第82話『裏の国事ですか』

「無駄だよ」


 キヨはそう言ってサイドテーブルに手紙を投げ置いた。それから何事もなかったようにシチューを食べる。

 みんなちょっとだけ気まずい感じで集中を解いた。ハヤもそれ以上は言わなかった。やっぱり、人の手紙を覗くなんてよくないよな。でも無駄って、


「キヨ、何が書いてあるか知ってるの?」


 キヨはちょっとだけ俺を見て、小さく肩をすくめると「だいたい想像つく」と言った。え! わかってんの!?


「とりあえず、何の情報にもならんってのはハッキリしてる」

 でもローラン姫は第一王位継承者なのに? 国事に関して話してもらってるって言ってたのに。俺がそう言うと、キヨはちょっと考える風に視線を上げた。


「彼女が関わる国事に関してないんだろう、この一連の事は。例の者の捜索は大々的に勇者を集める必要があるから黙ってやれない。だから占いの結果、国を救う勇者を捜すためと彼女に伝えたんだ。

 でもそれはやむを得ずそう言うしかなかっただけで、たぶん大々的にする必要がなかったら彼女は知らされなかったかもしれない」

「何でそう思うの?」

 ハヤはスティックサラダをぽりぽりかじりながら言った。


「彼女は何も知らなかったんだ。勇者の顔も名前も。占いだからしょうがないんだろうと思った。それに占いなら単にこの混沌を解決するのに、とりあえず勇者がいるだけでいいんだろうとも。

 でもまず占いありきじゃなくて例の者を捜すことが元々の狙いなら、例の者が誰であるか彼女は知っていなきゃならない。その会議のお偉いさんは、知っている風だったんだろ?」


 俺は頷いた。

 あの人たちの話し方だとすごい前から例の者を知っていて、でも顔はわからないみたいだった。だからわざわざ王都に招集して、勇者本人に名前を提出させたんだ。顔と名前を一致させるために。


「国のお偉いさんが知ってて、彼女が知らないはずはない。つまり知らされていない」

「お姫様なのに……」

 っていうか第一王位継承者なのに、黙ってていいもんなのかな。それが彼女の関わる国事に関わってないって事?

「裏の国事ですか」

 コウがぼそりとそう言った。何かそう言うと陰謀っぽい……


「じゃあその裏の国事でやらかしてる事について、今日キヨが言ってたヴィト王子の件も関わるのか」


 ハヤはチラッとキヨを見た。

「ハルチカさんに頼んでお城の一番結界の強いところに飛んだ。それは王族の居住区だったけど、ちょっと外れてた。あれはヴィト王子のためのエリアだと思う。人前に出て来ない王子を一番固い結界で護る意味って何かなと」

「チカちゃん来てたの!?」

 突っ込むトコそこ!?


「来てたよ。団長が懸念してる事について言い訳してもらった」

 ハヤはちょっと驚いた風に目をぱちくりしてから、「懸念してるかわかんないじゃーん」と言って唇を尖らせた。キヨはそれを見て笑った。


「まぁ、そっちの俺たちの話は置いといて。ヴィト王子に何らかの問題があって王位継承権を譲れないから、ローラン姫が妖精国に行く事ができないんじゃないかと思ってる。妖精国が想像通り跡継ぎがいないとかで不安定になってるんだとしたら、ローラン姫が妖精国へ行き、ヴィト王子が王位を継承すれば丸く収まるはずなんだ」

「街の噂だと、王家がローラン姫を渡したくないみたいだったじゃん」

 そうそう、給仕の話でも不安定で危ないからこそ姫を渡したくないみたいだった。


「うん、でもあのお姫様、妖精国に行きたくなさそうに見えたか?」


 俺たちは顔を見合わせた。それから俺とシマとレツは同時に首を振った。

「全然、むしろめちゃめちゃ行きたそうだったよ」

「妖精王の事、めっちゃ褒めてたもんな」

「じゃあ、行きたいけど行かせてもらえない辛さに苛まれてるように見えたか?」

 俺たちは再度顔を見合わせて、同時に首を振った。あれ?


