思い出しただけで辛いよ…」

2年生の御子が言う。


「あたし、一度も会ったこともないのに」

「食堂でたまに会うから顔だけ知ってたけど、まさか新聞部に入ってたなんて気づかなかったよ」

同じく2年生で珍しく部室に入っていた幽霊部員の二人、霧谷 育江きりたに いくえ烏丸 静からすま しずかが言った。


「部長もこのごろ部活に顔出さないし、前みたいな面白い記事が書けなくなったし…」

御子は愚痴り続ける。

「注目されるのも、愛恋先輩の4コマくらいだしねー」

育江が口を挟んだ。

「っていうか、そろそろテストじゃん

この事実こそ嘘であってほしいよ」

続いて静が言った。

「それなー…」

と、御子。

「「「はぁ〜〜〜〜〜〜〜……」」」

その後、揃ってため息を付いた。


「せめてあの時の犯人、誰か分かればなー…」

と、御子が言ったそのとき。


部室の扉が開き、三人の生徒が入ってきた。

「誰?君たち」

御子が話しかけると、中心にいた生徒が口を開いた。

「教えてやるよ

玉矢小石って生徒を殺したヤツを」


部員一同は息を呑んだ。

「アタシたちのクラスのゴミ野郎、黒木圭だ!」


「黒木圭…?」


やって来たの1年G組のイジメっ子、河合藜崋とその取り巻き、霞ヶ浦琴音と冴島エミだ。

「そうそう。アイツ、クラスの中でも地味だからって、他の生徒を殺したくてたまらなかったみたいでなー!」

「おまけに、最初に親を殺した後に家に引きこもってゲームやりまくりだよ!

ほんっとクズ!」

琴音とエミは、追い討ちをかけるように煽る。

部員たちは、ただ静止している。


「お前たち、それは本当の話なのか?」

どこからともなく現れた光が言った。

「部長!」


「このアタシ、生まれてこの方嘘なんてついたことねぇよ

てめぇこそ、嘘ばっか書いた記事流しまくってたじゃねぇか」

藜崋は言う。


「あれは記事を面白くするために、嘘というちょっとしたスパイスを加えてるだけさ

私はお前たちの話が、嘘なのか本当なのか訊いてるんだ」

「だったらどうなんだよ?」

「どっちでも関係ない

だがこれだけは言っておく

私はつまらない嘘を言うヤツも、痛ましく残酷な事実を言うヤツも嫌いだ」


「何言ってんのコイツ?馬ッ鹿みたい」

「ほっとけ、エミ」

琴音とエミの二人は言った。


「こんなヤツ相手にする価値もない

むしろ私たちの邪魔する気なら、追っ払った方が…」

光は言い放とうとしたが。


「その黒木ってやつ、どこにいるの?」

と、御子。

「更生施設だかいう場所で、のうのうと生きてやがるぜ」


「それマジ?小石をあんな目に遭わせておいて、自分は生きてるなんて」

「許せない…」

育江と静が言った。


「オイオイ?あんなヤツらの話鵜呑みにする気か?」

と、光が言ったとき…

「テメェはうるせぇから引っ込んでろよ!!」

藜崋に頭突きを喰らわされ、光は窓ガラスを割りながら外に放り出された。

その様子を他の部員は静かに眺めていた。


「じゃあテメェらいくぜ!

アイツをブッ潰しにな!!」

藜崋は声高に言い放った。



 仁子と美久の二人は、廊下を歩きながら会話していた。

「全く私たち、休む暇がありませんね

クリーチャーガン絡みの事件は減るどころか、むしろ増えるばかりです」

「そうだな

根源は必ず存在する筈だ、そこを叩けば…」

「それよりも、もうすぐ期末テストですよ!

いつクリーチャーガンが現れるか分からないってのに、勉強してる暇もないですよ!」

「お前の成績じゃまだ大丈夫だろ?

