第6話 二人とも、私のために争わないで
しばらく王都を走り続けたが追手は来ない。どうやら巻けたようだった。俺たちは走る速度を緩めた。
「もう大丈夫そうだな?」
「大丈夫なのは良いですが、次の手は考えています?」
「ノープランだ」
「ダメじゃん」
カノエがだいぶ俺に辛口だ。どうも怒っているらしい。オレ何かしたか?
「まあ、待て。何か思いつく」「その言葉にどれだけ信を置けると?行き当たりばったりじゃないですか」「ちょ待てって、今度こ「チュー」あ、本当に待て?」
俺は足を止めて声の方に顔を向けると、そこには先ほどの白いネズミがいた。
「チュー?」
こちらがそのネズミに気づいたのが分かると、ネズミは建物の影に引っ込んだ。
「あのネズミを追うぞ」
「あ、待て!」
そのネズミを追っていくと、排水路の入り口で待っていた。俺はそのネズミに話しかける。
「……こっから城に入れるのか?」
「チュウ」
「お前、協力してくれんの?」
「チュー!」
「ノエネはネズミの言葉が分かるの?」
「分からん。コイツ、何言ってるんだ?」
「チュッ!?」
「役に立たないな!?」
「まあ、待て?」
俺は地面に手を当てると魔力を込めて、女性型のゴーレムを呼び出した。
「……今度は私じゃないですね?しかも普通の衣服なんですね?」
「彼女を擬人化したイメージで作った」
「そのネズミ、雌なんですか?」
「雌に決まってるだろ?見りゃ分かるだろ、ほら、この体の丸みとか、顔つきとか……」
「いや、さっぱり分からんです」
「まあ、いいや。さ、そこのネズミのお嬢さん、できればこの人形に入ってくれないか?なーに、要領はさっきの鎧と同じだからすぐ慣れると思うよ」
白いネズミは、やや躊躇ないがらも結局はそのゴーレムによじ登ると入ってくれた。
ゴーレムの目が開き、顔を上げる。そして、指先が動くことを確認していた。
「……すごい、鎧より滑ら……えっ!?」
「喋らすことが出来るんですか?」
俺は得意げに答える。
「ふふん、機能付けました!」
「貴方って人形作りに関してだけは変態的に才能を発揮するんですねー?」
「すごいならすごいって言えよ、何だよ変態的って!?」
「えーと、その、お二人とも、私のために争わないで?」
「「それは違う」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます