第7話 嫁と取引

「喋れるようにしてくれてありがとう。とても助かります」

「なーに、こちらの都合だ。それで、協力してくれるって事でいいんだよな?」

「ええ」

それにカノエが割り込む。

「私は信用できません。何故協力してくれるんです?」

「もともと彼女に協力したかった訳じゃないんです。

元々私や他のみんなは王都に住み着いていたネズミでしたが、ある時笛の音が聞こえてきたかと思うと、気が付けば鎧の中に居て刃に囲まれていました」

俺は目線だけでカノエを睨むと、カノエは居心地悪そうに目線を逸らした。

「どうされました?」

「いや?それで?」

「そこからはご存じの通りです。鎧から解放されて意識を取り戻すことができました」

「操っていた人物は分からないか?」

「女性なのは憶えてます。それに魔法らしきものを使ってたと思います。でも、それ以上の事は……」

「いや、いい。十分だ。ありがとう」

「代わりではないですが、私は王都に住んでいたネズミです。この排水路から王城に続く道を知ってます。

道案内をさせてください。ただ……魔法使い様、取引をさせてくださいませんか?」

「うん?取引?どんな?」

「王城まで案内します。代わりに私を人に変化させる事はできませんか?」

「へぇ、なぜか聞いても?」

「私の飼い主が以前言っていました。時間は体重の1/4乗に比例するらしいと。私は私の飼い主に会いたいのですが今は王都に居ません。

このままでは再開する前に、私の寿命が尽きてしまうのです。だから、寿命を延ばすために私は人になりたいのです」

「なるほどなるほど。結論から言おう。俺では無理だ。ただ、手近なところだと操っていた魔法使いなら可能性がある。

ネズミ使いのようだからな、化けさせる魔法も心得てるかもしれない。その説得を手伝う、もしくは別の伝手を探すというのであれば応じよう。どうだ?」

「それで構いません」

「OK。取引成立だ。俺はノエネ、あっちはカノエ。君は?」

「ヨメナです」

「へぇ、随分洒落た名前を付けて貰ったな?」

「ノエネ、どういう事です?」

「ネズミの忌み詞は『嫁』だからな。それに因んで名づけられたのだろう」

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