ep.5 使命!!

 クリーチャーガンハンターのメンバーである金居 皐は、ヘッジホッグを手にしたコンピューター部部長、真山と戦闘する。


「ユー、コンピューター部の部長だったみたいだね」

「それがどうした!?」

「ミーはこういうタイプの人間は苦手なんだよね

こういうヤツほど、倒し甲斐がある!」

「生意気な口を!お前には用はないが、気に入らんからついでに殺る!」

「ここでやられるわけにはいかないんだよッ!!」

皐のイーグルでの攻撃で、ヨーヨー状になったヘッジホッグの先端部分を繋げる糸のような部分を寸断した。


「ぐッ…!」

「参ったか?これがイーグルの…

いや、ミーの力だ!!」


「それはどうかな!?」

真山はこう言うと、ヘッジホッグの先端が再生した。

「しまった!宿主が無事な限り、銃はいくらでも再生するんだった!」


「喰らいやがれッ!!」

改めて攻撃を仕掛ける。

先程のような不規則な攻撃を、皐はスケボーを駆使して躱していく。


「ユーを倒す!アイツが来る前にな!!」



 戦闘を続けているうちに、日が昇ってきた。


「はぁ…もう無理…タンマ…」

「クリーチャーガンの催眠が弱まってきたみたいだな

ましてや、夜通しの戦闘が、体力が少ない宿主に相当の負荷をかけているようだ

よし、観念しろ!!」

皐は、一気に攻撃を仕掛けようとする。

その時。


「グッモーニン」

「その声は!?

月岡壱!!朝は苦手な筈じゃあ!?」

声がした方を見上げると、倉庫の屋根にバクを手にした壱が立っていた。


「人に対して疑問を抱く前に、自分の服装に対して心配したらどうだ?」

「はぁ?」

皐の服装は、普段着のままであり、真山も同様だ。対して壱は制服姿となっている。

「始業までは間もない

こんなよくわからない場所まで来て、制服を取りに戻る時間はあるのか?

まぁ、それまでに決着は付けてあげるがな!!」

壱は飛び降り、ヘッジホッグに狙いを定めた。

だがその時。



「コイツめっ!!」

なんと皐は、壱目掛けて攻撃を仕掛けた。

「な、何をする!?」

「ユーさえいなければ!!」

「正気か?

仕方ない、そっちがその気ならやってやる!」

こうして、クリーチャーガンを扱う者同士の戦いが始まった。

幻影を駆使して戦う壱と、スケボーを駆りつつ弾を乱射する皐。



「うへ〜、何やってんだよ二人共〜…

これじゃあ決着が付かないし、学校始まっちゃうよ〜!!」

四乃が駆けつけてきて言った。

ふと真山の方を見ると。

「…あれ?私何やってんだ?

って、ここどこだよ!!」

「やばっ!意識戻ってる!!」


「幻影使いか…厄介だ

ならば!」

皐は、壱へ接近し、その周囲をスケボーで回った。


「(ウヘェ、まともに見てたら目が回ってまう。なら、目を閉じて…)」

壱は皐を見ないように目を閉じた。すると、そのまま倒れ込んでしまった。

「フフフ。かかったな!覚悟しろ、月岡壱!!」

その様子を確認し、壱に銃を向けた。


「このバカ皐っち!!」

「!?」

四乃の叫びに、皐は振り向いた。


「何のためにクリーチャーガンハンターになったんだよ!!

初めて会った日のこと、忘れたのかよ!!」

「…しっ、四乃…」

「こんなことするなんて皐っちらしくないよ!あの時言ってた言葉を思い出してよ!」


皐は黙りこくる。


「黙ってたって何も分かんないよ!どういう気持ちなのか言葉で示してよ!」


「何よそ見してる!!」

ヘッジホッグを持った真山が再度目を覚まし、四乃を襲おうとする。

「うわっ!!」

「くたばれ!」

四乃に攻撃を放つ。


「なッ…!!」

「皐っち!?」


皐は、攻撃から四乃を庇って盾となっていた。

幾つもの飛ばされた針が背中を貫き、体から口から流血している。


「お前、馬鹿なのか?

こんなヤツを庇って、自分が死にに来るとはな…」


「なにしてんだよ!こんなウチのために…」

「言ってたろ

ユーを守るために戦う…って…」

皐は、その場に倒れた。


「皐っちぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」



 「どうすればいいんだよ!そろそろ学校始まるし、真山先輩は操られてるし、イッチーは寝てるし…」

狼狽える四乃。


「白けたわ、さっさと或葉を狙いに…

ごふっ!」

真山は、仁子の後頭部への手刀で気絶させられた。


「無事でしたか!?」

「部活の朝練に向かう生徒から通報が入ったから、来てみたらこの様か

全く手間かけさせる…」

仁子と美久の二人が来た。


「みんな!!

