ep.9 暴走!!

 黒コートの女の元に、マンモス型クリーチャーガンを持った生徒が飛んできた。

今朝、小石の命を奪った生徒だ。


「戻ったか、マンモスよ」


黒コートの女は、彼女に話しかける。

その生徒は、指の本数で『8』と示した。


「8人、それが今日殺した人数か。

もっと暴れてやれ。お前のこの世への恨みを、思う存分示すがいい。

お前には期待しているぞ」


彼女の言葉を聞き入れた生徒は、マンモスを地面へ向けた発射した際の爆風を利用して再度飛んでいった。


「忌々しいクリーチャーガンハンターよ、もうすぐ終わりの時間だ…

それに…

ヤツだけは野放しにしておけん」



 今朝も、奈緒は壱を起こすために、彼女の家の前へ来ていた。

「ちょ、鍵かかってるじゃない

いつもならうっかりかけ忘れるのに…

しょうがないわ、こうなったら…」


奈緒は、家の壁を登りだした。

2階近くまで着くと、窓が開いていることを確認し、そこから侵入した。


「よし!

さて、壱は…

あれ…いない!!

こんなこと、まずなかったのに

一体何があったのかしら…」

奈緒がふと机を見ると、置き手紙があった。


『我が奴隷へ

私は今朝、用があるからいない

一応鍵はかけておいたが、執念深いお前のことだから窓からでも入ってくるだろうと思って、これを残しておいた

私から仕事を振る

G組にいる黒木っていう生徒について聞き込みを頼む

後でまた会おう

偉大なる主 壱より』


「ったく!どこまで私を扱き使うつもりよ!!」



 「お願いします

私に…力を…!!」

裏山で祈りを続ける美久。


そこに。

「こんなところで何してる?」


「壱さん!?どうしてここに?」

「副会長やってるらしい人が居場所を教えてくれた

お前、もしかしてあの力をまた使おうとしてるのか?」

「ほっといてください

これは私自身の問題です」

「お前も大事などれ…仲間だ

折角一緒になれたのに、そんなヤツをなくすわけにいかないからな」


「ふふっ

壱さんって変ですよね

普段はだらしないなりをしてるのに、こういうときには張り切るんですから」

「それがどうした?」

「前からおかしいと思ってるんです

あなたが何の異常もなく銃を使いこなしてることが

今の壱さんが、普段とは違う人格だとしたら…

もしや…私たちを襲う機会を伺ってるんじゃないですか?」

「バカな」

「私だって、クリーチャーガンに対する恨みは人一倍なんです

もし邪魔をするなら、たとえ仲間でも容赦はしません!」


美久がこう言った時。


「この力は…!」

突如地鳴りが発生した。


同時に、壱はクリーチャーガンの気配を察知した。

「ヤツめ、近くにいるな…?」



 マンモスを所持した生徒は、学生寮を襲っていた。

生徒は終始無言で、ただ攻撃を放ち続けるだけだ。


『木田ちゃん!助けて!クリーチャーガンが!!

うわ』

電車の中にいる四乃の元にかかってきた、クラスメートによる電話が、途中で遮られる。


「もしもし、もしもーし!?

…全く、こんな時に

タイミング悪すぎだよ!

早く駅に着いてくれ〜!!」


事件が起こったという現場に、仁子は息を切らしながら辿り着いた。

「ハァ…皐がいてくれれば…

しかしまずは、クリーチャーガン退治だッ!!」

逃げ惑う生徒たちの間をすり抜けながら、仁子はライオンを構え走る。


「あそこか!!」

マンモスの生徒にライオンを向けた。

「今度こそ貴様を倒す…」


「…チッ」

生徒は舌打ちし、寮の建物に攻撃を続ける。

「コイツ…

私のこと眼中にもなしか!?

