第4話 ふとした瞬間に視線がぶつかったら逃げられた

「……」

「……チュッ!?」

俺と目が合った白くて赤い目をしたネズミは、鎧から飛び出すと建物の隙間に駆け込んだ。

ネズミが抜けた鎧はやがてガラガラと音を立てて崩れた。

「ノエネ様、あのネズミが鎧を操っていたのですか?」

「……みたいだな」

「追いますか?」

「ネズミ一匹を?無理だわー。それに、ネズミ相手に尋問して情報引き出せるのか?」

「確かにそれもそうですね」

とは言ったものの、あのネズミ、白い毛皮に血が滲んでいて震えていた。

体のすぐ横に刃物がある状態に恐怖を感じていたのだろう。

そして、逃げる時に確かに俺の顔を確認していた。……あれは、確かに知性を持っていた。

まあ、街中から探し出すのが難しい事に変わりないからやはり放置するんだけどな。

「それでどうですか?正体がネズミだったとして、どうにかできますか?」

「ムリだな。一対一ならともかく、集団ならリビングアーマーでもネズミでも鎧着てたら大差ないね」

「じゃ、どうするんですか?」

「結局頭潰さないとどうしようもないでしょ?という訳でお城行くよ」

「お城でしょうか?」

「占拠してるんだからお城だろ。違ったらまた考える。どのみち王族の状況を一度確認したいからな」

「ですが城門は特に守りが堅く、鎧兵が大勢います」

「おいおい。正面から行くわけないだろ?ここにいるのは魔法使いで、しかも土だぜ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る