それよりも心配なのは四乃だ」


このとき二人は、前から走ってくる生徒に気づかなかった。


「「うわっ!!」」

その生徒にぶつかられ、二人は倒れ込んだ。


「いたた…」

「邪魔よアンタ達!私は急いでるの!!」

ぶつかってきた生徒は言った。


「そんなに急いで、どこに行くんだ!?」

「妹に会いに行くの!

更生施設にいるね!」

仁子が訊くと、生徒はこう答える。


「更生施設…?

あそこは一般人がそう簡単に入れるような場所ではありません!

第一、何かあったら危険です!!」

美久が言い聞かせるが、生徒は止まる気配はない。

「アンタ達に止められる筋合いはないわ!

何としても私は行く!!」


「お前がどうしようが私は関係ない

だが話は聞かせてもらうぞ」

と、仁子。

「何でそこまで私に構う…?

アンタ達は何者?」

「私達はクリーチャーガンハンター

人命を脅かすクリーチャーガンを狩る者だ」


「クリーチャーガンハンター…!?」

生徒は反応する。

「聞いたことがあるわ

すると、舞を施設送りにしたのは、アンタ達…!!」

こう言ったあと、二人を睨んだ。


「舞って…」

「壱さんが私達と初めて会ったときに戦ってた相手…!」

仁子と美久は顔を見合わせて言った。


「お前、あの舞の姉だっていうのか!?」

「近寄らないで!

アンタ達のことなんか信じない!」

生徒は走り去った。


「行ってしまったか…」

「いや、追いかけましょう!」

「うむ…気になることがあるし、そうするか」

二人は、生徒の後を追うことにした。



 クリーチャーガンを手にした人物の更生施設の、ぼんやりと僅かに点滅する蛍光灯に照らされた薄暗い一室にて。

そこには、一度クリーチャーガンを手に取った三人の元金剛台生徒がいた。


「オラァーーッ!!

潰す!潰す!潰す!潰すッッッ!!!」

「舞ちゃんったら、激しいなー…」

大野井おおのい 舞と黒木 圭の二人が、TVゲームで遊んでいる。


「うッさいなァー、ちょっと静かにしてくれるー!?」

と、後藤 響が言った。

彼女の服装は、黒い山羊のパーカーを羽織ったままである。


「はァ?お前のきったねェトランペットの音よりマシだわ」

「悪かったねェ、汚い音で!私だって好きでやってるんじゃないんだわ!」


「ちょっと、二人とも…!」

口論を始める二人に対して、圭は気弱な声で呼びかける。


そのとき。

「87番、面会だ、来い」

部屋の裏の扉が開き、看守の一人が呼んだ。


「ったく、こんな時に誰だよ…」

舞はコントローラーを置き、部屋から出て行った。

「舞ちゃん?

ありゃ、ゲームオーバーになっちゃった」

放置された舞。


廊下は、薄暗く不気味だ。

小さい窓から差し込む外の光を頼りに、舞は面会室へと向かう。

「気分がわりい、さっさとこんな場所出ていきてーのによ…

でも、出てったところで、私に居場所はあんのかな…」

独り言を呟きながら、舞は歩いていく。


そこに…

「寂しいねェ〜〜〜……

何とも可哀想な…」

曲がり角に立っていた謎の女が、今までのことを聞いていたかのような口ぶりで話した。


「誰だテメェ!?」

「キミのことは知ってるよ

ここまで来ちゃったなら、もう後に戻れないよねェ〜〜……」

「うるせェ!アタシをどう思ってんのかは訊いてねえんだよ!テメェが誰か教えろっつったんだよ馬鹿タレが!!」

「噂通りの凶暴な口ぶりだ、たまらないねェ

そんなにボクのことが知りたいかい?じゃあ教えてあげるよ

ボクの名前は次藤 陽奈じとう ひな。覚えたかい?」

黒髪のショートヘアに、純白のスーツが目を引く女は、こう名乗った。


「ああ分かったよ!

