第11話 嫁の涙
「なあ、魔女さんさ。あんたの目的は結局何だったんだ?」
「……私はね、童話に出てくる魔法使いに憧れていたの」
「……はい?」
「私はね、素敵だけど境遇に恵まれない女の子を魔法で助けて、素敵な王子様との恋を応援したかったのよ!」
「……うん」
「ところがね、私は王都、その周辺都市を含めて素敵女子を探したけど、そんな推せる女子が見つからなかった……見つからなかったの!」
「うーんと、それで?」
「そこで私は思ったの、幸い素敵な王子様は今存在しているわ、なら、その王子様を保存して、素敵な推せる女子が生まれる迄待とうって。だから私は王族の時を停めたのよ……」
「あー、魔女さんよ……何と言ったらいいか、その、……よく分かる」
「分かってくれるのね、同志!」
「ああ、よーく分かる。そして推せる相手がいなかった無念さもな。でもな、やり方が間違ってるよ。
いないなら、他の国にいくか、自分がなるか、自分で作るか、そうすべきだった。他人に迷惑を掛けちゃ……もう素敵な魔法使いじゃないだろ?」
「そう……そうね。確かにあなたの言う通りだわ」
「それを踏まえてお前と交渉したい。こちらの要求を呑んで貰えれば君の減刑を考慮しよう」
「?何かしら?」
「ネズミから人に変化する魔法は覚えてるか?」
「覚えてないけど習得は可能よ?でもなぜ?」
「それについては当人に説明して貰おう。ヨメナ?」
俺は彼女のゴーレムを作ると、彼女は乗り込んで話し始めた。
「私が私の飼い主に会うために必要なんです。お願いします。私を人にしてください」
「……尊い」
「は?」
「尊い!尊いわ!いい!あなた、とてもいい!いいわ、取引なんて言わず是非私にあなたを人にさせて!ちなみにそのあなたの飼い主って?」
「その、この国の第二王子です」
魔女は鼻血を流しながら倒れた。
「ノエネさん、ありがとうございます。おかげで人に成れそうです」
ヨメナはポロポロ泣きながらお礼を言う。
「取引だからな、気にするな。じゃあ」
「もう田舎に戻るんですか?」
一緒に見送りに来てたカノエが少し名残惜しそうに言った。
「案外貴方との旅は楽しかったですよ。また機会があれば」
「ああ、じゃあ」
そうして俺はまた田舎に戻り、薬草採取の続きに精を出すのだった。
土の魔法使いと推活中魔法使い《戊》 dede @dede2
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます