ep.8 喪失

 禍々しく壊れ、黒煙を上げる建物。

一面に築かれる瓦礫の山。

その中心に私は立ち尽くす。


『タスケテ…』

苦しそうに助けを求める、あの人の声が聞こえる。


助けたいけど、手を伸ばす度に、体が固まっていく。

やがて、その声は鼓膜から遠のいていく。


「ああああああああああああああああ!!!!!!」


膝から崩れ落ち、自分の無力さに嘆きながら叫んだ。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ…!!」

気づくと、布団から飛び上がっていた。

また、この夢か…

寮の窓から差し込む光が、いつも通りの朝を感じさせていた。


「寝汗かいた…シャワー浴びてこよ」



 美久は浴場へ向かい、頭からシャワーを浴びる。

それと同時に心を落ち着かせる。


彼女は金剛台女子の学生寮で暮らしている。

田舎生まれの一人娘で、家族の生活を豊かにしたいことから金剛台に通うようになった。


浴場から出た後、朝食と身支度を済ませ、寮の部屋を出た。



 この日の授業では、先日行われた古文の小テストが返却された。

成績優秀である美久は、当然のように満点をとっている。


「美久、また満点かよ〜」

「ほんと頭いいよね〜」

「羨まし〜」


クラスメートである駿河するが麻臼まうすたつみが彼女の答案を見るため群がっている。


「いや、それほどでもないですよ

あなたたちも、もっと頑張れるんじゃないですか?」

「オレは部活が忙しいんだよ、なかなか勉強する時間がないぜ〜!」

「私も、いつも先輩の実験の被験者やんなくちゃいけなくって」

「私は、より百合百合した甘美な漫画を描くための研究で手一杯なの〜」

三人はそれぞれ言い返す。


「皆さん、部活を言い訳にするのは良くないですよ?」

そんな三人に美久は言う。

「お前だって、クリハンだかいう組織の活動で忙しいだろ?

それなのにあそこまでできるなんてさ、天才以外の何者でもねーじゃん」

「そうそう」


「日々の積み重ねが大事なんです

だから皆さんも…」

美久が言いかけた時、駿河と麻臼は美鈴の方に向かっていた。


「さっすが委員長!また満点か!」

「やっぱり委員長が一番の天才だよね!!」

「フフフ

この都市のトップであるわたくしは、常にこうでなくてはなりませんわ」

このクラスの委員長である美鈴も、満点を取っていたのだった。


「…まぁ、いつものことですね」

美久は少し肩を落とした。


「ところで美久ちゃん、仁子ちゃんとはどういう関係なの?」

残っていた巽は、突然訊いてきた。


「なっ、なんてこと訊くんですか!」

美久は顔を紅潮させながら言う。

「同じクリハンの仲間なんでしょ?

さぞ親密な関係なんだろうな〜

こう成績がいいのも、いつも勉強教え合ってるからなんじゃないの?

疲れたときも、お互いに求め合ったり…」

「そんなやらしい関係じゃありません!!仁子さんはただの仲間で…」

「あっ照れてる〜!言うのが恥ずかしいんだ〜!!」

「違いますよぉ〜〜〜〜〜〜!!!!」


二人がやりとりしている間に、仁子が入り込んだ。

「美久!聞け!」

「事件ですか!?」

「あぁ!四乃から連絡があった!」


「すみません巽さん、私行きます!」

「え、ちょっと、美久ちゃん!?」


「先生、私たちは急用が出来た!しばらく出てくる!!」

クリーチャーガンハンターのメンバー二人は、教室を出ていった。


「…フッ」

美鈴は、二人を見て不敵に笑った。



 二人は、事件が起こったというビル街へ着いた。

「この辺りか…

にしても四乃のヤツ、こんなとこまで来てまた授業サボってたのか?」

「それよりも、クリーチャーガンを持ってるという子を探しましょう!」


二人が辺りを見渡していると、近くから爆発音が響いた。

「あっちか!?」


そこに走って向かう仁子に美久が着いていくと、そこに凄惨な光景が広がっていた。

街の至る所が破壊され、死体や人体だったものの破片が散らばり、血生臭い匂いが立ち込めていた。


「これって…あの時と一緒…」

美久の体は、既に震え始める。


爆炎の中から、異形の巨砲を持った生徒が現れた。


「あの制服…確かに金剛台の生徒だ

アイツがこの街を滅茶苦茶に…行くぞ!!」

仁子は、ホルスターからライオンを取り出し、巻かれた包帯を外して戦闘状態にすると、生徒に向かっていった。


「仁子さん、気をつけてください!