そんでテメェは何しに来たんだよ?アタシは早く行かなきゃなんねーんだよ!」

「そうかい

もうちょっとキミとお話したかったんだけど、残念だなァ〜

折角ここから抜け出せる方法があったから、教えてあげようと思ったのになァ〜〜……」

「ヘッ、どうせまたしょうもねェ方法だろ?

同じような話で釣ってきた女のためにアタシはこんな思いしてんだよ、もう沢山だ!どけッ!!」

舞は陽奈を押し退けて前進した。


「行っちゃったァ

気の強い子だねェ〜〜……

でもキミは、特別な実験材料の一人だ

何としても付き合ってもらうよ」

陽奈は一体のクリーチャーガンを向かわせた。


「行ってらっしゃい、爆弾蟻クン」



 更生施設へと向かう舞の姉の後をつける仁子と美久。

「しかし、なぜ彼女は、そこまでして妹を連れ出したいんだ?」

「それだけの愛情があるものだと思いますけど…

私にはわかりません、姉妹の間の愛情ってのが」

「私もだ」


話している間に、施設に到着した。

舞の姉だという生徒は、入口にいる職員に話しかけた。

「面会に来ました

大野井舞の姉、あいです」

「よし、入れ」

職員に許可をもらってから、舞の姉・藍は施設内に入った。


「仁子さん、どうしましょう

関係者以外は安易に立ち入りできませんが…」

「あっちから行くぞ」

仁子は、排気ダクトのある壁の方を指さした。

二人はそこに向かい、仁子はライオンの顎で排気ダクトの一部を噛み千切り、そこから侵入した。

「ついてこい」

「なんかスパイ映画みたいですね」



 面会室に着いた藍が腰掛けた席の向こうのガラスから、舞が顔を出した。

「舞!

私のこと覚えてる!?」

「何だ、お姉か」

「覚えてたみたいね!私も久々に会えて嬉しいわ!」

「それがどうしたってんだよ?

アタシはこんな薄暗くって狭い部屋に閉じ込められて、嫌な思いして過ごしてきてんだよ」

「そこから、抜け出したいって思わないの?」

「あぁ!?」

「そんな地獄みたいな場所から、抜け出すっていうのよ!

