第13話 震え立つモブの決意。
今後、私が行うべき事。
それは幼馴染君とケバ子さんを結びつけて自身の未練を消し去る事。それと共に仕事以外では極力モブで居続ける事だね。これは容姿的なモブではなく恋バナではモブで居たいからだ!
「今は仕事が恋人だもの。私に男は不要よ!」
「はいはい。また始まったよ
「お仕事自慢じゃないもん!」
「「「もんって」」」
「急に可愛く言い直しても自慢じゃん?」
「自慢じゃなくて、ある種のけりをつける事かな? 当然、仕事ではなくてプライベートで」
「どういうことよ?」
プールと午前の授業の残りを終えた昼食時、
「恋する乙女を応援する的な?」
私はこの場に居ないケバ子さんを相手に動く事を
「「「「恋する乙女?」」」」
「授業中もひっきりなしで熱視線を送るから」
「「「「あー」」」」
その一言で誰もが誰か理解したらしい。
叶うなら席を変えても良い気がするしね。
「私が知る好みとか教えてもいいかなって」
「好みは変わっていそうな気がするけど?」
「私の言う好みは異性的な好みよ」
「「「「異性的な好み?」」」」
食べ物とか趣味とかではない。
あれが惚れる要素を教えるのだ。
「クラスだと反応しそうなのは山手さんと、小鳥遊さん、耀子も地毛にすると反応するね?」
「というか私が地毛にすると反応って?」
芸能的な好みは揃って被っているけどね。
何故か両者ともが仕事中の私なんだよね。
ケバ子さんはいいが幼馴染君、君はダメだ。
どうせ、無意識に過去の私を見ているだけだから。私を女神様とか言って拝んでいるけど、それも過去の私、交際時と同じだと思う。
忘れたと思いきや好みだから揺れている。
そこだけはどうあっても変化していない。
私は黒板前で食事を摂る楽しげな山手さん達を例にする。
「まず、髪が黒。ロングで印象的に清楚だね」
「「「あー」」」
「次はプールで見たけど、平面以上美乳以下」
「それって。反応されたくないよ!?」
「「「耀子、乙」」」
「まぁ胸で言えばそうなるかな。精々、C以下なら対象になるね。耀子の地毛で髪を解けば」
「なるほど。十分、彼の好みに当てはまると」
それを聞いて思案する
「耀子、あれはどう?」
耀子に問いかけた。
耀子は苛立ち気に薄い胸の前で両腕をクロスさせた。
「のーさんきゅー!」
「あらら、耀子も選びたいと?」
私は苦笑しつつ輝と思い出す。
「選びたいとしても、先の合コンでも?」
「うん。相手にされていなかったような?」
この合コンはモデル仲間で行ったやつね。
私は幹事だったっけ。本命はこの四人でね。
男性モデルの幹事は私の兄が行ったよね。
一つ上で違う事務所、この学校の先輩だ。
髪色は母譲りのダークブラウンだけども。
「というより耀子の場合は・・・なんでもない」
「ちょ!
「最後までって、どういう意味で最後なの?」
「そのおっぱいをもぐまで?」
「おっぱいをもがないで!」
耀子はそう言いつつ光の胸を鷲づかみしようと近づいていく。光は胸を押さえて後ずさる。
このまま追いかけっこしそうなので私は放置した。私の胸に意識を向けられても困るから。
「そういう訳で、ケバ子さんも印象を変えたらイケると思うんだよね。派手な印象だと芸風」
「「芸風って」」
「ゴホン! アクが極端に強すぎると演じられる役柄が固定化されてしまうからね。派手な女子高生とか、オチで殺される汚ギャルとか?」
後半はドラマの中での役柄だったけど。
死体役というか死体になる汚ギャルだった。
不潔の印象は無いのだけど、監督曰くオーディションで『何でもやります!』って言われてガツガツしすぎている点が引いたからだとか。
ガツガツ
必死だったのは分かるけどね。
「なるほど、アクかぁ」
「確かにアクは強いよね」
「すっぴんは奇麗だから、あれは勿体ないよ」
すると光の胸を揉む耀子が私達に提案した。
「それならさ、オフの日に改造しちゃう?」
「おふ、あふ、おふ、あふ」
それは創立記念日を含む三日間のオフだ。
泊まりがけの勉強会を開く名目で全員三日間の休みを頂いているのだ。私が四人に教えたり教わったりだけど。襲われるのは光だけだけど。
私は耀子の提案を受けつつ思案するも、
「それはいいけど光を揉むのは止めたら?」
目に入った事案を注意した。
しかし、耀子の両手は止まらない。
「ん? これはこれだから」
「やめへぇ〜。男子が見ちゃう」
ああ、これは相当不味いね。
私は仕方なしで興奮気味の男子達へ命じた。
「男子達、百八十度ターン!」
「「「「イエスマム!」」」」
「光をオカズにするのは帰ってからにしてね」
「「「「!!?」」」」
そう言うと、男子は驚いたようにビクッとなり、耀子達からは訝しげな視線をいただいた。
「それ、栞里の一言の方が酷いよ?」
「あふ」
「「耀子に同じ」」
でも、それくらいでしょ?
