28話



 インターネット上にある某大手電子掲示板では、とある話題で賑わっていた。




――――――――――――――――――――――――







 256:名無しのラノベ好き


 美桃桜子カワユス




 257:名無しのラノベ好き


 まあ、現役女子高生様だからな。

 若いってだけで、それは一種の強みでもある。




 258:名無しのラノベ好き


 それもあるが、やっぱあの見た目でしょ。

 小説が書けるってだけでもすげぇのに、美少女と来てる。

 どこの鬼に金棒ですか?




 259:名無しのラノベ好き


 美少女だけなら美作零もいいのでは?




 260:名無しのラノベ好き


 >>259


 確かに見た目だけなら勝負になるかもしれんが、我が儘お嬢様気質だからなー。

 生粋の大和撫子には勝てんて(>_<)ノ




 261:名無しのラノベ好き


 あと、あのおっぱいな。




 262:名無しのラノベ好き


 それな!




 263:名無しのラノベ好き


 それな!




 264:名無しのラノベ好き


 それな!




 265:名無しのラノベ好き


 まったく、男どもときたら……。

 デカけりゃ何でもいいのかよ!!

 コンチクショウが(# ゚Д゚)!!!!




 266:名無しのラノベ好き


 >>265


 大は小を兼ねると言いますし、そこは致し方なきことかと……。




 267:名無しのラノベ好き


 まあ、巨乳は正義よ。

 小さいのがダメってわけじゃねぇけど、あれは反則だ。




 268:名無しのラノベ好き


 はあ、桜子ちゃんの大いなる谷間に包まれたい(〃▽〃)ポッ




 269:名無しのラノベ好き


 >>268


 通報しますた( ー`дー´)キリッ!!




 270:名無しのラノベ好き


 >>269


 ちょ、おまっ!!




 271:名無しのラノベ好き


 てか、女性ラノベ作家じゃなくて男の方はどうなのよ?




 272:名無しのラノベ好き


 男は、【皇帝陛下】一択だろ?




 273:名無しのラノベ好き


 皇帝陛下ってなんですかー?




 274:名無しのラノベ好き


 お、初心者さんかなー?




 275:名無しのラノベ好き


 >>273


 帝流聖(みかどりゅうせい)……ライトニング文庫の専属作家であり、今最も脂の乗っているラノベ作家として日本ライトノベル界を背負って立つ男性作家。

 ペンネームに帝という文字が使われているのと、日本国内で頂点に君臨しているという意味を込めて、ラノベファンの間では【皇帝陛下】というあだ名で呼ばれている。

 ある雑誌に顔写真付きで掲載されてから、女性ファンが急増したほどのイケメンであるが、インタビューの内容がぶっ飛んでいることから、性格に難がある模様。

 若干二十七歳にして、累計販売部数九百六十万部の超ミリオンセラーを達成。



 276:名無しのラノベ好き


 長ったらしい説明おつ!

 と、いうことだ。わかったか、新入り?




 277:名無しのラノベ好き


 >>276


 何で、なにもしてないおまえが偉そうなんだ(笑)?




 278:名無しのラノベ好き


 てか、皇帝陛下か……。

 今年も【あのライトノベルがやべぇ】で一位になるのかね?




 279:名無しのラノベ好き


 前々回と前回は総合一位だったし、まあ間違いないっしょ。




 280:名無しのラノベ好き


 逆に、一位ってこいつ以外いなくね?




 281:名無しのラノベ好き


 まあ、純文学を除けばまず間違いなく文才のある作家だからなー。

 名前とあだ名はともかくとして……( ̄д ̄)ノ




 282:名無しのラノベ好き


 そうだなー。

 名前とあだ名はともかく……。




 283:名無しのラノベ好き


 酷い言われようだな(笑)




 284:名無しのラノベ好き


 でも、実際は相当ヤバいらしいぞ




 285:名無しのラノベ好き


 そりゃあ、あラべぇで二年連続総合一位だからなぁ。




 286:名無しのラノベ好き


 あラべぇってなんだよ(笑)?




 287:名無しのラノベ好き


 あのライトノベルがやべぇの略で“あラべぇ”じゃね?




 288:名無しのラノベ好き


 誰が考えたんだ? んな馬鹿みてぇな名前。




 289:名無しのラノベ好き


 >>288


 私だ。




 290:名無しのラノベ好き


 おめぇかよ!!




 291:名無しのラノベ好き


 誰だよ(笑)




 292:名無しのラノベ好き


 ぽっと出のモブ如きが、しゃしゃってんじぇねぇよ!!




 293:名無しのラノベ好き


 辛辣なお言葉を賜った289さん。何か一言!!




 294:名無しのラノベ好き


 ラ〇ュタは不滅だ。何度でも蘇るさ!!




 295:名無しのラノベ好き


 ( ゚Д゚)




 296:名無しのラノベ好き


 ( ̄д ̄)




 297:名無しのラノベ好き


 ( 一一)




 298:名無しのラノベ好き


 (-_-)zzz




 299:名無しのラノベ好き


 もはやコメントすら書かれなくなったか……。




 300:名無しのラノベ好き


 いや、そこはせめてバ〇スって叫んでやれよ(笑)




 301:名無しのラノベ好き


 ……話を戻そう。

 他に男のラノベ作家で来てるやつはどいつだ?




