第8話 彼女は意外に小悪魔?

 メモに書かれていた水寺さんの連絡先を登録した俺。彼女のそばには頭が良い好口さんがいるし、水寺さんから連絡が来るなんて滅多にないと思っていたのに…。



 登録した日の昼休み。教室の自席で弁当を食べ終えた俺は、のんびりスマホゲームの日課をこなしている最中だ。そんな時に着信が来た。


相手は…、まさかの水寺さんだと!? すぐに用件をチェックしないとな。


『荒波君って、好きな人いる?』


なんだこの内容は? すぐに彼女のほうを見ると、笑顔で小さく手を振ってくれた。


あれ? 好口さんがいないぞ? 水寺さんが彼女の元に、椅子と弁当を持って行くのを観たんだが…。 トイレに行って席を外してるのかな?


何はともあれ、訊かれてる以上答えないと。俺はすぐにこう入力した。


『いない。気になる人ならいたけど』


ここでシスコンを自白する必要はないから、この回答が無難だろう。


返信して間もなく、また来た。これ以上何を訊きたいのか…。


『“いた”なんだ? その人はどういう人なの?』


思い切って『水寺さんの事だよ!』 って伝えるか? …いや、しなくて良いや。何故なら渚一筋にすると決めたからだ。俺から水寺さんの気を引いたら、渚にどう思われるか…。


少し悩んだが、このように回答した。


『小学生の時に可愛い子がいたから、その子が気になったんだ』


俺と水寺さんは高2になって初めて知った関係だ。だからこの内容の真偽を確かめる術はない。これで納得してくれると良いが…。



 俺が返信してから数分経ったが、それに対する返事はない。水寺さんの行動に戸惑いつつも、スマホゲームの日課を再開しようとしたら…。


え? このタイミングでまた彼女から着信? 一体なんだ?


『私の気になる人を訊かないんだ? 訊き返してくると思ったのに…』


それを待っていたから、数分の間があったんだな。で、しびれを切らして自分から連絡してきたと…。


訊いて欲しいのは明らかだが、どう訊くのがベストなんだろう?


『気になったけど、訊いて良いか悩んだんだよ』


水寺さんに気を遣う姿勢を見せれば、嫌われる事はないと思うが…。


そしてすぐに返信が来た。


『そんなの気にしなくて良いのに~。私の気になる人はんだよ』


という事は、現在進行形か。彼女は誰を気にしてるんだ? それを表情で読み取ろうと、再度水寺さんのほうを観たら…。


「お待たせ~」


好口さんが戻ってきた。それに伴い、彼女は携帯をしまう。これは俺に連絡しないという合図だな。


水寺さんが俺に連絡してきた理由は、好口さんが戻るまでの暇つぶしだろう。暇つぶしの相手になったのは別に良いが、よりによってあんな事を訊くとは…。


俺の心は何度も揺さぶられたぞ。水寺さんって、意外に小悪魔なのか? なんて事を思いながら、スマホゲームの日課を再開させる…。

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