男子達が乱れる女子を見て興奮するのは。
私もオカズにされていると思う事もあるし。
(でも、それが男子としては普通だしね?)
女の子の思考としてはおかしいけどガス抜きは必要だと思うんだ。襲われたら堪らないし。
「この中から捕まるような変態は出ないと思うけど、身を守る術だと思うしか無いでしょ?」
「み、身を守るってことは分かるけど?」
「ガス抜きは必要! 但し、襲うのはダメ!」
その直後、男子達が一斉に何度も頷いた。
何故だか知らないけど同意が得られたね。
「なんて言うか、今の栞里って
「うっ」
「あー、何となく分かるかも」
「天音さんって明け透けだし」
「妙な色香もあるもんね。ふぅ」
私があっけらかんと言った言葉で、この場に居ない私のマネージャーが被害に遭った件。
あれで勘が鋭いから帰りは覚悟しておこう。
(休みの三日間は単身赴任の御主人も帰ってくるしね。たまには夫婦水入らずにするのも手かな? それでも他の子のスケジュール管理があるから休めるか微妙だけれど)
ともあれ、耀子発案のケバ子さん改造計画に賛同した私達は、ケバ子さんが教室に戻る前に何をどうするか話し合ったのだった。
と言っても言葉に出すと男子から漏れるのでラインのグループ内にて話し合ったけど。
「悪趣味な金髪をダークブラウンに染めて」
「天パ? ボサボサだから縮毛矯正かな?」
「あと肌荒れが治ってないから、エステもね」
「そうなると栞里の隠れ家に連れて行く?」
「
「り。あとは本人に聞いて了承が得られたら」
「実行だね。美容院も予約しておかないと!」
「下地はいいから、ある程度したらカットモデルとしてもいけるかもね?」
「「「「それいい!」」」」
そうすれば幼馴染君の反応も変わると思う。
あとはガツガツを止めさせないとね。
一歩引くくらいすると気になって動くから。
「ヤツは清楚系が誰よりも好きだからね!」
しばらくすると未だに思案気な幼馴染君とケバ子さんが戻ってきた。思い出そうと一生懸命だけど嫌な記憶は簡単には思い出せないよ。
私の顔を見ても思い出せない。
(封印したも同然なら思い出すのは大変よ)
私の場合は原動力だったから何かの拍子に浮かんで何クソと利用したけど。そうしないとどれだけ努力しようが今の地位にはなってない。
すると耀子達がケバ子さんを引っ張って、
「おかえり、
「べ、勉強会?」
「そうそう。女子会も兼ねてるからどうかな」
「泊まりがけでね。三日間、集中的に勉強するの。勿論、休憩時はカラオケしたり遊ぶけど」
「そ、それって」
「うん。栞里も来るよ! 私達のグループだけだから当然でしょう?」
「!!」
勉強会の誘いを行った。
一方の私は次の授業の準備を行う。
席が近いとやりとりも行い易いよね。
私は遠すぎるので隣に意識を割いた。
(難しそうな顔してる。その素振りを演技に活かせばいいのに。それならイケるのにね?)
ちなみに、中学時代の友達とかいじめの主犯共をあてにする事は出来ないよね。いじめの主犯共は私が転校した後に、別の子達にいじめられて重度の精神病になって入院中だ。同性の友達は少なかった事もあって全員が疎遠である。
(今は時間が時間だから、監督からの連絡待ちかな? あ、オーディション、してみる?)
結局、子役としての傲慢な態度が誰も彼も遠ざけてしまっただけだから。私も明日は我が身だから彼を反面教師にしている部分もある。
(今は出来ないから、夕方にでも伝えるかな)
それが出来ていない時は、プライベートで耀子達から注意されているので常に反省である。
持つべき者は心からの友達だと改めて思う。
母さんが言っていたのはこういう事かな?
この四人は母さんからよろしくと言われる前から喧嘩したりして交流を深めた友達だから。
何はともあれ、耀子達から確保のサムズアップを向けられたので、安堵した私であった。
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