「変だろ。街の噂ではそうなってるけど、お姫様的にはそんな事にはなってない。むしろ行けるもんなら行きたいっぽいし、誰に止められてるって感じもない。

 いや、それ以前に彼女の行きたいってのは、『ちょっと妖精国に行って妖精王に会いたい』って感じだ。一国のお姫様だからちょっとってレベルで行けないのはあるだろうけど、国の存亡を賭けて妖精の国を継ぐなんて想像もしてない感じだった。だいたい国事について話してもらっててアレだぞ?」


 じゃ、じゃあ、お姫様が妖精の国を継げば丸く収まるようなこの状況を、お姫様は全く関知してないって事?

 そしたらどこから妖精王がお姫様を欲しがってるって噂が出てきたんだ? しかもそれを国が渋ってるとか?


「はーい、その辺の事、お話しまーす」


 シマは空になったシチューの皿をサイドテーブルに置いた。

「俺たちはキヨが再度城に侵入したあと、宿に戻りつつ適当な酒場とかで噂集めしてたんだ。まぁ、みんな夜までに戻ると思ってたからな。そん時に聞いた話」

「俺たちが入った店に、偶然エルフの人がいたんだよ」

 シマはレツに言ってボトルを渡してもらうと一口飲んだ。


「そいつの話では、以前ローラン姫は妖精国に来た事があるんだと。もう何年も前になるんだそうだが、その時から姫は実はエルフ族なんじゃないかって噂がたってたんだそうだ」

「エルフ?!」


 コウが俺を見て「そうなのか?」と聞いた。

 そう言えばローラン姫って、エルフ族じゃないかってくらいの透き通った金髪だった。でもそれだけで?


「金髪と、美しさもな。耳がどんな形かは知らんが。みんなに愛される可愛いお姫様だ、妖精が実は自分とこの種族じゃないかって思っちゃうほどなんだろうよ」

 確かにローラン姫って召し使いにもお礼言うような、すごい愛されてる感じのお姫様だったな。俺はニコニコ笑っているお姫様を思い出していた。


「そんで、妖精国の人たちはみんなローラン姫が好きになっちゃったらしいんだよ。だからお姫様が妖精国に来ればいいのにって思ってるんだって話してたんだ」


 ……え? 待って、それじゃそれが巡り巡って……?

「その人はたぶん、悪気はなかったんだと思うよ。エルフもみんなローラン姫様が大好きですーってことなんだから。でも妖精国のみんな王様もお姫様が来ればいいのに、いや来て欲しいって思ってるって断言してたら」

「酒の勢いでも、誤解するヤツは出てくるわな」


 えええええ、そしたら、妖精王家は別にローラン姫を必要としていないかもしれないの?? それ自体が全くの噂で、じゃあ姫にも妖精王にも、不安定を解消するために跡継ぎとして妖精王家に入るって選択肢は全く無いって事?


「噂ってやっぱその程度って事か」

 コウは小さく言ってボトルを煽った。キヨは小さく笑って「いや、そうでもねーよ」と言った。

 そりゃ噂による情報集めてきたのはキヨだし、そこ譲りたくないのはわかるけど、でもコレは明らかにハズレっぽいけどなぁ。


「妖精王が欲しがってないのも、それに相対する人間王家が渋ってないのも事実だとしても、妖精王家の不安定な状況をクリアするためにローラン姫が必要かもしれなくて、それをするためには人間王家の継承者を何とかしなきゃならないって大筋は変わらない。

 妖精王が欲しがってるって噂があったからこそ出来た仮説だけど、内情知らずに人づてに渡るだけでそこまで仮説を作り上げた噂のがすごいって」

「その噂製造元の仮説によると、他に手だてがあったんだったよね」

 ハヤが言ってコウに渡されたボトルを煽る。キヨはチラリとそれを見た。


「ああ、それが『例の者』だろ」


 もしかして、あの給仕が言ってたヤツ? 妖精国からの要請を受けても大丈夫そうだってのは、外に王家の人間が……王家の人間?


