第24話 和みのある空間だね。
えっと、今一度整理しよう。
「あ、あのお好み焼き屋が?」
「
「私達が知ってるのはそれくらいだね?」
「あそこから良く出てきては通学してるから」
「
なんでも、あのお好み焼き屋さんがゴミが暮らしている下宿先という。でも、私が行った時は店主と娘さん、奥の母親しかいなかった。
(一体、どういうことだろうか?)
私は隠れ家に向かう前に管理人室をノックした。すると中から黒髪がひょっこり顔を出す。
寝惚けているのか、目を閉じて現れた雹。
「んぁ? あー、地味子」
「のっぺらぼうな座敷童に言われたくないよ」
「で、どうしたの?」
「ツッコミが無いのね」
「省エネモード」
「ああ、面倒と」
こんな姿の雹は見たことないね。
初恋に敗れた所為で気が抜けたのかも。
私はお好み焼きを一皿手渡した。
「まぁいいや。これ、お裾分け」
これは
「ん? お好み焼き! しかも研ちゃんの!」
「ああ、やっぱり知っていたのね」
すると今度は
「あら? 良い匂い。
「ダメ! 私が貰ったの!」
「ケチぃ」
ん? 今、聞き覚えのある名字が出た?
私は母娘のやりとりを眺めつつ問うてみた。
「雪さん? 家城さんって?」
「ああ、〈お好み研ちゃん〉の店主の名字ね」
「なるほど。ところで確認なんですが?」
「どうしたの? 真剣な顔して?」
「その店主って娘さんが居ますよね?」
「
「そうだったけ?」
「雹が忘れているだけでしょ」
ああ、あの子が例の。
(悪さをするような子には見えなかったね)
それこそ変化する条件とかありそうだね。
ヤンデレな特定条件で発動する病持ちとか。
私は
「あの店主に息子さんって居ます?」
「居ないけど。今居るとしたら従兄君だけね」
おぅ。ヒットしたよ。
雪さんはきょとんとしているが雹は愕然としていた。
「マジで!?」
雹はそこに居た事を知らなかったのか。
こういう時、地元の情報通が居てくれると助かるよ。もう一人は対価を求めてくるけどね。
「それが分かって安心しました」
「そう? 何かあったの?」
「後で教えますね。来て下さるのでしょう?」
「ええ。そのつもりだけど」
「では、その時にでも」
「分かったわ。雹はお留守番ね」
「うぃー」
あらら、省エネモードに戻ったのね。
これはこれで貴重なので、すかさず撮影しておいた。
「今、撮ったぁ」
「聞こえたかぁ」
「代金請求するよ!」
「お好み焼きで勘弁」
「ぐぬぬ。まぁいいか」
雹はそのまま管理人室に入っていく。
お茶を淹れて遅い朝食を始めると。
(ただまぁ女優のオフショットとしてはだらけ過ぎているから印刷後はデータを消そうかな)
私は管理人室からエントランスに戻る。
「ごめんごめん」
「早く食べたいから急ぎましょ」
「うん。あそこの美味しいよね」
「でも、閉店するって聞いたよ?」
「材料を無駄にする店員が原因だってね」
「そんな事があったんだ」
その店員も何となく判明したしね。
ゴミならば客に煽てられてサービスくらいはするだろう。それで閉店せざるを得ない状態になったなら、店にとっての問題児でしかない。
「一応、SNSで拡散させたから、閉店する事はないと思うよ? 私のサイン付きだしね?」
「「「「流石だ!」」」」
そしてエレベーターで最上階に移動した。
途中でケバ子さんを拾ったけどね。
「
「私は五階だけどね。ここはセキュリティもしっかりしているから」
「雹というマスコット付きで?」
「それは・・・たまたまだけどね」
「たまたまねぇ?」
「それこそ耀子と同じマスコット枠よね」
「ぐ、ぐぬぬ」
一本取られてやんの。
私は家の扉を開けて、雪さんが掃除してくれたであろう、室内の灯りを点ける。
「さぁ、あがって!」
「「「「「おじゃましまーす!」」」」」
この最上階はそこそこ部屋数がある。
ここは主にゲストを呼ぶ時に使う家だね。
普段から私一人が住んでもいいけど、
「すっごい、広い部屋ね。最上階ってこんななんだ?」
広すぎて一人住まいには向かないんだよね。
それこそ兄と母さんを呼ばないといけなくなるの。母さんは邸宅持ちだから意味ないけど。
「部屋は好きに使っていいよ。ほら、耀子達も勝手に選んでいるしね?」
「まるでホテルみたい」
「そんなもんかな?」
これらの調度品は購入時に母さんが寄越した物だけどね。一応、他のセーフハウスはこの部屋よりも小さいから、ここが例外だと思う。