あなたがそうなったのは私に責任がある、そのことは謝るわ

あなたのことは私が全力で守る!だから安心してこっちにおいで!」

「わざわざこんなとこ来てまで、する話がこれかよ、馬鹿馬鹿しい

帰ってくれよ、ここに居たって、外に出たって地獄なんだよ!!」

「舞!!」


この会話を、二人は排気口の隙間から覗いていた。

「アイツ…どうやら本気みたいだな」


こうしていると…


「なっ、何事だ!?」

突然、壁を壊して何者かが侵入してきた。


「黒木圭はどこにいる!!」

侵入者の三人のうち、中心にいた人物が言った。

その三人組は、新聞部の御子、育江、静だった。

周りにいた人々は、彼女らを見てパニックになる。


「危ない!ここから逃げろ!」

仁子と美久は、天井を破って下に降りた。


「あなた達、いたの!?」

と、藍。

「危ないので下がっててください、ここは私たちに任せて!!」

美久は言った。


「どういうつもりだお前ら

ここまで来て、何が目的だ!!」

と、仁子が言う。


「決まってるでしょ!」

「ここにいる黒木を殺して、小石の仇をとるんだよ!」

育江が言い、その次に静が続けた。


「何だと!?」


「折角手にした、これの力を試してやろう、ってわけ」

御子が言うと、一同は大型のクリーチャーガンを構えた。


「あれは…

エクスティンクションのクリーチャーガンが、大量に!?」

美久が驚愕する。

「どうやら、仲間だった小石への復讐心に、何者かに付け入られたようだな

しかしあんなのが三体もいるとなると、厄介にも程がある!」


「お前ら何だ!?ここから下がらないか!!」

周りにいた警備員達が集まってきた。


「おりゃアッ!!」

御子がクリーチャーガンの引き金を引くと、背鰭の部分が砲身を伝って床に潜り込む。

すると、波を描くように、床から大型の背鰭が不規則に生えた。


「「「ぎゃあ!!!」」」

「「「グハッ!!!」」」

警備員達が、背鰭での攻撃に巻き込まれて切り裂かれていく。


「黒木圭を出せ!さもないと、ここにいる奴みんな道連れだ!!」


生き残った何人かの警備員は、悲鳴を上げて逃げていく。


「どうやらやるしかないようだな…

美久、いくぞ!!」

「分かりました!!」

二人は、クリーチャーガンを構えた。


「お前らは私達が相手取る!!」

「関係ない奴が邪魔するな!」

「そこをどけ!さもないと、ハラワタから切り裂いてやる!!」

残りの二人もクリーチャーガンを構える。


御子が手にしているのは、『タイプエクスティンクション0018:アマルガ』だ。

残りの二人も、タイプエクスティンクションを所有しており、育江は『0011:ケラト』、静は『0020:プテロダクティル』を手にしている。


「はぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」

仁子は、ライオンから弾丸を放つ。

それに対抗し、育江が前線に出て攻撃する。

育江がケラトから放った弾丸を、美久はセイスモの頸を振り回して弾いた。

静の持つプテロダクティルは、翼の部分を含めた前身を、扇風機のように回転させて風を起こす。

「ぐッ!途轍もなく強い攻撃だ!」

仁子は精一杯の力で踏ん張る。


「くたばれぇぇぇぇぇぇッ!!」

御子のアマルガが攻撃を放った。

「避けろ!!」

二人はその攻撃を躱す。


「やはり、この力だけで対抗するのは無謀か…

美久、同じエクスティンクションの力を持つ者として何とかならないか!?」

「あの竜脚形類型の銃ならともかく、他の二体がすばしっこく妨害してくるものですから、狙いがなかなか定まりません!」

「なら一気に、最高火力で一網打尽にできないのか!?」

「そうしたら、周りにどれくらいの被害が出るものかわかったものじゃありません!」

「もう!お前はそればかり!!」


「ねえ御子、ほんとにこいつらの相手してる暇あんの?」

育江は、御子に訊いた。

「まあ時間の無駄だとは思うけどさ

こんなザコくらいすぐ殺れるっしょ」


「だったら

さっさと殺してみせろバカたれがッ!!」


「……ッッッ

舞!?」

藍は、愕然とした。


面会室のガラスを割り、前に出てきた舞の姿に。


「誰だよお前!?」

御子が言い放つ。


「てめえら、黒木を殺すだとかほざいてたな

だったらこんなザコ共に手間取ってんじゃねえよ!」


「何なのこいつ?」

「エラソーに」

育江と静が言う。


「それとも何だ?こいつらに負ける前に、アタシに殺されてみるか?」

