第74話『それじゃ、やっとこっちに呼ばれたのね』
「……お前は帰るか?」
「! なんでさ! 俺が見つけたんじゃん!」
俺が声を上げると、コウが俺の口をふさいで「静かに」と言った。
そりゃもともと俺はシマとレツと待機組だったけど、ここまで来ちゃったんだから俺だって一緒に忍び込んでもいいと思うんだけど!
「まぁ、この入り口見つけた功労者として、連れてってあげれば?」
ハヤがそう言うと、キヨは面倒くさそうにため息をついて「しょうがねぇなあ」と言った。
やった! 絶対足手まといにならないようにしないと。
大きな岩の陰に隠れるように隙間があって、そこをすり抜けて奥へ入ると洞窟になっている。川の対岸から見ると、たぶんこの岩の所為で洞窟があるようには見えないのだろう。対岸は遠く、たぶん防御の意味もあってか、立ち並ぶ建物の手前に壁がそびえていた。
洞窟の入り口には、古びた鉄製の格子戸があった。
俺が見たのは岩に隠れたすき間から見えた鉄格子だ。錆びているところを見ると、あまり最近は使われていないようだ。だいたいもう何十年も戦争なんかないんだし、こういう抜け道だって長く使われていないのかもしれない。
キヨは格子に手をかけて少し揺すった。重い金属の音がして明らかに施錠されている。キヨはそれから錠前部分に手を添えた。
「どうすんの」
古そうだし、ただぶっ壊すことならできそうだけど。
「中の機構が動けばいいんだよな……」
キヨはそう呟いて鍵穴に手を載せると目を閉じて集中した。何だかぎりぎりと重く擦るような音がしたと思ったら、唐突にがしゃんと音がして格子戸が開いた。俺もハヤもコウも目を丸くした。
「……どうやったの」
「風の魔法の応用。錠前の中で発生させて無理やり中の機構を動かす感じ」
その無理やりが利くのが怖い。でもぶっ壊してしまったら元に戻せないか。
俺たちは格子戸を抜けて中へと入った。これで不法侵入者の仲間入りだ。
俺たちはコウ、ハヤ、俺、キヨの順に並び、ハヤが出した光の魔法の灯りで身近なところだけを照らして進んだ。岩壁だったのは最初だけで、すぐに石を積んだ地下道になった。
しばらく真っ直ぐ進んでいたが、途中から階段になって上へと向かう。壁のところどころに明かりを置く台があったけど、載っているランプは埃と砂まみれで油は残っておらず、長く使われていない感じだった。
洞窟はいちだんと狭く人一人がやっと通れる幅しかなくなっていたが、それでも前方からは何の物音も聞こえなかった。
しばらく行くと、別の地下道とぶつかった。T字になっていて、コウが左右を窺う。
「どっち?」
俺たちは最後尾のキヨを振り返った。キヨはちょっと首を傾げてから、何かを弾いた。壁に当たってT字の地下道に落ちたのは、丸っこい石だった。右から左に転がっていく。
「賭けるなら右、かな」
コウはそれを聞いて頷いた。
もしかして、少しでも傾斜が上ってる方って意味? っつかいつの間にそんな石拾ってたんだろ。俺たちはコウにならって気配を窺いながら右へと進み、階段があれば上っていった。
すると唐突に通路が木の扉に遮られた。コウが扉の向こうの気配を気にしながら用心して扉を開けると、全く同じ形の扉のたくさんある廊下に出た。
いや、まだ地下道のうちなんだけど、明らかにさっきまでとは違って地下道の両側に扉が並んでいるのだ。しかもほのかな明かりがある。よく見てみたら、壁の一部にヒカリゴケを使った明かりが設置してあった。ハヤは魔法の光を消した。
「そろそろ近いっぽいね」
「貯蔵庫……かな」
キヨはそっと扉の中を覗いて呟いた。扉の向こうには樽やコンテナが積み上げられている。貯蔵庫のうちの一つが秘密の抜け道に繋がってるなんて。
なんか、地下牢とかそういうとこにぶち当たると思ってたのに。
「地下牢から外に逃げられたら困るだろうが」
キヨはそう言って俺の頭を軽くはたいた。あ、そっか。
貯蔵庫の廊下からは枝分かれした道が増えたのでその度にどっちに行くか悩んだけど、キヨが足元の石の並びが続いている方へと言うので、俺たちはひたすら足元を見て道を選んで行った。
するとコウが唐突に背後のハヤを押しとどめた。俺たちは左右を見回して隠れる所を探した。キヨが小さな音を立てて扉を開ける。俺たちは全員音もなくその部屋に隠れた。
廊下に現れたのは、明らかに城に詰めている使用人って感じの女性だった。地味な服装で大きなかごを持っている。もしかして、貯蔵庫の食糧取りに来たのかな。
女性が通り過ぎてしばらく経った後、コウはそっと扉を開けて廊下に顔を出した。もう廊下に女性の姿はない。
「こっから先、いつ行き会ってもおかしくないね」
小声で囁いたハヤにキヨも頷いた。
「こういうとこじゃなくて、城内に入っちゃえばまだいくらでも誤魔化しが利くんだけど」
「少なくとも、どっちに行くかはわかった気がする」
コウはそう言って少し鼻をひくつかせた。俺も真似して匂いを嗅ぐと、ちょっと香ばしい感じのスパイスの香りがした。さっきの女性?
「出るのは厨房かもな」
キヨがそう言って頷くと、コウは音もなく廊下に出た。俺たちもコウに続く。この地下道で明らかにちぐはぐな四人まとめて見つからないように、俺たちは足早に、それでも前方からの気配を慎重に見極めながら進んだ。
階段を上った先に木の扉が現れた。
コウはそっと向こう側の気配を伺い、それから指先だけで俺を呼んだ。何?
俺はハヤの横をすり抜けてコウの隣に立った。するとコウは唐突に扉を開け、俺を押し出した。えええ! 何すんだよ!
でも振り向いた瞬間、コウは扉を閉めてしまった。ちょっと!
「ん、おいお前、何サボってんだ」
声に振り向くと、割腹のいい男性がこっちへ向かってくるところだった。
「え! あ……」
「あーじゃないだろ。こんなところで何してる」
「えと、あの」
俺は言葉を探して周りを見回した。
そこは城の中にしてはちょっとくすんだ感じの石造りの廊下で、忙しそうな人たちが廊下の向こうを歩いているのが見える。やっぱここ、使用人が使う廊下なんだ。
「貯蔵庫にスパイス取りに行けって言われて……でも、種類忘れちゃったんで、戻ってきたんです……」
俺は言いながら、だんだん自分の言い訳に自信がなくなって小声になった。
男性はうんざりしたような顔でため息をついたが、「早く行け」と片腕を振って俺を促すと、そのまま廊下の向こうへ歩いていった。
俺は彼と反対方向へ歩き出しながら、あの木の扉をノックした。背中を向けたままチラチラ気にしていると、間があって三人が出てきた。俺は急いで彼らの影に加わる。
「ひどいじゃないか!!」
どうせ俺なら厨房の使用人にいても不思議がないからだろうけど!
俺は小声でコウに言ったが、彼は唇の前に人差し指を立てて俺を引っ張って俺の向かっていた方向へ歩き出した。え、どこ行くの?
