第6話 渚の心配事

 渚と一緒に下校中、彼女に水寺さんの変化について追及された俺。何でそんな事を訊いてくるのかサッパリなんだが…。


「渚、何が気になるんだ?」


「あくまで予想なんだけどね」


そういう前置きがいるのか。確信じゃないんだな。


「あたしのが裏目に出たかも」


あの行動というのは、渚が教室まで来て俺と水寺さんに質問した事だ。あれで白黒付けたはずだろ? 何で裏目になるんだよ?


「あれのせいで、水寺さんはお兄ちゃんに興味を持っちゃったんだよ。あたしがお兄ちゃんをキープしたがってるのは伝わったはずだし」


興味ねぇ…。今は大人しく続きを聴こう。


「水寺さんからすれば『妹がキープしたがるお兄ちゃんはどういう人なんだろう? 』って考えるのは自然でしょ?」


「自然なのか?」

一般的に考えて、妹のキープをそこまで気にするか…?


「だと思うよ。昔の事だけど、お兄ちゃん何かのカードゲームのカード持ってたよね?」


「持ってたな。適当な時に全部捨てたっけ」


「もしその中に高く売れるカードがあるとわかったらどうする?」


「そりゃ大切にするよ。他のカードとは価値が違うんだから」


「今まで普通に見ていたカードが、高く売れるとわかった途端に見え方が変わる。つまり、価値はきっかけ1つでだいぶ変わっちゃうんだよ」


説得力ある気がするし、ない気もする。難しいところだが…。


「なるほどな、けど考え過ぎだろ。人の心とカードは別物だ」


「だから最初に言ったの。“予想”だって」


この予想が合っているかどうかを知るには、水寺さんに直接訊くしかない。



 「お兄ちゃん。これからも水寺さんの事をに言ってね」


やけに『正直』を強調してきたな。水寺さんは気になる女子だったし、渚が意識するのは仕方ないか。


「あの時シスコンを辞めるのを撤回したんだから、浮気は絶対許さないよ」


「わかってる。二言はないから」

受け入れてくれただけでも感謝している。


「もし嘘付いたら、って事でお〇ん〇ん君にも痛い目に遭ってもらうから♡」


何をする気なんだ? 考えるのが怖いが気になってしまう。


「今日は正直に言ってくれたお礼をしないとね♡」


周りに人がいないので、渚は俺の腕に胸を押し付けてきた。直前に怖い事を聴いても興奮する俺とは哀れだな…。


そう自虐しながら、帰宅するまで胸の感触を味わうのだった。

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