「噂のベースが世継ぎ問題だったからそうなったんだろうな。どうやら国は大事な人間を捜しているらしい、国にとって重要な人物、世継ぎ問題が解決するような、王家の人間が外に、みたいな」


 なんという連想ゲーム。

「結局そしたら、追わなきゃならないもんって変わってないのか? ヴィト王子の謎と妖精国の不安定要素」

 コウはそう言って綺麗に空になった皿をサイドテーブルに置いた。

 キヨがついでに置いてもらおうと渡した皿には、シチューも肉も半分位残っててコウに睨まれていた。あ、俺も話に夢中であんまり食べてなかった。慌てて肉を頬張る。


「それだったら、ちょっと面白い話聞いたんだよね」

 ハヤはそう言ってボトルを煽るとコウに渡した。

「何?」

 コウは渡されたボトルを煽る。ハヤはちょっとだけみんなを見回した。


「ヴィト王子って、あの城にいないかも」

「何だって!」


 え、そしたらキヨの仮説も崩れちゃう? キヨのはあの城で一番結界の護りが強い場所が、王族の居住区の中でもヴィト王子の部屋と思えるからだったのに。

「なるほどね」

 でも当のキヨは、にやりと笑ってボトルを煽っていた。

 え、なんでそこ納得してんの。仮説崩れるんじゃないの。


「城内で聞き込みしてる時に偶然聞いたんだけどね、王族は特別な客がいれば大広間で食事するけど普段は居住区で食事すんだって。その時はもちろん居住区の食堂まで運ぶんだけど、食事中は王族と直属の家臣のみで食事するんだって」


 ……別にそれが珍しい事でもないような。給仕もなしってのが珍しいのかな。


「絶対に、食事の時ですら王子の姿は誰も見れないってこと?」


 レツの言葉にハヤは頷いた。

「食事のあと、王族が全員退席してから皿を下げるんだって。それだけなら別に珍しくないけど、食事中の給仕も家臣がするとかで。信用されてないのかなって新入りが言ってた」

 ちょっと徹底してるよねと、ハヤは言ってコウから戻ったボトルに口を付けた。


 つまり、誰も王子を見てないどころか、本当に王子がそこで食事してるかすらわからないのか。王族と、その家臣以外は。

 それにローラン姫ってお茶を出す召し使いにもお礼を言うような人なんだ、そういうのって彼女だけのキャラって気はしない。きっとそういう教育を受けていたからこそって気がする。だとしたらその王家の人々が、黙って退席したあとに片付けさせるのって何だか不自然だ。


「いないのか……その方が納得がいくな」

 キヨはボンヤリとそう言ってボトルを煽る。

 何かわかってんだったら話してよ。俺がそう言うとキヨはちょっと眉を上げた。

「ヴィトに何かあるだろうってのは、結界もそうだけどお姫様が語ってくれたようなもんだろ」

「お姫様が何か言ってた?」

 レツはそう言ってシマと俺を見た。いや……そんな話全然しなかったと思うけど。


 そしたらシマが「あ」と言って指を鳴らした。

「お前、それ聞きたくて言ったのか」

「正解」

 キヨはにこにこ笑ってシマを指さす。全然わかんねんだけど。

「キヨがわざわざ結界の話持ち出して、王族四人で住んでるんだよねって言っただろ」

 ああ、そう言えば、家具か何かの事かと思って……そう言えばあの時、お姫様がちょっと表情を硬くしたっけ。それって、家族の四人で暮らしてるんですかって聞いた後だったか? やっぱキヨ見てたんだ。


「何か隠してることがバレバレだったもんな。あんなすぐ顔に出るお姫様に裏の国事は話せないだろうな」

 それもお姫様の魅力の一つなんだろうけどね。

 でもヴィトがいないんだったら、そんなに結界強くして守る必要ないんじゃないか?