この荒れ様からすると、あの銃はかなり強力なものだと思います!」

「構わん!やるしかないだろ!!」


「見つけたよぅ!このボサボサキャノンめ!!」

四乃が合流してきた。


「四乃!お前ここまでこんなとこまで来て何してんだよ!」

「だって、誰も取れないクレーンゲームの景品があるっていうから、どうしても挑戦してみたくってさ

それで無事ゲットさ!」

四乃はこう言い、手に入れたというぬいぐるみを見せた。


「ンなこと言ってる場合か!

今は戦いに集中しろ!説教は後だ!!」

「優しめに頼むね?」


生徒が持っていたのは『タイプエクスティンクション0087:マンモス』。クリーチャーガンの中でも強力な部類に入るというものだ。

マンモスからは火力、直径共に大型クラスの弾丸が放たれ、一発で攻撃を受けた箇所を焦土に変える。


この凄まじい攻撃には、戦い慣れていた二人ですら苦戦する。


「あ…ぁ…」

この様子を見て、美久の体が硬直する。


「コノヤロ…

負けるもんか

ウチが思い知らせてやるぅーーーーー!!!!」

四乃は負けじとマンモスに向けてオラングタンの腕を伸ばす。

しかし、その腕はマンモスの鼻を丸々模した砲身で絡め取られ、投げ飛ばされた。

「うわあああああああッ!!」

マンモスを手にした生徒は、すぐさま標的を四乃に向ける。

四乃は間一髪の所で砲撃を躱したが、その勢いで背負っていたリュックから、ぬいぐるみがいくつか落ちた。

そのぬいぐるみに弾丸が直撃した。

「アァァァァァァァ!!ウチの戦利品がぁぁぁぁ!!!」


「強さが何だ!私の攻撃で怯め!」

仁子はライオンの火力を最大にし、一点射撃を加えた。

が、生徒はマンモスの砲身を振り回し、その攻撃を防いだ。


「ぐあああぁぁぁ…ッ!!」

爆風を受けて仁子は後方へ吹き飛ばされた。


「・・・チッ」

生徒はマンモスの砲身を地面に向けると、発射した勢いで飛び上がり、そのまま退散していった。


「はぁ…はぁ…

間違いない、あの強さは…

絶滅種エクスティンクション

美久は、震えながら言った。



 三人は戦いの後、拠点へと戻った。

「アイツ、なんて強さなんだ

何よりウチの景品をメチャクチャにして…絶対にやっつけてやる!」

と、四乃。

「そ・れ・よ・り・も

お前には話がある!こっち来い!」

「ひてててて!ひっぱんないで〜」

四乃は、仁子に右頬を引っ張られながら連れられる。


「あの銃、実に強力でした…」

美久が言う。

「前から気になってんだが」

近くに座っていた壱が、美久に話しかけた。

「美久

クリーチャーガンハンターでなんでお前だけ、クリーチャーガンを持ってないんだ?」


「え、それは…」

「私だって戦おうとしてるというのに、お前だけ一緒に戦わないのは、何か事情があるのか?」

「…えぇ

私だって持ってましたよ

ただ、私が使うには強力すぎた…

この力のせいで、私は大事な人を傷つけてしまった…」



 これは、私がクリーチャーガンハンターに入る前の出来事。

私は、当時クラスメートで親友だった加賀 瑞希かが みずきと共に登校していた。


「ねぇ美久」

瑞希は話しかけた。


「何ですか?」

「ヒーローってさ、なんか憧れるよね」

「またそんなことを

あなたって人は本当に、子供みたいですね」

「いーじゃん!私たちまだまだ子供なんだしさー!