ならば!」


ライオンを発砲し、マンモスの生徒を威嚇した。

それに、近くを通りかかった一般生徒が驚いた。


「はァァァァァァァァァァッッ!!!!」

仁子は生徒に向かっていく。

生徒は、巨大なマンモスの鼻を振り回し、仁子の胴体に叩きつけた。


「ぐはあァッッッ…」

派手な音を立て、仁子は後ろにふっ飛ばされた。


「あんまヤツのこと威嚇しちゃダメだよ」

「四乃!」

「オラングタンが先に着いててよかったよ

でなきゃここのみんな、とっくに死んでた」


オラングタンに寮の生徒たちを救助させながら、駆けつけてきた四乃は言った。


「ならばどうやってヤツに挑む!?」

「だいたいの生徒はいなくなった

こうなればいくらでもやれるね!!」

「四乃!油断するな」

「へ?」

「来るぞッ!!」


生徒がマンモスの牙を伸ばして攻撃した。二人はそれを間一髪のところで躱す。


「こんな攻撃も使えるの!?」

「単なる力でのゴリ押しってわけでもないみたいだな」

「ウチら二人だけじゃ、アイツに敵わないのかな…」


止めを刺そうとばかりに、マンモスの生徒は詰め寄る。


その時。


二人の背後から飛んできた大型の砲弾のような攻撃が、マンモスの牙の片方を粉砕した。


「なんだ?」

「仁子っち!あれ見て!!」


二人が後ろを見ると、あのセイスモサウルス型クリーチャーガンを持った美久が向かってきていた。


「あれは…!

アイツ、なんてことを!!」


「二人は下がってください!

ここは私が!!」

「よせ!!美久ッ!!」


「はあああっ!!!!」

仁子の制止を振り切って美久は攻撃を仕掛けた。

セイスモの口腔から放たれる、太い円柱型の砲弾が、マンモスに向けて一直線に飛んでいく。


生徒は攻撃を防ごうとしたが、その攻撃を受けて、マンモスの肉片が一部飛び散った。


「ッ…!!」

生徒は、思いがけない強さの攻撃に狼狽える。

すると。


『あの女が力を取り戻すとは、想定外なの

ここは一旦退却するの』

何者かの声を聞き届けた生徒。

その後、マンモスを地面に向けて砲撃し、飛んでいった。


「待ちなさい!!」

美久が彼女のことを追おうとした時…

「…ゔっ…!!」

謎の頭痛が、美久を襲った。

「これは!?」

仁子は身構える。


「ここはウチが!」

四乃が、オラングタンに少女の胴体を掴ませ、共にそのまま飛んでいった。


「うわああああらぁぁぁぁぁぁ!!!!」

美久は叫び声を上げ、セイスモの砲弾を乱発しながら暴走した。


「この力…

抗体の力を持ってしても制御不能だと言うのか!?」



 「一体どこまで逃げるつもりだい?」

飛んでいくマンモスの生徒と共に空の上の四乃。


「お前の相手は私だ!!」

「うわッ!?」

突如、突っ込んできた何かによって四乃は捕らえられ、マンモスの生徒の体から離れた。

四乃を捕らえたのは、同じくクリーチャーガンを手にした金剛台の生徒で、バレー部のユニフォームを着ていた。

その生徒は『タイプビースト0009:カラカル』を使用し、四乃をボールのサーブの要領で叩き、地面へと落とした。


「(ヤバイ

まともに落っこちたら、全身骨折だ)」

四乃がこう考えているうちに、オラングタンはバッグの中に詰まった多数のぬいぐるみを取り出す。


(普段教科書をどこに入れているのかは、内緒。)