俺が背後を気にすると、そこへ地下道で俺たちの前を通り過ぎた女性が木の扉を抜けて出てきた。うわ、ギリギリだったんだ。
「すみません」
まるで偶然そこで立ち話中だったみたいにいたキヨとハヤは、女性が通り過ぎる前に声をかけた。
「香草が必要なんだけど、こういうのって地下にあるかな?」
ハヤがにっこり笑って何かメモのような物を見せると、女性はちょっとだけ驚いた顔をしつつ彼の全身を見、それから頷いた。服装で魔術師と認識したのかもしれない。
「ええ、それなら地下にあるわ。でもちょっと探すのに手間よ。私が行ければいいんだけど」
「いや、あるのがわかればいいんだ、また使う時にお願いするかもしれないけど。あなたみたいに貯蔵庫を把握してる方がいると助かるよ。ありがとう」
ハヤが微笑んでそう言うと、女性はちょっとまんざらでもない顔でにっこり笑い、頭を下げて俺たちの脇も通り過ぎた。
ハヤの言葉に満足そうにしていた彼女は、俺たちをチラッと見たけど思ったほど怪訝な顔はしなかった。さすが、プロのお仕事。
「さて」
キヨは小さく言って、頭で俺とは逆の方向へ促した。
俺とコウも二人に合流してさっき男性が歩いていった方へ向かう。っつか、あの人に会ったら、俺一巻の終わりじゃん……俺は思わずちょっと下を見ながら歩いた。
キヨとハヤは、もう何のためらいもなくただ足早に歩いていた。そりゃ、誰に会っても不審がられないためには、ここの人って顔で堂々としてる方がいいんだろうけど。っていうかどこへ向かっているんだ?
「バラバラに行くか? 俺は図書室へ向かう」
「図書室で何かわかる?」
ハヤに言われるとキヨは肩をすくめた。それ以前に、何つってお城の図書室に入るんだろ……
「そしたら僕はどこで話を聞こうかな……」
っていうか、聞き込みになっちゃったら、俺とコウは戦力外だと思うんだけど。
俺はそっとコウを伺った。コウも俺を見ていた。うん、俺たちどっちかに着いていくしかないよね。
聞き込み出来る二人は狭い階段を上って突き当たりの扉を開け、堂々と廊下に出た。
明るい光が差し込んでいて、むき出しの石の壁じゃなく、漆喰を塗った壁にタペストリーの飾られた廊下だ。アーチ型の天井からは凝った形の明かりが下がっていて、赤い絨毯が敷かれている。
超場違いだ。俺は使用人用の階段から出ただけで不安になった。
「どこで落ち合う?」
「この人数でまとまってんのは良くないね。いっそ宿に帰れればそれでいいと思うけど、とりあえず昼までに逃げずに済むなら大広間?」
ハヤがそう言うと、キヨは無言で頷いて彼の肩を叩いて廊下の向こうへ歩き出した。えええ、ちょっと! 俺たちどうすんの!
「あ、困ったね。ここ二人セットじゃん」
俺とコウは一緒になって何度も頷いた。
「じゃ、危なくなったら隠れるにしよっか」
ハヤはにこにこ笑ってそう言った。
いや……それものすごく綱渡り的じゃないですか。俺、やっぱ帰った方がよかったのかも……ハヤは俺たちを促してキヨとは逆方向に歩き出した。
誰かに会って話を聞けなきゃ意味ないんだけど、誰にも会いませんようにと俺は祈っていた。コウはただ着いていくだけでも隙無く辺りをうかがっている。
廊下の角を曲がると唐突に人が増えた。忙しく立ち働いている感じ。綺麗な格好をしているので役人って感じだ。全ての機関が外の庁舎とかに出てるわけじゃないんだな。国の中枢っつったら、やっぱりお城で働いてる感じがするし。
ハヤについて歩きながら窓の外を見ると、塔の林立する内郭が見えた。
つまり俺たちがいるのは外郭なんだな。高さ的には今俺たちがいるのが地上階っぽい。
あんだけ階段上ったのに断崖に建ってるからホントの地上階ってどの高さかわからないな。城っつっても、街が広がってるからもう砦っぽい感じはないし、城壁に隣接した建物が今は役所的なものになってるのかもしれない。
ハヤについて歩く俺たちは、何だか仕事場見学に来たみたいだった。何となく相手の顔を見ないようにして歩く。
「もしかして……ハヤ?」
唐突に背後から声をかけられて、俺たちは三人とも緊張した。でもハヤは一瞬で緊張した顔を解いて、普段通りの顔で振り返った。
「やだ、ホントに? 信じられない!」
振り返った先にいた女性は、赤毛のちょっと地味な眼鏡をかけた真面目そうな感じの人だった。俺とコウはハヤとは他人のように、もう少しだけ歩いてから立ち止まった。
「あれ……シェルヴェイ?」
「あら嬉しい、覚えててくれたのね。学校出て以来だから忘れちゃってるかと思ったのに」
もしかして、シマたちと同じく孤児院からの人なのかな……だとしたら、国家戦略でホントに国の中枢にいるって事なんだ。
「シェルヴェイこそ、よく覚えてたね。僕なんかドロップアウト組じゃん」
「何言ってるのよ、あんなに目立ってた人が。全然変わらないわ、むしろあの頃より大人になった分ずっとイケメンになってる」
シェルヴェイは何のてらいもなくそう言った。
そんな事言っても気を引くつもりが無さそうなところが、何だかすごい頭が良くて真面目って感じがする。
「それじゃ、やっとこっちに呼ばれたのね。あんな情報ばっか集めてる割りに、いつ本格的に呼びつけるつもりなんだろって思ってたのよ」
何でもない事のように言ったけど、俺もコウも眉をひそめた。情報を集めてた? それって、ハヤの?
