第8話 ネズミが紛れ込んだ

俺たちはヨメナの案内の元、排水路を抜けて王城に、今度は無事潜入することができた。

「こういうので良いんです、こういうので!行き当たりばったりじゃなく、スマートに!」

「あーあー、すいませんでしたね?……ヨメナ、ありがとな?」

「いえ。では取引の方はお忘れなきよう」

「もちろんだ。ただ、その格好だと目立つからゴーレムは一度土に戻すぞ?」

「わかりました」

俺はゴーレムを土に戻して鞄にしまうと、ヨメナは俺の胸ポケットに入って貰った。

「じゃ、いこうか?」

「どちらにいると思います?」

「占拠してるんだ。きっと玉座の間とかじゃないか?」

「また適当な……こちらです、ついてきてください」


結論から言うと、玉座の間で合っていた。

玉座には魔女ッポイ恰好をした女がふんぞり返っており、その傍らには氷漬けになった人間が数名いた。

(陛下!?)

(落ち着け)

俺は今にも駆け出しそうなカノエの肩を押さえつける。

(確認だ。玉座の女には見覚えがなく、氷漬けの面々が王族ということでいいな?)

(え、ええ。陛下に王妃、第一王子、第三王子に第一王女です)

(あれ?第二王子は?)

(今は幸い留学中で不在にしてます)

(なるほど)

「……どうやらネズミが紛れ込んだようね?」

玉座の魔女が物陰に隠れている俺たちの方を見ながら、そう呟いた。

(ばれてらー)(貴方と一緒なんです、こうなると思ってました)

俺たちは物陰から姿を現した。

「この状況でネズミに喩えるの、どうなのよ?」

「むしろウィットに富んでるとは思わない?」

彼女は玉座から立ち上がると、持っていた杖を握り直し、ニタリと笑った。

「誰にも、私の邪魔はさせないわ?」

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