だってさ、悪いやつをやっつけてはさ、みんなに感謝されるんだ

いいなって思わない?」

「自分の力を見せつける為だけに、ヒーローなんてなるものじゃないですよ

悪を懲らしめるにしても、自己満足じゃなく、人のためにやらないと」

「も〜、美久はいつも現実的…

もっと夢見ないと!」


瑞希とはいつも仲良しで、唯一呼び捨てで呼んだ程だった。

彼女は、弟が見ている番組の影響で、悪と戦うヒーローに憧れていた。


教室に着くと、そこで事件が起きていた。

クラスメートの一人が、獣のような形をした銃を他の生徒に向けていた。


「大人しくしろ

声を上げたら撃つ!」


最初はただの遊びだと思って、平然と入っていった。するとクラスメートは、私たちにコヨーテ型の銃を向けた。


その表情を見ると、本気で殺気立っているということを感じた。


「お前たち、殺してやる…」


私たちはただ固まっていた。

そこに…


「ここか!!」


教室の窓を割り、一人の生徒が飛び込んだ。


「誰だお前!」

「わざわざお前なんかに名乗る必要は無い!」


その生徒は勢いよく飛びかかり、クラスメートを取り押さえる。その勢いでコヨーテ型の銃は手放された。


それを確認すると、生徒はすかさずライオン型の銃を取り出し、コヨーテ型の銃を撃った。

クラスメートはそのまま意識を失った。


「か、かっこいい…!」

瑞希は彼女に見惚れていた。


「ありがとうございます

あの、私に名前だけでも…」

私が言うと、彼女は振り向いてこう返した。

「クリーチャーガンハンターの火咲 仁子だ

またな」

そのまま、仁子と名乗った生徒は、颯爽と去っていった。


帰り道、瑞希は興奮して私に話しかける。

「ねぇ美久ねぇ美久ねぇ美久!!!!

あの人、メッチャかっこよくなかったー!?

まさにヒーローって感じ!!私たちも一緒に戦いたくなーい!?」

「簡単に言いますけど、結構大変なんですよ戦うのって」

「ちょっと大変なのがいいんだよ!敵は強いほど、展開は燃えるからねー!」

「瑞希のその底のないポジティブ思考、むしろ羨ましいです」

私は、瑞希に半ば呆れていた。

「…そうだ

ちょっと寄り道してく?いい喫茶店見つけたんだ」

「急に何を言い出すかと思えば、そんなことですか

いいでしょう」


…この時は、あんな悲惨な事件に巻き込まれるなんて思ってもいなかった。



 途中で瑞希と逸れてしまったので、彼女を探しに駅前を探し回る。

そこで私は、異様な光景に出くわした。


ある地帯が丸ごと赤く染まっている。それが、人間の血液によるものだとわかったのは、残った片腕が地面に落ちているのに気づいてからだった。

「なんですか、これ…」


赤く染まった場所の中心に、紅いメッシュの入った金髪で、左耳にピアスをした少女を見つけた。

「ぐぅァッはッはッはッはッはッはッはッはッ〜〜〜〜〜ァウッ!!!!!もっと喰わせやがれェエ!!!!!」

その少女は、狂ったような笑い声を上げている。


「美久ー!!」

聞き覚えのある声が聞こえた。

「瑞希!!」

私は瑞希に近づこうとすると、少女が銃に似た異形の物体を瑞希に向けた。

その砲身は、太古に生息していた肉食恐竜の頭部に似ていた。


「てめえもこのティランノの餌にしてやんよ

さア、どこから食わせてやろうかなァ〜〜〜〜〜〜」

「嫌!やだ!死にたくない!助けて、美久ぅ!!」

「ふッはは!!その表情たまらねえぜ〜〜〜…

そんなに生きてぇか?あぁ!?」

歪んだ笑顔を浮かべながら、紅い瞳で瑞希を睨みつける少女。その周りを野次馬が囲む。


「てめェら、余計なことしたらこいつの命はねえぞ?」

少女は瑞希を人質に、こう叫んで野次馬を黙らせた。


「うぅぅ…やだ…死にたくないよぉ!」

必死に助けを求める瑞希。

「てめぇもおもしれえヤツだなァ

じゃあこれやるぜ

もっと面白くさせてやんよ」

こう言うと、少女は銃を取り出し、瑞希に見せつけた。


「やだ!いらない!」

瑞希はこう言って断る。

「命は助けるっつってんだろ?

だがな?死ぬより怖え目に遭わせてやんよ!」


瑞希にクリーチャーガンを見せつけ続ける少女。

しばらくすると、瑞希の目が虚ろになった。


そのあと、少女が持っていた銃を奪い取った。


「何してるんですか?瑞希!?」

私は呼びかけた。でも、もう遅かった。


「うりゃああああああああああッッッ!!!」

なんと瑞希は、銃から生えていた棘のついた先端部分を振り回し、周りにいた人たちを殺害した。

「瑞希!!」

呼びかけるも彼女の耳には私の言葉は一切届かず、叫び声を上げながら殺害を続ける。

私にはもう、何も出来なかった。


「はぁ…はぁ…

…ぁ!?」

しばらくして、瑞希は意識を取り戻した。

そして、目の前の惨状を見て恐れ慄いた。


「どうだったか?ケントロの使い心地はよ?」

「え…?何それ…」

「信じらんねぇかもしんねぇけど、これ全部てめえがやったんだぜ?