「逆だよ。いないからこそ守らないと、いないことがバレるだろ」

「あ……」


 ヴィト王子は人前に出なくなったけど、ヴィト王子が亡くなったとは聞いてない。生きているんだけど、でもお城にはいない。そんな事が知れ渡ったら、国中大騒ぎになりそうだ。

 だから隠してるんだ、城の人にも知られないように徹底して、結界も敷いて。


「でも、それって結局どういう事になんの? 王子様がお城にいなくて、それをバレないように結界まで敷いて隠してるって」

 レツが不安そうに俺たちを見た。キヨがボトルに口を付けようとして、ふと手を止めた。


「団長って、この王都全体でどこの結界が一番強いか調べられる?」

「王都全体!? 死ねって言ってる!?」


 キヨはそれを聞いて「あはは」と笑った。笑い事じゃない気がするけど。

 でもキヨは「ハルチカさんに頼めばよかった」とか言っていた。ハルさんなら出来るのか……まぁ、青魔術師レベルなんじゃ出来るのかもしれないな。


「何となく、キヨに逆らえない気がしてきたなー」

 シマがそう言ってごろんと仰向けに寝転がった。え、何で?


「結局何も見えてこないだろ。ヴィトが生きていようが隠れていようが、国の継承者問題が結界の不安定の元だとしたら、その辺のクリアが必要だ。でもここで何話してたって、ホントにそこが不安定の元かはわかんねー」

「結局、妖精国に行かなきゃならんと」

 コウが言葉を継いで締めると、シマは「あー」と嘆くような声を上げた。


「でも国を救う勇者の『例の者』が現れたんだったら、クリアは必要ないんじゃない?」


 レツがそう言ってみんなを見回した。そう言えば今頃その人はお城にいるかもしれないんだった。

 そしたら、信書を届けるために妖精国に行かなきゃならないかもしれないけど、俺たちがクリアする必要はない、のかな?


「国の救出は例の者に任せるけど、このままわけわかんねーのは嫌だな」


 キヨがサラッとそう言うと、ハヤが面白そうに苦笑した。

 ああ……たぶんね、そういうと思ったけどね……


 でも俺たちがクリアすべきなのは勇者が受けたお告げだ。レツが受けたお告げが一体何なのかわからないけど、本来俺たちはお告げをクリアするために動かなきゃならない。

 それなのに、こんな風に違う事にかかずらってていいんだろうか。


 でも誰もその事は言わなかった。きっと、たぶんみんなそう考えているんだろうけど、誰も言わなかった。レツが自分から言い出すまでみんな待っている。

 でもそれって、本当に待ってていいのかな。


 俺が勇者だったらどうするんだろう。

 俺がレツの立場だったら、難しくてどうしようもないお告げを、みんなに簡単に投げてしまえるんだろうか。みんなを信用出来て、お告げクリアにまい進してくれるのがわかってて甘えてしまえるんだろうか。


「で、妖精国に行くとして、そんでどうすんだ?」

 シマはまた腹筋だけで起きあがった。いいなぁ、あれ。キヨはちょっと肩をすくめた。

「どうもしないさ、お姫様の手紙を届けて、ちょっと話を聞くだけだよ」

 そのちょっと聞くだけが色々問題なクセに……でも今回はお姫様の手紙もあるし、お城に忍び込んだりしなくていいんだよね。


「妖精の王様に話聞ければ何かわかるだろ。じゃ、明日は素直に妖精国に向けて出発ですか」

「妖精国ってどの辺にあるの?」

 レツが言うと、キヨが胸元から紙を取り出した。


 あ、もしかしてもう調べてあんの? っていうかそんなヒマなかったじゃん。図書室で既に調べてたんだとしたら、あの時点で行く気だったってことですか……


「ここから南に下るとラスプーテモンて街がある。そこから西に広がる森林地帯が妖精の王族の暮らす妖精国らしい」

 ラスプーテモン、って何かどっかで聞いたような。

「国の名前ってないの?」

 コウの言葉にキヨは肩をすくめた。

「あるにはあるけど、古いエルフの言葉だとかで人間には発音出来ないんだと」

 名前がなくても混乱しないのかな、一つの国内に別の国家があるのに。


「エルフにとっては人間の国とかどうでもいいらしい。とりあえずツェルダカルテってエリア内にあるって程度で、じゃあエルフたちが国境を気にしてるかっつーと、そんな事はないからな」