 302:名無しのラノベ好き


 四弐喪怒利ニコルソンだな。




 303:名無しのラノベ好き


 誰だよ(笑)




 304:名無しのラノベ好き


 そいつ絶対有名どころじゃねぇだろ(笑)




 305:名無しのラノベ好き


 そもそも、漢字の部分が読めん(笑)




 306:名無しのラノベ好き


 ……有識者! お後よろしく(>_<)ノシ




 307:名無しのラノベ好き


 結局は人任せかーい(笑)!!




 308:名無しのラノベ好き


 四弐喪怒利(しにもどり)ニコルソン……主にホラーなど“死”というものを作品に盛り込んだ小説を書く傾向にある男性ラノベ作家。

 本人曰く「死んで再び蘇ることにエクスタシーを感じる」と語っており、自身が執筆する作品には必ず死に戻りを経験する描写が盛り込まれている。

 リ〇ロが世間で注目を集めた際、最も過剰に反応した作家だと言われている。JQ文庫所属。累計販売部数十一万部。




 309:名無しのラノベ好き


 ホントに有識者キター(・ω・)!!




 310:名無しのラノベ好き


 ってか、しにもどりって(笑)




 311:名無しのラノベ好き


 次の話に行った方がよさそうだな。これ。




 312:名無しのラノベ好き


 じゃあ、有名どころとは違うが、無名玄人はどうだ?




 313:名無しのラノベ好き


 ああ、最近話題の大型新人か。

 確かに、さっきの死に戻り野郎と比べたら本題に近い作家だな。




 314:名無しのラノベ好き


 無名玄人? どんな内容の小説を書いてるんだ?




 315:名無しのラノベ好き


 王道の異世界ファンタジーもので、話の内容はありきたりなものだが、どこか引き付けられる魅力がある。




 316:名無しのラノベ好き


 続巻を待っている人間がここに……。




 317:名無しのラノベ好き


 右に同じく……。




 318:名無しのラノベ好き


 ノ




 319:名無しのラノベ好き


 ノ




 320:名無しのラノベ好き


 ノ




 321:名無しのラノベ好き


 ノ




 322:名無しのラノベ好き


 ノ




 323:名無しのラノベ好き


 おまいら待ちすぎだろ(笑)




 324:名無しのラノベ好き


 それで、その無名玄人ってやつはどんな奴なんだ?




 325:名無しのラノベ好き


 わからん( ̄д ̄)!!




 326:名無しのラノベ好き


 >>325


 威張んな(笑)




 327:名無しのラノベ好き


 てか、新人過ぎて情報があんまないだろ。




 328:名無しのラノベ好き


 こんな時の有識者だよ!




 329:名無しのラノベ好き


 あくまでも他人頼りなんだよな。

 まあ、俺もだけど……。




 330:名無しのラノベ好き


 てことで、有識者さんよろー(・ω・)ノ




 331:名無しのラノベ好き


 軽いわ!!




 332:名無しのラノベ好き


 無名玄人……突如彗星の如くラノベ業界に現れた新人ラノベ作家。名前の字面から男性だと思われるが、その正体は一切不明。

 現時点での執筆作品は【勇者伝説(ブレイバーズレジェンド)】というタイトルの小説一冊のみで、英雄社から出版。

 英雄社との専属契約ついては、未だ公式な発表がないため、所属についても不明。

 判明しているのは作者名・作品名・作品の販売部数という一般の人間でも知り得ることができるものばかりであり、今後の活動に注目が集まっている。

 20×〇年七月現時点での累計販売部数推定五十万部。今後の重版次第で百万部も射程圏内と噂されている。




 333:名無しのラノベ好き


 ふーむ、改めて見るととんでもない化け物なんじゃ……。




 334:名無しのラノベ好き


 これだけじゃまだわからんさ。




 335:名無しのラノベ好き


 ああ、今後の活動に注視ってとこだな。




――――――――――――――――――――――――






 その後、男性ラノベ作家談義がしばらく続いた。



 そして……。






――――――――――――――――――――――――




 789:名無しのラノベ好き


 【速報】:【あのライトノベルがやべぇ20×〇年上半期】総合ランキング一位帝流聖



【今注目のラノベ作家ランキング】&【今、最も注目しているラノベ作品ランキング】で帝流聖を抑え、無名玄人がダブル一位を達成!!




 790:名無しのラノベ好き


 ファッ!?




 791:名無しのラノベ好き


 えっ、嘘!?




 792:名無しのラノベ好き


 な、なん……だと……。




 793:名無しのラノベ好き


 ば、馬鹿な……。




 794:名無しのラノベ好き


 あり、えない……。




 795:名無しのラノベ好き


 往年の一連ギャグやめい(笑)




――――――――――――――――――――――――






 こうして、無名玄人の名がさらに知れ渡ることとなり、掲示板がお祭り状態となる。

 たった一つの雑誌をきっかけに、事態はあらぬ方向へと進んで行くのであった。

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