それがクッションとなり、四乃を落下の衝撃から守った。

「フゥ〜…助かった」


そこに、カラカルの生徒が降り立った。

「私の必殺サーブを食らって無事なんて…

流石クリーチャーガンハンター、侮れないヤツ!」


「アンタはバレー部のひまりっち

何でアイツを庇う!?」

「あの方の命令なんでね!!」


カラカルを手にした2年B組のバレー部員、赤星あかほし ひまりは目にも止まらぬスピードで翻弄し、四乃をボールのように弾き飛ばして攻撃する。


「いてて…なかなかすばしっこいヤツだ

でも負けない!!」

四乃は奮起し、ひまりに立ち向かう。


「ブッ飛ばす!!」

再び攻撃しようと向かってくるひまり。

「うりゃ!」

それに対して、四乃は大きなウサギのぬいぐるみを差し出す。

身代わりだと気づかないひまりは、それに攻撃し続ける。


「…なっ、違う!」

「かかったね

喰らいな!!」

標的に向けてオラングタンの腕が螺旋状になって伸びる。

重なった手がカラカルに命中し、その肉片が散った。


気を失い、落下するひまりをオラングタンはレシーブし、ぬいぐるみのクッションの上に落と

した。

「アンタもバレーボールの才能あるねぇ〜

…おっと」

四乃はこう言いながら、落ちてきた兎のぬいぐるみをキャッチした。



 自分の意思と関係なく荒れ狂うセイスモの力を、美久は残った意識で必死に抑えようとする。

だがセイスモの攻撃によって、寮の建物は崩れていく。


「美久!やめろ!!」

仁子は、それを止めるべく走って向かう。

そんな彼女をセイスモは視界に入れると、頸を伸ばしてきた。

「なっ!?」

ライオンの銃身を咥え、仁子諸共ぶん投げた。

「うわあぁぁぁぁッ!!

いてて…」


彼女の様子を確認し、咆哮を上げ威嚇するセイスモ。


「クソ

こうなったら…

美久…辛抱してくれ」

仁子が立ち上がると、ライオンの持ち手を両手で持ち、銃口を前にして顔の前に掲げた。


『ガオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!』


ライオンは鬣を逆立て咆哮を上げる。

仁子も一体となって叫び声を上げる。

それによって美久は怯み、セイスモを手放した。


セイスモは、地面に潜り込んでいった。


「ハァ…ハァ…」

美久は、疲弊しながら地面に倒れ込む。



 教室では、多くの生徒が今朝の事件について話し合う。

それを聞いて、美久はため息をつく。


「美久」

仁子が話しかける。

「なぜあの力をもう一度使おうと思った?」

「あのクリーチャーガンの力に対抗できるのは、これしかありません

あなたがクリーチャーガンの全滅を望むなら、これが手っ取り早い方法だと思いますが」

「それはそうだが…

今のお前にその力を扱うのは無理だ!」

「わかってます!

でも、すぐに使いこなしてみせます!」

「さっきあんな思いをしておいて、そう言い切るのか!?

もしお前がここで死んだら、この先私たちにどうしろって言うんだ!

それとも…

あの頃のお前の友人みたいな目に逢いたいのか!?」


「…ッ!

気安くあの人のことを口にしないでください!」

美久は思わず立ち上がり、教室を出ていった。

「美久…」


「よう仁子!」

クラスメートの駿河が話しかけた。

「今回の敵、かなりヤバイみたいだよな

で、どうしたんだ?美久と何かあったみたいだけど」

「別に何もない

ただ、お前みたいに、私たちのことを思ってくれる者がいるのは心強い」

「…そうか、じゃ頑張れよ!」


「みんなおはよー!

じゃあ席につけー!HR始めるぞー!」

担任である十川とがわが教室に入ってきた。

「あれ?

火咲、今日は清水と一緒じゃないのか?」

「アイツは…」


「清水さんなら、個人的な問題があることでしょう

まぁ、わたくしには関係のないことですわ」

「岸間、別にお前には訊いてない」

美鈴の発言に呆れ気味に返す十川。



 「四乃、大型クリーチャーガンを持った生徒についての情報は何か掴めたか?」

仁子は、拠点の教室に入ってきながら言った。

「それが…

探偵部が総力を上げても、あの子についての情報を掴むのに苦戦してるとこだよ

何でも、あの子を校内で見たことがないのが原因だって…」

「そうか

今回もヤツらのことは過信しないことがよさそうだ」

「チョットそんな言い方ないっしょ!

それよりも、今日美久っちは?」

「アイツのことはいい

とにかくヤツに対する対策を考えるぞ」


四乃は、仁子に対して怪訝な視線を向ける。


二人がしばらく過ごしている間に、教室のドアが開いた。

「失礼し…

ぐぁぁあ痛ァ!!」

奈緒に肩車してもらっている壱が、ドアの上の部分に顔をぶつけ、転げ落ちた。


「気をつけろ!」

「だったら降りなさいよ!」


壱は立ち上がり、下にいた奈緒と揉め始めた。

その様子を呆れながら見ている二人。


「よく来てくれたな壱」

「どうやら犯人の子について情報収集してたみたいだね

アンタのキャラに似つかわしくないけど」


「人聞きの悪いこと言うのはよせ

とりま、私が仕入れた情報を伝えておく

彼女は1年G組の生徒、黒木 圭だ」


「1年G組…」

仁子は何かピンと来たような表情で言った。

「何か思い当たることあるの?仁子っち?」

四乃は訊く。

「あのクラス、この学校の中で最も多く問題児たちが集まっているっていうとこじゃないか」

「そうだ

彼女はそこでいつもいじめられていて、それでいつしか不登校になったらしい」


「不登校…

道理で、ハテナっちたちも身元を掴めなかったってことか」

四乃は頷いた。


「どうだ

私の情報、役に立ったことだろう」

得意げになる壱。

「(聞き込みしたの、全部私なんだけど)」

その横で奈緒は呆れている。


「しかし…

彼女のことが分かったところで、問題は彼女が今どこにいるかってことだな

それと、自分をいじめた同じクラスの生徒に恨みがあるなら、真っ先にそいつらを襲うと思うが、関係ない奴らばかり襲うのも不可解だ」

「っていうか、アイツ、美久っちのクリーチャーガンを見るなり逃げてったよ

そこんとこもよくわかんないよね〜…」


「ま、あれこれ考えるよりも、すぐ行動するべきってことだなー」

と、壱。

「(誰もが一番アンタに言われたくないことだわ…)」


「とはいえ、お前なんかに何か考えがあるのか?」

「前に美久の居場所教えてくれた人から、彼女が力になるかもしれないって言われた

今からその人の所に行く

ついてくるんだ」


「誰か知らんが、とにかく行けばいいのか?」

「じゃあ行こう!」

「「………」」

しかし、壱は動かない。


「おい奈緒!あれ!

何忘れてんだよ!」

「だーっ!わかったわよ!」

奈緒が嫌そうに壱を肩車する。

「出てからやれよ!また顔ぶつけるだろ、このデカ女が!!」

「っさいッ!!」


「「(なんだこの時間…)」」



 「なに?

あの女が、力を取り戻しただと?」

戻ってきたマンモスの少女・黒木 圭くろき けいの前で黒コートの女は言った。

「怯むな、真っ先に潰せ

お前の使命は邪魔なクリーチャーガンハンターの奴らを始末すること

今まで奴らをおびき寄せるために、破壊活動をさせたのだからな

今まで通り行け」

圭は頷き、歩いて去っていった。


女は、近くにいる蝦蟇型クリーチャーガンの少女・あやめに言った。

「お前は引き続き、彼女の補佐を頼む」

「あやつらの始末に成功すれば、忍研は元通りに…」

「他に手はないのだろう?」


あやめはしばらく黙ったあと、口を開いた。

「…御意」



 一同が向かったのは、化学室だった。

「やぁ

よく来たね、君たち」


「お前は…!」

「いかにも私が科学部の部長、犀東 円さいとう まどかさ」

待っていた白衣姿で眼鏡をかけた生徒が名乗った。


「お前が噂の犀東先輩か!

私のクラスメートの麻臼に恐ろしい実験を施してるっていう、要注意生徒の!!」

仁子は彼女を指差して言う。

「恐ろしいとは失礼な!天才的な実験と言ってくれ!」


「マウスっち!」

四乃は、口に布を巻かれて椅子に縛り付けられた麻臼を見つけた。

「こんなに苦しそうに…

ホラ、取ってあげるよ」

麻臼の口に巻かれた布を解くと…


「ギャハハハハハハハハハハ!!!!」

「うわっ!!」

笑い声を上げ、四乃は驚いた。


「なんだよこれ!?」

と、仁子。

「あれはこちょこちょに耐えられる薬の実験をしたところ、副作用で笑いが止まらなくなってしまってな…てな」

犀東はこう答えた。


「ワチャワチャしてるとこ悪いが、私から話を聞かせてもらう」

壱は前に出てきた。

「君が、クリハンの新しいメンバーだっていう壱くんか!