「魔法が人より全然使えちゃうんだから、人間の手助け要らないもんねぇ」


 そうか、魔法で何でも出来ちゃうんだったら、国とかみたいにがっちりした組織を作らなくても何とかなっちゃうんだ。

 考えてみれば俺の暮らしてた集落だって、貧乏なままで暮らしていく事はできる。5レクスの結界がなかったら国に税金だって払う気にならないだろう。きっとエルフ族の王家って人間のとは全然意味合いが違うんだろうな。


 そう言えば5レクスって、冒険者にとっては侵すことのできない境界ではあるけど、印を持たない商人たちには関係ないんだよな。

 ただ、5レクスを越えて旅の出来る商人なんていないし、彼らの護衛をする冒険者たちは5レクスを越えられないから自然と結界が境みたくなってはいるんだけど。あれ……


 ……もしかして5レクスの結界って、俺たちを閉じこめてる……のか?


 俺は自分の印を見た。これがなかったらレベルを稼ぐ事は出来ない。

 ギルドに登録したらレベルに応じて給金が決まる。だからみんなレベルを稼ぐ。


 でもコレがなかったら、5レクスの境界に煩わされることなく冒険が出来る。

 俺は何の訓練も受けていないし冒険職業にも就いてなかった。あの時、勇者見習いにならずにみんなに着いていく事が出来たら、5レクス越えをしながら技術を磨いて、でも自由に5レクスを越えられる人間になれたんじゃないだろうか。


 印がなければギルドに登録出来ない。でもギルドに登録しない冒険者なら……ただ冒険を求めるだけの冒険者なら……


「どうかしたか?」

 コウが俺に声をかけた。俺は印を見たままで応えた。

「見習いの印って、いつ消えるんだろう……」

「そりゃお前がパーティー抜ける時だろ」


 え! そんな簡単に消えるのか? 俺は顔を上げてコウを見た。

 コウはチラッとキヨを伺う。


「見習い終了ってのは、たぶん俺たちや勇者が決めるもんじゃねーと思うぞ。見習い期間に何するべきかなんて聞いてねぇし。だとしたら、お前が辞めたくなった時だろ」


 コウはそう言ってキヨに渡されたボトルに口を付けた。


 見習い期間を、俺が決められる……? 俺は再度印を見た。

 ……そんな事考えたこともなかった。きっとこんな印だから、また教会へ行ってお願いして、その時期だったら消えるけどまだ見習いでなきゃダメだったら消えないとかそういう感じだと思ったのに。


「辞めたいのか」


 俺はハッとして顔を上げた。キヨは真っ直ぐ俺を見ていた。

「キヨリン、そんな直球で聞いたら言いたいことも言えなくなるでしょ」

 俺はため息混じりのハヤの言葉に思いっきり首を振った。違う!

「違うってば! そういう意味じゃなくて、そうじゃなくて……」


 そうじゃなくて、印が消えた時に新しくレベル用の印が現れるんじゃないんだったら、5レクスを自由に越えられる冒険者になれるんじゃないかと……

 でもみんなきちんと印を受けて冒険の職業に就いてる。それが当たり前だからだ。そんなみんなに、そんな事言えるだろうか。


「大体なんでイキナリそんな話になってんの」

「えー、もっと一緒に旅しようよー」

「卒業したい気持ちはわかるけど、もうちょっとまともに戦えるようになってからにしろ」

「まぁ、がんばってるのはわかってるけど、訓練ナシから始めたんだしなー」

 俺はみんなに言われて何度も頷いた。うん、全然このパーティーを離れたいってわけじゃないから。


「そしたら明日は妖精国に出発だし、そろそろ寝るかー」

 シマがそう言って俺たちはめいめい立ち上がった。ハヤたちは風呂へ行こうと支度する。


 キヨが黙って俺を見ていて、何となく考えてる事がバレてる気がした。

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