ウチはこの通りだけど、皐っちが…!!」

「これは大変!早く病院へ!」


「コイツめ!」

仁子は、真山の手から離れたヘッジホッグを退治しようとする。

「ダメだよ仁子っち!まだ皐っちとイッチーの決着がついてない!」

それを止める四乃。

「そうか…ならこの生徒をクリーチャーガンから遠ざける!美久、頼むぞ

…っておい!」


「美久っちはイッチーを学校に!」

「わかりました!」


「あぁ〜、もう滅茶苦茶だ!

しょうがない、私がやるか!!」

「待って!ウチの制服貸すから!」

「四乃さんは急いで!皐さんの息があるうちに!」

「了解!銃はオラングタンに抑え込ませておくよ!」



 校門前で、鳴が生徒の見張りをする。

「おはようございます!」

「おはよう、挨拶するとはいい心がけね」


「月岡、やっぱり負ぶさってもらう癖は治らないのね・・・」

「会長、おはようございます」

壱を背負った美久が挨拶した。


「ってあれ!?何で貴方が?いつもなら乙女ヶ原の役目じゃ!?」

「ちょっと頼まれまして…ではお先に!」

「は、はぁ…

って、真山まで!?なんでこいつに負ぶさってもらってるのよ!?」

次に、(四乃の制服を着せられた)真山を背負った仁子が来た。

「あれこれ説明してる暇はない!」


「今日の星占い、ビリだったし、何か悪いことでもあるのかしら?」



 ミーって、ホントにバカなヤツだ

四乃を危険な目に遭わせないために、自分が危険な目に遭うとは…

アイツらと違って、ミーにはちゃんとした戦う理由がない

銃を始末しまくる自分の強さに酔ってるだけだ

なぁユー、教えてくれ

ユーはなぜ戦う?

そして示してくれ

ミーのあるべき道を…



 真山は、3年A組の教室に連れて行かれ、そこで目を覚ました。

「あれ?いつの間にか学校…私寝ぼけてるのか?

…って、制服キッツ!しかもリボンの色違うし!」


「よっしー、制服の着方雑ー!」

「その制服誰のー!?妹の!?」

その格好を見て、クラスメートたちが笑う。


授業が終わり、昼休み。

「ふぁ〜〜〜

制服が気になって授業集中できなかったわ〜!

まぁ授業なんて普段から大して集中してないけどさ」


「真山、ちょっと来てくれる?話があるわ」

鳴が話しかけてきた。

「何の話だよ?」


廊下に連れて行かれ、そこで話を始めた。

「コンピューター部は、本日を以て廃部することになったわ」

「は、廃部!?

ちょっと待てよ!折角新しい部員がやってきたところなんだ!」

「その部員は入部申請してきたの?まだなんでしょ?」

「いや、それは…」

「それともまだ言い訳があるというの?

こんな実績も残さずに堕落しまくった部活に、存続価値なんてないわ」


「お前…どこまでも…」

真山の怒りの感情に、ヘッジホッグが呼応する。


「そういえばあなた、この前生徒会室を荒らしたとき、怪しい物体を手にしてたわね

あれは一体何なの?」


オラングタンに抑え込まれていたヘッジホッグが飛来し、真山はそれを手に取った。


「それって

この銃のことか?」

ヘッジホッグを見せつける真山。


「そ、そうよ!

それを…それを下ろしなさい!」

「お前みたいな邪魔者を始末するための力だッ

改めて言う、覚悟しろ或葉ァ!!」


「そこまでだッ」


「何だァ?

…月岡」

バクを構えた壱が現れた。


「なんであんたが!?」


「観念するんだな、真山先輩」

「お前まで私の邪魔をする気か?

残念だなァ、お前とは分かり合えると思ってたのに」

「別にその偉そうな人間を庇うつもりはない

目的は一つ、お前に取り憑いた疫病神を取り払うことだけだ!!」


「(何であんなものを、月岡も持ってるわけ?

クリーチャーガンハンターとか言うのと、何か関係があるってことかしら?)」

普段とは違う異様な壱の姿を見て、鳴は疑問を抱く。


「くッ

生意気なチビだ!

アイツみたいに串刺しにしてやろうか!!」

真山は壱に襲いかかった。


「会長

ここは危ない、逃げろ」

「まぁ、今回ばかりはあなたに従うわ

感謝するつもりはないんだからね!」

仕方なさそうに、鳴は走り去っていく。

その後、二人の戦いが始まった。



 「目を覚ませ!あの時みたいな陽気なオタクの先輩はどこ行ったんだ!」

ヘッジホッグから放たれる針の雨を避けながら、バクによる攻撃を放ちつつ壱は訴えかける。

「ここにいる、だがここにはいない!」

真山の口から、こんな言葉が出る。


「うぉりゃあ!!」

壱は真山に思い切り飛びつき、その勢いで窓を割り外へ飛び出し、連絡通路の上に落ちて転がった。


「クソッ、この服のせいで動き辛い!」

「そんなの手放してしまえよ!また明日もオタクトーク、するんだろ

あの時、結構楽しかった

こう感じたのは私、初めてだったんだ!」

「私たちに明日は無い!アイツに私たちの明日を奪われたんだ!」

「だからってソイツを殺して、何が変わる!」


「さっきからゴチャゴチャと話してるようだが、説得しようたって無駄だ」

真山は直立した状態になって動きを止めると、こう発した。

「何を言ってる?」


「コイツの意思は、我々が乗っ取っているのだからな!!」


「(この声は…真山先輩の意思じゃない!)」


「イッチー!早くソイツをやっつけて!

