『足して二で割る僕らの運勢』(869字)
「おはよう
そう言って、家の扉の鍵をしめ終えた
「三位。芙美花の方は?」
「七位だった」
「じゃあ間を取って五位だな」
「そうだね」
それでいつもの確認は終わる。
僕らは毎日、顔を合わせると「今日の双子座の運勢」を教え合うことを日課としていた。
僕と芙美花だと、朝に見ているテレビ番組のチャンネルが違っている。
僕の家ではめざまし時計がモチーフのニュース番組がリビングで流れているが、芙美花の家では白いモコモコしたよく分からないマスコットがモチーフのニュース番組を見ているらしい。
どちらの番組も、朝起きてから家を出る前までの時間に星座占いをしているので、僕らはそれを見て互いに報告しているのだ。
ただ、こうして毎日確認をしているが、僕らは占いの類を信じていない。
なぜなら占う指針となる要素のほとんどが、今隣を歩く芙美花と同じだからだった。
僕、
だから知っている。
星座占いも血液型占いも当てにならないし、その二つを掛け合わせた占いも当てにならない。
性別によってさらに運勢は分かれるのか? そんな話はテレビで聞いていない。
それなのに、見ているテレビのチャンネルによって順位が違うなんて正しくないはずだった。
僕らは知っている。
星座占いは当てにならないこと。
たった十二通りしかない結果に一喜一憂してもどうにもならないこと。
星座占いが本当に当たるなら、双子座の僕らは同じような目に遭ってないといけないのに、実際そんなことは起きていない。
だから星座占いなんて気休めだ。
それなのに。
気休めだと知っているけれど、毎日僕らは確認をとる。
いつか「占いの通りだった」と誰かに言われないために、双子座の情報を共有していた。
「今日は五位の気持ちで過ごそうね」
芙美花の言葉に、僕は小さく頷く。
二つの番組で割った双子座の順位は、過度な期待も失望もしないための予防線で、僕と芙美花の見た数字を足して二で割ったその順位で、僕らは今日を過ごすのだ。
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