噂に聞く話とは裏腹に、いい子そうじゃないか」

「おいちょっとその手やめろ…」

犀東は、壱の頭を撫でながら言う。


「全然違いますよ!

壱は単なる助っ人!あくまで私のものです!!」

奈緒が言い切った。


「あぁ、副会長から話は聞かせてもらってる

私の発明が、君たちのサポートになるかもしれないってね」

「私の話を聞きなさいよ!!」


「本当に頼りになるのか…?」

(「この!ちょっと落ち着いてよ!!」

「ぎゃはははは!!くすぐったいよー!!」)

笑い転げる麻臼を必死に止めようとする四乃の傍ら仁子が言う。


「どうやら今、新たに現れたクリーチャーガンの行方が掴めなくて困ってるようだね」

犀東は、壱に言った。

「まぁそうだな」

「それなら丁度いいものがある

ちょっと取ってくるから待っててくれ」


「アンタ大丈夫なの?あんな人の力を借りて」

「今はコレ以外に方法が無いだろ」


犀東が、棚から色々なものを取り出してきた。

「壱くん、君にはクリーチャーガンの出現を感知できる能力があるみたいだね」

「あぁ、だがそれができるのは半径2km以内に限る」

「それで、この薬だ

この薬には、立った場所の周囲の時間経過が分かる効果がある

君のその能力と合わせれば、マンモスちゃんの居場所の特定は容易なことだろう」


「ちゃんとしたものも作れるのね…」

と、奈緒。

「待ちたまえ

普段は変なモノばかり作ってるって言いたいのかい?」

こう発言する犀東を、仁子、四乃は白い目で見ていた。


「こうしてる暇はない

早くあのクリーチャーガンをやっつけないと、罪もない人々の命がまた奪われていく…」

壱は言った。

「ヤツの目撃情報を確認しなければ!」

仁子は、スマートフォンでSNSの内容を確認する。

「エリアBの5丁目で彼女を見たっていう情報が!」


「私が行く」

「え?イッチーが!?

それじゃあウチらも…」

「お前たちはいい」


「行かせてやれ、四乃」

「仁子っち!?」

「ここはアイツに任せることにする

自分のレベルを知り、成長するにはいい機会だからな」

「あぁ…うん」


「よし来た!私も早速現場に赴くとしよう!」

と、意気込む犀東。

「じゃ頼むぞ、先輩

…って奈緒、何してるんだ?」

奈緒は、壱の前で屈んだ姿勢になっている。

「どうせ私に肩車させる気なんでしょ?

言われる前にこうやってるってわけよ」

「そうか、やっぱ気が利くわー」

こう言って、躊躇もなく奈緒の肩に飛び乗る壱。


「ねぇイッチー!そうしたらまた…」

「ぐぁあ!!」

壱の顔に、また入口の上の部分が顔にぶつかり、落下した。

「だから気をつけろって言ってるだろ!!」

「いいかげんこうなるって考えられるようになりなさいよ!!」

こうして、壱と奈緒はまた揉め始めた。


「ハハハ、君たち仲いいね〜」

その様子を見て犀東は笑った。


「本当に大丈夫なのかな…」

「うぅむ…」

四乃は呆れて言う。

仁子も、気難しそうな顔をしていた。



 「はぁ…

折角気にかけてくれたっていうのに、あんなこと言ってしまうなんて…」

美久は、一人で路地を歩いていた。

「とにかく、あの子を探さないと…」


『黒木圭を探しているみたいなの?』

「だ、誰ですか!?」

発された声の主を探そうと見回すが、辺りには人の姿は見当たらない。

『彼女はエリアEにいる

会いたいのなら逃げないうちに、早く向かうの』

「あなた、一体…」

『お主はすぐに死ぬ、そんなヤツに名乗る名前などないの』

「えっ!?」


やがて、謎の声は聞こえなくなった。

「とにかく急ぎましょう

瑞希さん…

あの人が見ているなら、落胆させることがないように…!」



To be continued…

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