【物語の欄外】大熱唱・続「お隣のトロルさん」
「ねぇ、なんで俺にばっかり、歌わせようとするのさ?」
「良いから、良いから」
と、湊にマイクを押しつけられた。早速、曲が再生。容赦ない。
「俺も一緒に歌っちゃおうかなぁ」
冬希兄ちゃんにそう言われたら、反論のしようがない。
こう考えてみると、みんな歌が上手いんだよなぁ。いや、冬希兄ちゃん勝とうなんて思わないけどさ。
兄ちゃんは、本当に人に寄り添うのが上手い。さり気なく歌って、いつの間にか、ハモっていて――絶妙なコーラスになっていて。
「さぁ、それでは。空が歌っている間に、みんなと一緒にコメントに返信をしたいと思います!」
姉ちゃん、またとんでもないことを言い出した。
「……なんだって?」
「ほら、空。ちゃんと歌って、もう始まっているよ?」
姉ちゃん、にっこり笑顔。明らかに、冬希兄ちゃんを盗られたと言いた気ですが? いや、むしろこれ、兄ちゃんの優しさだと思うけど?
小さく息をついて、歌い出せば。
――好きだよ、好きだよ、君のこと。好きすぎて。隙だらけなキミのこと、好きすぎて。
「……」
あの皆さん……【君】という歌詞のところで「つ・ば・さ」って、たたみかけるの止めてくれない? 翼も顔真っ赤にして、カスタネットを打たなくて良いから!
「それは、気を取り直して。いただいたコメントに返信をしていきます!」
拍手がわきおこる。いや、俺と冬希兄ちゃんの歌も聞いてよ?
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翼ちゃんが気になる空くん。
自分の気持ちに気付き始めたら、ぜひ自分から動いて欲しいところ。
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思わず、ムセこみそうになった。
「空君、良いところだから、頑張って歌って!」
「下河君、難しい曲だけれど、がんばれー!」
「
バラードにシャウトはないだろう?
「空って、結構、意気地なしだからね」
話は本題に――別に戻さなくて良いんだけれど?
「お姉さん、それはどちらかと言うと、優しいから気を遣って――」
「翼ちゃん、空を甘やかしちゃダメ。優しさと行動しないをイコールにしちゃダメだからね」
「まぁ、もう過ぎ去ったことだけれどさ。空の鈍感力は、尊敬に値するよね」
彩翔、お前は黙って。
「それじゃ、次のコメントです!」
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オーダー品を持ってきた空気読まない臨時バイトの小豆さん。「あれ、そこの二人、ちょっと顔色悪いねえ?部屋の外に……」って連れ出してあげたいです!
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「はい、このコメントを採用しました!」
「……どこまでも他力本願の作者め……」
「空君、他力本願って決して悪い言葉じゃないんだよ? 自分ではどうにもならないことが、もっと上の力で解放される。こえ、もともとは仏教用語でね――」
さすが、編集者担当。言葉の意味に対して、丁寧に拾ってくる。でも、そうじゃない。そうじゃないんだ。
兄ちゃん……今のこの状況、俺たちを誰か救ってくれても良いんじゃって、思うんだよね?
「はい、次のコメントです。空は次の曲ね。歌う曲は、【宮城越え】です!」
「演歌じゃん! しかも不倫の歌だよね、これ?」
「頑張ろう、空君!」
「なんで、冬希兄ちゃんは、そんなにポジティブなの?」
♪♪♪
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空君、見ないふりはもうやめよう!
笑ってる顔がいいと思うなら、自分がそうさせたいって思ってほしいです!
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またしても、思いっきムセこんだ。
タメて。声をタメて。
あぁ~あ~。宮城越えぇ~! って歌い出した直後で、このコメントをチョイスするの酷すぎる。
「あ、でも。その……空君は、いつもちゃんと見てくれていて……。
『お、おぅ。そりゃ、だって。友達だし。何かあったら、すぐ駆けつけるよ……』
「それがね、私は本当に嬉しかったの」
『ん。うん。だって、翼のことだし――』
「あの……マイク持って、そのまま会話するの止めてもらえない?」
だから、湊。冷めた目でこっちを見るなし。
別に当たり前のことしか言ってないから。むしろ、次の曲を入れるのを、本気で勘弁して欲しいんですが?
♪♪♪
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結論:カラオケは少人数で気の合う人と行くのが良い
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「これは、間違いないよね」
「
独り身のことも考えて、カラオケ中イチャつくのは止めろと、彩翔と湊、そして姉ちゃん達に言いた――って、何だよ、彩翔?
「空達も大概、距離感バグっているからね?」
♪♪♪
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へたくそとデュエットとか地獄
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「私自身、歌は得意じゃないから、あれなんですけど。あの時は本当に辛かったの。そういう人に限って、マイクを離さないから」
「翼ちゃん、今は? 決して空は上手とは言いがたいけれど?」
うるせぇ。姉ちゃんの誘導尋問が酷すぎる!