「やめて!舞!」

叫ぶ藍を他所に、舞は責め立てる。


「ふざけた口聞くのもここまでだ!くたばれ!」

御子が攻撃を放った。


その時。


舞の手からクリーチャーガンが出現した。


それは以前、彼女が手にした『スパイダー』とは異なるものだった。


その銃口を前に掲げる。

舞の前方にネットのようなバリアーが射出され、アマルガの攻撃を防いだ。


「馬鹿な!?」

更にそのバリアーが爆発し、御子ら三人を吹き飛ばした。

「「「ぐわあああああああああっ!!!」」」 


「そんな…

嘘でしょ、舞」

藍は呆然としながら言う。


「いたた…何だこいつ

…って、アチチチ!!」

「熱い!何これ!?」

三人の体には、謎の液体が付着していた。


「もとより強力な爆弾蟻クンだけど、クリーチャーガンの毒素が残ってる人間が使うと、ああなるのか

コイツは極上の実験材料だァ…」

この様子を見ていた陽奈が呟いた。


「それは蟻酸だ

テメェらの体はもうじき溶ける」

舞が手にしていたのは、『タイプインセクト0089:エクスプロージングアント』。

どうやら体内に残留していたスパイダーの毒素を取り込み、その能力を受け継いで強化したようだ。


「せめて、黒木の元に!」

御子はボロボロになりつつも、アマルガを構える。

が、一部が蟻酸で溶けたクリーチャーガンは、正常に機能しない。

さらに、そのことによって三人の意識が戻ってきている。


「まずはテメェからぶっ潰す!!」

エクスプロージングアントの銃身の側面から飛び出した蟻の大軍が、鎖のようになってケラトの砲身に巻きついた。

それを引き込んで育江に接近し、腹から蹴飛ばすとケラトが引き剥がされる。

その際にケラトの口にエクスプロージングアントの銃口を押し込み、内部から爆散させた。


「なんてことだ

タイプインセクトが、タイプエクスティンクションを破るなんて…」

仁子、美久の二人は、一連の様子を見て驚愕する。


「ひッ、ひィィィィィ!!!」

宿主にされたケラトがやられ、意識が戻った育江はすっかり怯え、逃げようとした。


「逃さねェよ!!」

すかさず舞は、レーザーのように連なった爆弾蟻の大軍を射出して攻撃し、育江の体を背中から貫いた。


「ぐはっ!」

更に、銃口の方から爆弾蟻が爆発していき、それに巻き込まれて育江の体が爆散。

血液と臓物が飛び散り、育江の首と腕がその場に落下した。


「動け!アイツを殺す!」

静は意識が戻りながらも、ボロボロのプテロダクティルに操られる。

翼を逆回転させ、舞を引き込んで切り刻もうとする。

舞は弾を乱射し、プテロダクティルの回転に巻き込ませようとする。


「まだだ!」

再度翼を逆回転させて風を起こし、爆弾蟻の弾を吹き飛ばす。爆発に巻き込まれて舞は消えたと思われた。


「ヘッヘッへ

どこ見てんだよ!」

舞は静の背後に現れ、腰にエクスプロージングアントの銃口を当てると、出力を上げた弾で静の下半身を吹き飛ばした。


「ぐホォ!」

分断された下半身が、回転するプテロダクティルの翼に巻き込まれてバラバラに切り刻まれた。残った上半身が床に落下する。


「ハァ、殺す、殺す、殺す…」

「諦めの悪りいヤツだな、さっさとやられりゃいいのによ!!」

「ギャアアアアアアア!!!」

静の上半身はネットのような形状になった爆弾蟻型の弾に覆われ、その爆発でプテロダクティルごと粉砕された。


「フゥヘヘヘヘへ!!あと一人はどこだ!?」

御子は既にこの場から逃亡してしまっていた。


「その子から離れろクリーチャーガン!」

「もうその子を苦しめるのはやめてください!」

二人は舞に銃を向ける。


「うるせえ!!

前の宿主はテメエらを殺そうとして、失敗したみたいだが、この爆弾蟻様はそんな失敗しねえからなァ!!

ついでに、後ろで跪いてる女もぶっ殺してやるからな?」


「目を覚まして!舞!そんなもの手放すのよ!」

藍は訴える。

しかし舞にその言葉は届かない。

「舞さんはあんなこと言いません!

あれはクリーチャーガンの意思の代言、舞さんがそんな事思ってるはずはありません!」

美久はこう語りかけ、藍の心を鎮めようとする。


「一体誰が仕込んだ

よりにもよって彼女を利用するとは、どこまでも卑劣な!

いずれにせよ、まずはお前をやっつける!爆弾蟻!!」

昂る仁子。


「ヘヘヘ

やってみやがれッ!!」



To be continued…

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