さもないと、完全にクリーチャーガンの意思に乗っ取られちゃう!」

四乃が、こう呼びかけた。


「分かってる

だが…コイツを倒して先輩を救ったところで、また何事もなかったように会えると思うのか?」

「それは無理だろうね

でも、ここで誰もやらなきゃ、誰がやるんだ?

ウチら以外でね!」

「ぐっ…」


『少女よ、立ち止まってはダメだ』

壱の思考が一瞬止まった時、脳内に声が響いた。


「(何の声だ?)」

『麿はバク

君を選んだクリーチャーガンだ』

「(…変な一人称だな

それはいいが、何で喋れる?)」

『君の意識に直接話しかけている

君は、あの先輩を本気で救いたいのだな?

ならば、彼女の意思に直接話しかけるんだ』

「(そんなことができるのか?)」

『君は麿の能力を受け継いでいる、それくらい簡単なことだ

さあ、彼女の事をイメージして』

「(あぁ、分かった)」

壱は、バクの言う通り真山の心の中をイメージし、語りかけるのを試みた。


「見えた!」


心理空間の中で、壱は真山の姿を見つけた。

「…お前は!」

「先輩!聞こえるか?私だ!

アンタはいくら恨みがあっても、人を殺したりするようなヤツじゃないはずだ!

その銃を手放してくれ!」

「それはちょっと無理かな

だってこれを手にしてから、戻れないんだよね〜」

「アンタ

操られてるってのに、なんでそんな陽気でいられるんだ」

「なんでって言われても、これが普通のアタシだからさ

今のアタシ、ヤバい事になってるんでしょ?だからさ、早くアタシを解放してくれない?」

「でもそうしたら、アンタは私ともう会えないかも知れない!」

「いいんだ

この先もこういう奴に同じことするんだろ?

私みたいに変なのに手を出しちまうバカタレがこの先も出るかもしれない

そういうヤツを、お前には救ってやってほしい

お前も結構、面白い奴だしさ」

「せ、先輩…」

「早くしてくれ、アタシはもうそろそろ限界だ

もしまた会ったら、面白いアニメ勧めてやるよ

じゃ、よろしくなー!」


真山の心の声を聞いたあと、壱は現実に戻った。


「私は戦う…この銃に誓って!!」


「おりゃーーーーーッ!!!」

真山はヘッジホッグの先端を飛ばし、攻撃を仕掛ける。


壱は、幻影を見せて翻弄する。そのうちに、真山はコントロールを失い、ヘッジホッグのヨーヨーの糸に当たる部分でグルグル巻きになった。


「真山先輩、絶対にお前を救う!」

バクの鼻部分から出したシャボンに真山を閉じ込める。壱が息を吹きかけると、ヘッジホッグだけが分離し、シャボンの中に残った。


「…見極めた!」

それに狙いを定め、バクの銃口から大きな頭の形のエネルギー弾を飛ばした。虎のような大口でヘッジホッグを食らった後、爆散した。

その後、真山は気を失った。


「よし!やったね、イッチー!」

四乃は、壱にグッドサインを送る。


「やったぞ、バク…ふわぁ」

戦いの疲れによって、壱は倒れ、眠りについた。


「って、また寝ちゃったよ…

まぁ、いいか」




 「くっ、またやられてしまったか!忌々しい!」

その様子を、謎の黒いコートの女が見ていた。



 その後。

「ってわけで、イッチーは今日からクリーチャーガンハンターの正式なメンバーさ♪」

四乃は、壱をメンバーに加えたことを仁子、美久の二人に告げた。


「勝ったんだな、アイツに」

と、仁子。

「アイツのことなんて知らん」

と、壱は返す。


「でも、あれで勝ったって言えるんでしょうか?」

「確かに

貴重な戦力を失ってしまったのは惜しいな…」


「皐っちなら、きっと認めてくれるよ!

アイツ、意外と仲間思いだし!」

四乃が言った。

「そうなのか?全然そういうふうに見えなかったが」

「もう!イッチーは見てないからそんなこと!

ウチのこと命をかけて守ってくれたんだよ!そのときゃもう大変で…

ってもう!聞いてよ!!」


「しかし、今日は奈緒、いないな?

どうしたんだ?」

仁子は疑問を抱く。



 その頃、奈緒はというと。

「月岡の保護者たるアンタが遅刻だなんて!見損なったわ!」

「お願い!壱の布団に入りながら壱の下着の匂いを嗅いでたら、気持ち良すぎてそのまま寝過ごしちゃったことは内緒にして!!」

「アンタそんなことしてたの!?とんでもないド変態じゃない!!」


生徒会室で、鳴に責められているのだった。


To be continued…

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