第39話 カードゲーム大会・4
「はい、休憩が開けました。これからは惜しくも負けてしまったリリも解説に加わってもらいます。というわけでリリ、改めて自己紹介を」
「お疲れ様です。負けてしまったリリです。少しは知識があるので解説をします。よろしくお願いします」
『リリだ』
『リリ、お疲れ!』
『特殊勝利面白かったぞ!』
『オーちゃんとの試合、かなり切迫しててベストバウトだと思った』
『ほぼほぼワンターンで終わることが多いから、長いターンをかけて試合をやってたら面白くもなる』
Bリーグの試合が始まる前に解説席に加わることは自分の枠でそっちに移動すると言っておいたので俺のリスナーはこの本配信に来ているだろう。
ここからは俺とゴートン先輩とドロッセル先輩と一緒に解説をする。とはいえ俺も結構付け焼き刃なところはあるので全部を解説できるかはわからない。
1試合目は霜月さんとケイン先輩だ。同期ということで霜月さんのことを2人の先輩に聞かれる。
「霜月さんと水瀬さんのデッキはリリが作ったんだろ?」
「とはいえ、ベースだけですけどね。微調整はリスナーとやったので最終的には僕の知らないデッキになってますよ」
「絹田君、霜月さんと水瀬さんのデッキ作りを手伝っていたので他の参加者の方々が羨ましがっていましたよ?招き狸を自分の配信に呼べないって」
「いやいや、僕を呼んだからってガチャ運が良くなるとかっていうのはオカルトですよ」
ドロッセル先輩にガチャ運について言われるが、あんなのオカルトでしかない。俺と一緒にいたからってガチャの結果が良くなるなんて偶然だ。たとえその結果が何回か続いていたとしてもきっと偶然だ。
切り抜きのサムネとタイトルだけ見たけど、爆死した人はいなかったはず。それくらいしか情報を集めてないから実際はどうだったかは知らない。
『リリの運はバグってるからな』
『本人はそうでもないんだよ、不思議なことに』
『エリーはちょこちょこデッキを強化してスタンダードなデッキじゃなくなったぞ』
『エースが変わったからな』
『『世界樹の守護者』は年々強化カードが増えるから……』
コメント欄でも霜月さんのデッキの内容がバラされる。まあ、アーカイブを見たり切り抜きを見たりしたらデッキ内容なんてわかっているのでコメント欄でのネタバレはしょうがない。
試合時間にもなったので霜月さんとケイン先輩がテーブルに着いたようだ。観戦で見ていくけど、2人の音声は聞こえない。それに手札は見えないので予想もなかなか難しい。
「霜月さんが始めたのってこの前のパック剥き配信からだろう?水瀬さんもあの時からって言うし」
「そうですが、霜月さんは誕生日にデッキをあげたので少しは紙のカードをやっていますので、初心者の中でも少しは頑張れると思いますよ」
「紙は難しいですよ。その分ゲームは色々と効果が使えるのを示しているから初心者にもオススメです。けど紙は紙でコレクターとしての心が働きますが……」
「わかるわかる。お、試合が始まったな」
「音無さんが先攻のようですね」
先攻がケイン先輩。後攻が霜月さん。『世界樹の守護者』は後攻でもなんとかできるデッキだ。問題はケイン先輩がどんなデッキを使うか次第なんだけど。
コメントは知ってそうだけど、教えてはくれなそうだ。
「お2人は全員分のアーカイブを見たりしたんですか?」
「全員分は見てないな。経験者組は何するかわからないってことで見てない。ユークリムと真崎のはオレとドロッセルがアドバイスしたからデッキは知ってるぞ」
「初見の反応も大事かと思って敢えて見ていません」
「あ、ケイン先輩が召喚をしましたね。『ドラゴン・バイス』です。ドラゴンデッキでしょうか」
「ドラゴンデッキはたくさんあるからなあ。これだけじゃ特定できない」
ドラゴンデッキだと良く入る汎用カードの『ドラゴン・バイス』。効果でフィールドを持ってこられるので入れる人が多い。デッキから持ってきたのは『ドラゴンの住む谷』。これもドラゴンデッキでは必須級のカードだ。
「『ドラゴン・バイス』の効果が通ったってことは霜月さんは手札誘発が無かったようですね。手札誘発はそれなりに入れたのですか?」
「『屋敷めのこ』は3枚入っているはずですよ。減らしてなければ、ですが」
「フィールドの効果で持ってきたのは『クリスタル・エンシェント・ドラゴン』か。エンシェントデッキ?」
「うーん、どうでしょう?エンシェントの関連カードってそれだけじゃあまり強くないイメージがありますが……?」
エンシェントと名の付くカードは数が少なかったはず。アニメではかなり使われたんだけど、紙ではあまり実装されていない。アニメではぶっ壊れ効果とか面倒な効果処理が多かったために実装されていない、みたいなことが多い。
アニメでは使われたカードなのに実際には使われない。全く違う効果で実装されてまるで別物だったり、名前が違うカードで実装されたりなど、結構アニメその通りにデッキを作ろうとしても難しい。それを考えると霜月さんのデッキである『世界樹の守護者』は割とされているカードたちだ。
最近のカードだからというのもあるが、そこまで壊れたカードが多くなかったのもある。しっかりと使ったらちゃんと強いカードも多いわけで。
「宝石竜デッキですね。正直あまりシナジーはないんですが、ドラゴンはサポートカードが多いために2妨害を構えています。トラップ次第ではありますけど」
「モンスター効果無効が2つだけど、マジックとかの妨害が見えないのは厳しいですね。トラップも1枚だけ。盤面は貧弱と言ってもいいわ」
「でもさあ、霜月さんって『世界樹の守護者』デッキだろう?マジックで大量展開するデッキじゃ?」
「そうですねえ……。あ、早速マジックを発動ですが、『屋敷めのこ』もないようです」
「これはマズイんじゃないかなぁ?」
ドロッセル先輩の言うように霜月さんが盤面を揃えていく。『世界樹の守護者ナクス』が準エースで『ナクス・ローム・バルク』が基本的なエースだ。ナクスが強いからそれだけで良いんだけど、ナクスよりも強いエースもいる。
そっちは召喚条件が難しかったので入れなかったんだけど。
「うーん?絹田君、エースとして出てくるのは誰だと思う?」
「『世界樹の守護者』はエースが多いので『ナクス・ローム・バルク』か『フィロ・ローマス』。または『世界樹の守護者グレイム』か『世界樹の破壊者グレイム』、それに『世界樹ルトゥナ・ノア』がそれぞれエースカードとしています。僕はナクス、フィロ、グレイムを主軸にしてデッキを作ったのでエースが変わっていたらわからないです」
「ルトゥナは、出せなくないか?あれかなり召喚条件難しいだろ」
「僕昨日の練習配信でルトゥナとフィロ、グレイムが並んだ盤面を見ましたよ」
「マジ?何そのヤバイリスナー」
「リスナーじゃなくてとあるライバーさんだったんですよねえ」
今回は案件でもあるので他箱のライバーさんの名前を出すわけにはいかない。コメント欄が出すのと俺が出すのは別の話だ。
そんな話をしている間に霜月さんが『ナクス・ローム・バルク』と『世界樹フレスト』が並ぶ。その2体を見て次に出てくるモンスターが何かを察した。
「あーあ。ルトゥナが出ますよ」
「出たねえ。最強カードの1枚。効果の対象にならないし、攻撃力は驚異の5000。除去する方法が難しいんだよね」
「対象を取らずにバウンスする手段もないから戦闘で破壊しないといけなくて、けど攻撃力5000って倒しづらいし。出たら本当に対処が面倒なんだよ」
霜月さんがルトゥナで『クリスタル・エンシェント・ドラゴン』を倒す。トラップも使えなかったんだろう。ルトゥナに効果がなかったのか。
『ルトゥナつえー』
『指定がね、『ナクス・ローム・バルク』と『世界樹フレスト』で他のカードでは代用できないっていう縛りがあるから』
『縛りがあるからこそのはちゃめちゃ効果』
『背景ストーリーがなあ。素材の時点で察するんだけど』
「うん?そういえば『世界樹』シリーズは背景ストーリーが重いって聞くけど、ルトゥナってそんなに重いの?」
「重いですよ?カードを見てわかる通り、ルトゥナってナクスとフレストが合体した姿なんですよ。しかもナクスって二度目に世界を救う際に息子のフィロに任せて眠りに就いたんですね。で、20000年後に地上に出てきたら守るべき世界樹を失っていて。もう一度世界再生の旅に出て、新人類を敵に回して世界樹の再誕を目指すのが第4部、らしいです」
ナクスたちが1部、フィロが2部。ルトゥナと敵対する新人類が3部でルトゥナ目線が4部になるようだ。
新テーマでルトゥナの別の姿が出て、関連カードである『ノアの方舟』がテーマ化された時に話題になったものだ。
髪の毛が長くなり、緑の差し色が入ってオッドアイになっても、ルトゥナはナクスと瓜二つだったのだから。
『ウィザーズはさあ。カードはもちろん背景ストーリーで購買客の心を掴んできやがって』
『イラスト集も買っちゃうんだよなあ』
『金が足らん。趣味は手を出すと際限がない』
ケイン先輩はそのままジリ貧になり、返す手段がなさそうだ。霜月さんが盤面を揃えてジリジリと削っていき、勝利。
『天からの祝福』もなしに初心者の霜月さんが勝っていた。
Bリーグはそのまま試合が進み、結果としてコウスケ先輩が1位、霜月さんが2位。3位にケイン先輩、4位に真崎先輩だった。
「はい。というわけで決勝トーナメントが決まった。準決勝第1試合は吹上と霜月さん。第2試合はコウスケと水瀬さんだな。これから30分休憩の後、決勝トーナメントをしていくぞ。というわけで蓋絵!」
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