どうだい?人を殺してみた感想は?」


「や、やだ…

私が…人殺しなんて!

あなた、こんな事し続けて胸が苦しくならないの!?」

「罪悪感ってのは人間の敵だ

ンなもん乗り越えたオレには、ナンも関係ねェよ」

「いや、信じられない…」


「オラァ!!」

「ぐはぁッ!!」

少女が瑞希の頬を殴った。

「どうだ?オレの事が憎いだろ?

殺してみろよ…その銃でよォ!!」


「ぐッ!!うあぁぁぁぁぁぁ!!!」

瑞希は再度暴れだし、少女に牙を剥いた。


「どうしよう

早く瑞希を止めないと…」

私は、少女が置いた大型のバッグの中に、銃を見つけた。

「こうしちゃいられない!!」

私はバズーカ砲に似た形状の大型の銃を手に取った。


「てめぇ

まさか自らクリーチャーガンを手に取るとはなァ?

コイツの暴れっぷりに憧れたか?」

「この力は、関係ない人の命を奪うためのものじゃない

その子を救うための力です!

瑞希をこんな目に遭わせて…あなただけは許さない!!」

「無駄だッ!!

てめぇはその力に飲み込まれる

クリーチャーガンで人間の命を救うだァ?勘違いしてんじゃねぇ

クリーチャーガンは人間を滅ぼすための力なんだよォッ!!」


「はああああああああああッッッ!!!!」

私は大型クリーチャーガン


『タイプエクスティンクション0004:セイスモ』


を手に、少女に向かった。

その後、私が何をしていたのか

自分でも憶えていなかった。



 あの女は、狂っていた。

流石の私でもこう感じたのは、あの場所での美久を見かけた時だった。

生徒からの通報を受け、事件の現場に向かってみれば、彼女の動きは目に留まった。


大型クリーチャーガンを手に取り、荒れ狂いながら街を破壊していく美久。

「問題の銃は…あれなのか?」

私は少しの疑問を抱きながらも、彼女に向かっていった。


「覚悟しろッ!!」

私の声を聞くと、美久は一瞬我に返ったように見え、動きを止めた。

すると、彼女は流血するほど舌を噛んだ。

「ゔあああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」

その後、彼女はまた破壊活動を始める。


「やはり敵で間違いないみたいだな…やるしかない!!」

私は、ライオンの銃口を大型クリーチャーガンに向けた。

「やめてください!!

アイツを、やらないといけないんです!!

そして…瑞希を助け出すッ

ぐああああああああ!!!!」


「(アイツ…

まさか、クリーチャーガンの意識の支配から逃げるために、わざと痛覚を与えて…)

無茶するな!早くそれを手放せ!!」

「出来ません!!私のやることを終えるまで!!」

「馬鹿なことを…!!」


「うッ!!」

しばらくしてから、美久は意識を失い倒れた。

同時に、大型クリーチャーガンを手放し、それは地面に潜り込んでいった。



 私が目を覚ました頃には、瑞希も金髪の少女もいなかった。

代わりにいたのは、あのクリーチャーガンハンターを名乗る赤髪の生徒、仁子さんだった。


「私…今まで何を…」

「気が付いたか」

仁子さんが話しかけた。


「そういえば!瑞希は!?

にしても…酷い荒れっぷり…」

「これもお前がやったんだよ」

「…え?」

「お前はクリーチャーガンハンターを手にして暴れ回った。その結果がこれだ」


周りは瓦礫だらけで、人の気配というのを一切感じ取れなかった。


「そんな…すると…」

「おそらく、ここにいた中で助かった人間はいないだろうな」

仁子さんは非情に言い放つ。


「どうして…

どうして、助けてくれなかったんですか!?」

「お前を止めるので精一杯だったからだ!一番危険なことをしてるお前を!」

「あの人は…

瑞希は私の大事な人なんです!それを諦めろっていうんですか!?