「空君の声は、聞いてて落ち着くから。ずっと聞いていたいって――あ、いや、違う。なんでもない、その、何でもないですから――」
「一生聞いていたいってさぁ」
「姉ちゃん?! そんなこと言ってないだろ?!」
「一生聞きたくないなんて、言ってないもんっ!」
「翼も、そういうトコに反応しなくて良いから?!」
♪♪♪
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隣に座ることだけが独占ではないとは恐れ入りました
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「まぁ、ね。最近、気付いたんだけれど、
「そ、そうなんだ……」
「ちょっと、矢淵さん。本馬さんに何を言ってるのさ?!」
「いや、だってさ。この前、ゲームのフレンド、見せてもらったけど……みんあ、おっぱい、でかいじゃん! しかも、男のフレンドが少なくない?」
「あくまで、ゲームの
「ふぅーん」
翼、目が怖い。本気で、怖いから。
「それに興味ない素振りを見せながら、視線はしっかり追っているよね」
「そう思うなら、着崩さないで――痛い、痛い! 翼も本馬さんも痛い! なんでダブルで抓ってくるの!」
「でも
そう思ってくれるのなら、ボソッと小声で言わないで。俺の名誉のために、はっきりと伝えて欲しいんだけれど?
「まぁ、雪姫のコレクションの方がもっとアダルトだけどね」
「ちょ、ちょっと、冬君?! 違うもん、ちが、そんなこと――」
「別に悪いとは思わないよ? だって創作の資料でしょ?」
冬希兄ちゃんは、姉ちゃんに対して、そういうところが本当に、甘いって思う。やっぱり年齢制限は守るべきだと思うんだ。
「……あ、あのね。創作だけじゃないから。その……冬君に喜んでもらうために、その……ね?」
アウト! 姉ちゃん! もっと、アウトだよ!
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【もし、小豆姐さんがここで直接妨害に出たら】
小豆 「カラオケ店員の嗜みですわ♥」
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「これはぜひ、コメント欄を読んで欲しいよね」
「冬君の言う通りかな。皆さんのコメント欄を含めて、一つの作品になっている気がします。それから、注ぎに紹介するレビューコメントも本当に、嬉しかったんです!」
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「箱庭に、もう一輪の花が咲く」
不器用だが心根がまっすぐで芯の強い空と、自ら嵌めた枷では気持ちが抑えきれなくなっていく翼との距離が、温かい友人達の力もあって徐々に近付いていく様は、まさに王道の恋愛ロマンスと言えるのではないだろうか
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「……別に俺は不器用ではないいと……結構、上手く立ち回っていると思うんだけれどなぁ……」
ボソッと俺が呟けば――。
「不器用」
「不器用」
「不器用」
「不器用」
「不器用です」
「めっちゃ不器用」
「空の辞書に不器用という文字以外はない」
「うるさいよ、湊!」
ウチの幼なじみは酷すぎじゃないだろうか?
「でも、この時はちょっとだけ……距離、近づけたもんね」
あの、翼?
今、この瞬間、心底嬉しそうに笑うの――それ、ちょっとズルいから。目が、逸らせないじゃんか。本当にそういう笑顔、ズルい――。
「はい、ここからは作者の次回予告タイムです。雪姫、どうぞ」
「あ、はい。冬君、ありがとう。次回からは、文化祭編に突入します。火花君達、陽キャチームが企画したのは、アイドル喫茶。アイドルに会える、期間限定喫茶店。裏方になる空と、表舞台の翼ちゃん。二人は、文化祭を満喫できるのでしょうか――」
「そして、虎視眈々と空の童貞を狙う美紀ティーと……」
「ちょっと、里野ちゃんっ?! このタイミングで、そういうナレーション入れるの、酷い! それを言ったら、里野ちゃんがでしょ?!」
「え? そりゃ、もちろん! 文化祭、誰もいない教室で、二人っきりの後夜祭、教室に紅く滴る跡となれば――」
「その方向にプロット変更するね、矢淵さ――」
「バカ姉! そんな事実、ないから! 事実を歪ませるなって!」
「まぁ、教室に赤い血が滲んだのは事実だもんね」
「冬希兄ちゃんも、そういう予告はしなくて良いから!」
「ということで、ラストはタイトルコール行きたいと思います!」
「マジでやるの?」
「マイクに向かって、せーので言うからね?」
冬希兄ちゃん、ノリノリ過ぎませんか?
「フォロワーの小豆お姉さん、音無先輩、あすれいさん、綾森さん、東音さん、ロッチさん、矢口さん、
…
……
………。
「せーのっ!!」
「「「「「「「あの空へ、君の翼で!!」」」」」」
「ありがとうございました! 引き続き、文化祭編をよろしくお願いします。本当にこれが、本日、
※なおライブ感いっぱいですが、あくまでコメント返信と近況ノートによる報告でした。
________________
あの空へ、君の翼で
第20話公開時点:レビュー数 ☆74
(レビューコメント 4件)
フォロワー数:100名
応援コメント:112件
アクセス数:2914PV
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