第3話 ハリネズミと刺抜き地蔵

王都に着いたが至って普通だった。

久しぶりだったが、賑やかな喧騒にたくさんの人に、そしてたくさんの鎧兵。

たくさんの鎧兵だけは違ったが、それ以外は昔通りの王都だった。

「なあ、普段通りに見えるんだけど。王様っているの?」

「いります。今だけです、じきに混乱してくるでしょう。それまでに解決しないと」

あ。あの店前はなかったな。全部終わったら見に行こう。

「……あの、お店物色してるようですが、やる気ありますか?」

俺に戦闘能力がないと知って失望したのだろう、最近カノエの俺に対する対応が砕けてきた。

まあ、畏まってるよりは随分といい。

「あるさ。で、この歩き回ってるのが全部、リビングアーマーらしい鎧兵?」

「はい、国の兵士は、形状が違うのですぐわかります」

「ふーん、……あ。なあ、あれってさ、そのままなの?」

「そのままって……ああ。問題ないでしょう。だってリビングアーマーですよ?」

俺たちが見てるのは一体の鎧兵だった。全身に剣が刺さった状態の。ハリネズミのような。

周囲の都民は誰も気にしていなかった。きっともう日常になってしまってるのだろう。それはそれで異常だと思うが。

そんな鎧がよたよたと、ふらふらしながら、歩いていた。

「……なあ?あの剣、抜いてもいいか?」

「構いませんが、大人しくはいてくれませんよ?それに何の意味があるんです?」

「いい、魔法を使う。意味は……まあ、俺の気分の問題だ」

俺はカバンから土を握って、剣が刺さった鎧兵に投げつける。そして素早く魔力を込めると、鎧の継ぎ目に詰めていった。

足首、膝裏、股関節、手首、腕、脇、腰……と、あくまで主要な可動部に絞って土を隙間に詰めていく。

「鮮やかですね、ノエネ様」

「鎧で助かった。スライムやゴーストだったら、こんなに楽できなかった」

鎧兵は、ギシギシと軋む音は立てるものの、動くことはできなくなった。

俺はゆっくりと近づくと、刺さっている剣を一本ずつ丁寧に抜いていく。

「これ、全部売ったらそこそこ良い値になるよな?」

「騎士団の備品です。売られたら困ります」

カランッ。最後の一本も地面に投げ捨てた。残ったのは穴だらけの甲冑。

「……折角だしバラしてみるか」

俺は鎧の胸部を外す。

「チュ?」

「……」

「……」

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