あなた、それでも正義のために戦ってるというんですか!?」


「何も知らないくせに、そんなこと言うな!!」

「ひぃっ!」

仁子さんはすごい剣幕で言い放った。


「す…すみません、つい…」

「お前は何も分かってない

私が戦うのは決して人助けのためじゃない

ましてや、安っぽい見せしめのための正義の為でもな

そもそも…この世に正義なんてモンはないんだよ!」


「正義なんて…ないんですか?」

私は思った。

やっぱり、ヒーローなんて薄っぺらい憧れの気持ちでなるものじゃないんだって。

もっと言えば、守ってもらう気しかない上に、そうしてもらえないとヒーロー側を責めるような人には、守ってもらう価値もないんだって。

なら、どうしたらいいのか…


「仁子さん」

「何だ?」

「私を…

私を、クリーチャーガンハンターに入れてください!」

「お、お前

急に何を言い出すんだ!?」

「これ以上、私みたいに大事のなものを失って悲しむ人を見たくないんです!

このまま何もしないより、私は一歩でも動かなきゃいけない…

こうすれば何か分かってくると思ってるんです!!

だから…お願いします!!」

私は、必死で訴えた。


「フッ

お前みたいなヤツ、初めて会ったよ

ちょうどいい、このクリーチャーガンハンター、今メンバーが私一人しかいないんだ

だからメンバーが増えるのは大いに歓迎だ!」

「じゃあ、私を、認めてくれるんですか?」

「あぁ!

明日の朝、2階の多目的教室に来い」


そして、次の日。

私はそこに来た。


「おう、来たか

お前、美久と言ったな

そこに座れ」

「はい」


私が椅子に座ると、仁子さんは注射器を取り出した。

「なっ、なんですか?それ!?」

私は一瞬警戒した。

「クリーチャーガンを扱うための抗体だ

これを接種すれば、何の異常もなくクリーチャーガンを扱うことができる

私はこれのおかげで、クリーチャーガンで戦うことができてるってわけだ」


私は、左腕を差し出した。

「じゃ、いくぞ

チョット痛いだろうが我慢しろ」

仁子さんは、注射器の針を左腕の上腕に刺した。


「!!!!

ぐわぁぁぁぁぁあ!!痛いッ!!身体中がチクチクすりゅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

抗体が注入された直後、尋常ではない痛みが身体中に走った。

「かの人魚姫だって、痛みに耐え抜いた上で脚を手に入れた

あれくらい大きな力を扱うには、それくらいの対価が必要ってことさ」

「全然ちょっとってレベルじゃないじゃないですか!!」

「これを2週間毎に接種するんだぞ

こんな調子じゃ、メンバーは務まらんな」

「そんなぁ〜」

私は涙目になった。

しばらくしてから、徐々に痛みは引いてきた。


「安心しろ

クリーチャーガンが体に馴染んでいけば、だんだん痛みは小さくなる」

「そうですか…

それで、私が使うクリーチャーガンっていうのは…」

「お前にはまだ早い

しばらくは私のサポートに回ってもらおう」

「え、でも…」

「折角仲間になったところで、足引っ張られちゃ困るからな

私としては、お前の命が何よりも大事だ

お前はお前のできることをやればいい

クリーチャーガンは持ってなくても、お前は立派なクリーチャーガンハンターだ」

「仁子さん…」


その日から、私は心に決めた。

彼女にずっとついていくと。

そしていつか、瑞希を助けると。



 「お前に、そんなことがあったんだな」

美久の話を聞いた壱は、こう言い放つ。

「えぇ

しかし、今まで使うのを避けてきたこの力、使わざるを得ない時が来たみたいです」

「というと?」

「現れたんです

絶滅種エクスティンクションが」


「ほぁぇ?」

何も知らなそうな反応をする壱。

「とにかく、とても強い銃のことです」


こう言うと、美久は立ち上がった。

「壱さん

私、行ってきますね」

「?」

頭を傾げる壱を尻目に、美久は拠点を出ていった。


「はぁ〜、仁子っちの話、やっと終わった…

って?美久っちは?」

と、四乃。


「(アイツ…

まさか…

あの力をまた使おうとしてるのか…!?)」

と、仁子は予感する。



 美久は、裏山にやって来た。

「セイスモで間違いないですよね

もしまだ無事ならば…頼みます

もう一度…私に力を!!!!」



To be continued…

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