「あーいや、どうしようかなって思ってて、まだ決めてないよ」
ハヤはまるで知っていたようにそう答えた。知ってたのか? でもたぶん、知らないまま話を聞くための返答だろう。
「あら、そうなの? でも卒業以後、ずっとだったみたいだし」
「そんなに? もうちょっと名前が知れてからだと思ってた」
するとシェルヴェイは少し笑った。
「まぁ、当時からあなたたちって才能あったんだもの。手放したくない人材だったでしょうから、出来ればすぐにでもって思ってたんじゃないかしら」
……あなたたち? それって、キヨやシマも含まれるって意味?
「でもそんなリアルタイムの情報、いちいち集めるのって大変じゃん。しかも卒業からじゃ、何年? あ、ギルドの情報か」
ハヤはそう言って頭をかいた。シェルヴェイは首を振って、ちょっとハヤに近づくと声をひそめた。
「そういう情報じゃないみたい。私も一時的にその辺の情報見る事があっただけで、それでこっそり知っちゃっただけなんだけどね。たぶん私的な探偵? 情報屋とかが集めてたっぽかったな。ギルド登録のレベル情報とかじゃなくて、その時の仕事状況とかだったし」
それからシェルヴェイは小さく笑って「モグリとかやってるんだって?」と言ってハヤをつついた。ハヤもちょっと笑って「儲かりますから」と答えた。
「っていうか、僕ってそこまでファンが居るの? っつか僕だけじゃないか」
そう言うとシェルヴェイはくすりと笑った。
「うん、君たち。ヨシ・キヨくんの情報は少なかったけど」
「あれ、そうなの?」
「何でかな。情報屋が手心加えたのかしら」
「それ手心の用法間違ってるよ」
ハヤはそう言って笑った。シェルヴェイも面白そうに笑う。
「でも、ハヤがこれからもこっちで勤めるんだったら、また色々話せるわね。このタイミングで現れるってのも、何だかすごい気がするけど」
それってもしかして、結界とかの事なんだろうか。俺とコウはボンヤリ立っていても不自然にならないように、何となく立ち話している人を装っていた。俺はどっちかっていうと、指示を聞いてる使用人だったけど。
「あー、確かに何か巻き込まれそうな感じ。っつかそれってどうなの、何とかなりそう?」
シェルヴェイはちょっとだけ周りを気にした。だから俺もコウも視線を外して、不自然にならないように気にしながら違う方を見ていた。
「こっちとしてはどうしようもないかな。防御に兵を組織し直す必要があって。だから余計にシマくんなんかは必要なんだと思う」
防御って、不安定になってる南の結界付近の事なんだろうか。って言うかシマが? 兵を組織し直すのに何でシマが必要なんだろう。でもハヤは小さく「ふーん」と言っただけで、何も言わなかった。
「やだ、私ったら長々と。そしたらまたね」
「ああ、そうだ。僕まだいろいろ考え中だから、僕が来てるって事はまだ他の人には言わないで」
シェルヴェイはわかったようにちょっと笑うと、ハヤの肩をポンと叩いてそのまま廊下を歩いていった。ハヤはしばらくその後ろ姿を見送って、それから俺たちの方へ歩いてきた。
「団長……」
コウの呟きに、ハヤは何だか厳しい表情のまま無言で頷いた。それから俺たちを促してまた歩き出す。
揃って扉の並ぶ廊下を歩いていると、ふとコウが立ち止まって傍らの扉をノックした。え?