「最初に購入したのが、このマンションだし」
「ち、賃貸じゃ、なかったの?」
「賃貸だと維持が出来ないからね。購入後の管理は雪さんにお願いしてるけど」
「そうなのね」
それなりに儲けて今があるからね。
それでも長者番付でトップを張る人達よりも下に位置するけど。母さんですら中堅だしね。
「ささ、お好み焼きを温めるから食べよう?」
「あ、研ちゃんの?」
「知っていたかぁ」
「近隣の学生の間では有名だからね」
「そうだったんだ。知らなかったよ」
というか学校の最寄りにあるから知らないのは私くらいかもね。
そして耀子を筆頭に、
「うまぁ!」
お好み焼きを口に入れていく。
「この生地、いいわぁ。ふわふわで」
「チーズとの相性が抜群ね?」
光はグルメレポーターのように。
「豚肉の脂が口の中で踊ってるぅ!」
ケバ子さんは上品に風味を味わっていた。
「ソースが相変わらず美味だわ」
「反応がそれぞれで面白いね」
すると全員が私を見てきょとんとした。
「「「「「そう?」」」」」
「キャラが出るって感じでね」
「ところで
「ああ、出かけるから夜まで? 今はウィッグだけでも外していいか。カラコンは面倒だから夜までかな」
私がそう言ってウィッグを外すとケバ子さんが驚いた。
「あ! カラコンの存在に気づいたわ」
「違和感、仕事して!」
耀子の言い草にはイラッとしたけどね。
すると光と輝がしみじみと感想を述べる。
「栞里って顔立ちだけは日本人よね」
「うん。色白で銀髪碧瞳以外は日本人よね」
「骨格が日本人だよね」
「晃さ? 私一応でも日本人だよ?」
「「「「「ハーフが何か言ってる」」」」」
「はいはい。冷めるよ。食べよう?」
ハーフではあるけど父親の要素は銀髪碧瞳くらいだもの。そこ以外は母さん寄りだと思う。
この銀髪碧瞳も少し色味が違うけどね。
しばらくするとチャイムが鳴った。
「あ、雪さんが来たよ」
私は受話器を取って鍵を開けた。
「それなら美樹は準備してね」
「ふぇ? 耀子? どういうこと?」
「今日のゲストは美樹だからね?」
「耀子、こ、これは、どういうこと?」
これにはケバ子さんもきょとんである。
驚きの方が強いかな? なのでネタばらしとして耀子から順に教えてあげた。
「実はね私達が代金を割り勘して」
「雪さんのエステを美樹にってね」
「普段は私達も受けているんだけど」
「肌荒れも結構目立つじゃない?」
「だから、撮影までに戻したかったんだよね。髪色も美容院に行くから安心していいよ?」
「み、皆・・・ありがとう」
ケバ子さんは嬉しさから涙を流す。
この一件からケバ子さんとは呼べなくなるので、私も普通に美樹と呼ぼうと思った。
美樹も詩織様って呼ばなくなったしね。
仕事では詩織ちゃんって呼ぶだろうけど。
その後、美樹が準備のためお風呂に入った。
「裸見たけど胸はともかく奇麗よね」
「うん。胸はともかく身体は奇麗ね」
「胸はともかく鍛え抜かれているね」
「胸は・・・私よりも大きい!」
「「「耀子、どんまい」」」
耀子以外、胸はともかくって言い過ぎ。
晃も輝もCカップだから言えないでしょ。
比較対象が光だから声には出せないけど。
(奇麗な裸を全員からジロジロと見られている美樹は何処か居辛そうだったけども)
どうせ夜は一緒に入るし今更だと思うな。
六人が一度に入れる大きな湯船だしね。
私はその際に気づいた事を光と話し合う。
「あとでブラも買っちゃう?」
「うん。それも必要だよね?」
気づかなかった三人はきょとんだね。
「「「え?」」」
「おそらくだけど晃と輝並に育ってると思う」
「今は気づけてないから小さいブラだけどね」
愕然としたのは小さな耀子だけだった。
「そ、そんな・・・また差が開くのぉ!」
「「「耀子、どんまい」」」
私は慰めではないが管理人室に居る座敷童を例に出す。
「まぁ雹ちゃんも居るし」
「お子様枠はお子様枠で」
「どんぐりの背比べしたらいいと思うよ?」
「可愛い小尻以外はそれしかないしね?」
「ひどい! 全員、ひどいよ!」
が、雪さんからとんでも情報を知らされた。
「雹ちゃんなら育ったわよ? 今はBだけど」
「がーん!」
直後、耀子は四つん這いとなって床に突っ伏した。いつか育つといいね、耀子のおっぱい。
「しくしく」
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