コウは少しだけ扉を押し開き、中を一瞬うかがってからサッと扉を開けてハヤの腕を掴むと、反転するようにして誰も気付かないくらい早く部屋の中へ入った。
俺がそのすき間に滑り込むと、俺が入った瞬間にコウは音も立てずに扉を閉めた。その扉にハヤが寄りかかっている。反転してたからちょうどコウが扉に押しつけるようになったんだな。
用心深く廊下の外の気配を伺っているコウの肩に、ハヤは両腕を預けた。
「……コウちゃんもやっとその気になってくれたんだー」
囁くように言ってコウの髪を指先でいじった。え、この部屋に入ったのはそういうつもりじゃないと思うけど!?
コウはぎょっとして反射的に両手を挙げた。
「団長、キヨくんならいないよ」
「キヨリンは関係ないでしょ。今頃、本に埋もれてるよ」
それってつまり安全って意味なんだろうか。ハヤが居なくて。
コウはなぜか俺を見た。いや、俺に振られても!
「……と、とりあえずさっきの話を」
ハヤはチラッと俺を見て小さくため息をついた。
「もうっ、せっかくの雰囲気をー」
いや雰囲気とかでなくて!
ハヤは拗ねたような顔でコウを解放すると部屋の壁に沿って移動した。部屋は小さく、一つある窓の幅程度で机が一つ窓に背を向けて置いてあった。何かの資料室なのか、壁が一面書物で埋まっている。
ハヤはその書棚を眺めるようにして歩いた。
「あの人、学校の時の知り合い?」
ハヤは小さく肩をすくめて肯定した。
「真面目にテスト受けて真面目に国に仕える事が決まった人」
なるほど。やっぱりちゃんとテスト受けてたら、国の中枢で働くのってあり得る話だったんだ。
「色々知ってるみたいだったね」
「欲しい情報じゃなかったけどね」
ここで、ハヤたちの動向を学校卒業以来集めていたという。しかもギルドの情報じゃなくて、何らかの機関を使って集めた個人的な情報。ハヤとシマとキヨの。
でも元々学校で主席クラスだった三人だし、その後も何かあったら国としては召し上げるつもりがあったんだったら、三人の事を調べておくってのはあるような気がするけどな。
「いや、おかしいだろ。調べるにしても卒業時からずっとの必要はないし、単に仕事を頼むつもりならギルド情報で事足りる。卒業時からずっとなら尚更、そこまでの細かい情報を集めておく必要はないよ」
コウは机にちょっと腰かけて言った。そしたら何でなんだろ。勇者のデータといい、何だか情報集められる事が多いなぁ。
「もっと色々聞けばよかったのに」
俺がテキトーに本を抜き出しながら言うと、ハヤは小さくため息をついた。
「事情知ってて来てると思われてんのに、そうそう根掘り葉掘り聞けないでしょ」
そりゃそうだけど。でも情報集めるために忍び込んだんだからさー。
「……とりあえず、この話はキヨリンには内緒にしとこうか」
「え……なんで?」
俺は本棚に寄りかかって窓の外を見ているハヤを見た。
だって、繋がりがあるかわかんないとは言え、新しい情報なんだからやっぱキヨに話すべきなんじゃないの? それに情報を集められていたのはキヨも含まれるんだから、余計に話した方がいいと思うんだけど。
でもハヤは何となく煮え切らない感じで、ちょっと唇を噛んで爪先をいじっていた。コウも両腕を組んでハヤの言葉を待っている。
「……もし、僕の想像が間違ってなかったら、キヨリンの情報を国に流していたのは……チカちゃんかもしれない」
え……俺はハヤを見た。
キヨの情報を、恋人のハルさんがずっと国に流してたっていうのか?
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