第10話 きっかけ
バスが目的地に到着した。
課外授業って何すんのかなと思ったらまさかの山ん中。まじ山ん中。これからやることカレー作って講義あって、森林で自由時間‥
林間学校かな?
班ごとに分かれて、カレーを作り出す。俺の役割は材料などの運搬や火おこしなどの雑用。元々料理なんて一切できないし、こっちの方がいい。下っ端はやっぱり楽だな‥責任取らなくていいし。班用の材料をもってきて、近くの女子に声をかける。
「これ、どこ置いたらいい?」
「え?‥‥あー、その机に置いといてくれる?」
「分かった。火おこししとくから、なんか雑用あったら呼んで」
「わ、分かった‥」
めちゃくちゃ動揺された。
まぁ、分からんではない。日々適当にやってる人間が、急に真面目になってるとびっくりするもんだ。すぐにその場を離れ、火おこしの方に行く。といっても誰でもできる簡単なやつのため、俺1人もいらんのだが、全く知らん奴らと気まずい雰囲気になりながらやるぐらいなら火をつけてボーとしてるだけで仕事してるふうに見えるから楽だ。あれ?これは仕事じゃないのに仕事と言ってる‥毒されてるな、俺。
「A君‥」
「うん‥?」
さっきの女子が声をかけてきた。
「ごめん、ちょっと頼みたいことがあるんだけど‥」
となんだかんだ雑用にも仕事があるようだ。
しもべになった気分で雑用をこなしていたら、気づいたらカレーが出来ていた。
雑用もあって、俺が最後だったのか、みんなもう座っていた。すぐにカレーを食いだす。意外とうまいもんだ。
「先に食っててもよかったのに」
「いやいや、色々頼んだのに先に食べれないよ‥」
「そうか?」
といっても食器類だったりちょっと重いもんはこんだり大したことをした覚えがないのだが、普段何もしない人間からしたら大躍進と言えるのかもしれない。
「ありがとね、A君助かっちゃった。」
「全然。」
うちのグループは、女子4人の男子2人。そのうちの男子1人は、どちらかと言うと料理メインでやっていたため、雑用係が俺しかいない状態のため、色々頼んできたんだろう。
「て言うか、A君喋るの何気にはじめてかも。」
「あ、私も確かに。」
「私も私も」
女子というのスイッチが入るとよく喋る。俺が得体の知れない人間からまだ関われないこともない人間になった瞬間この切り替えようだ。
「まぁほぼ寝てるしな。」
「なんで、いつも学校で寝てるの?家でちゃんと寝てる?」
「俺、過眠症なんだよ。」
「過眠症?」
「寝ても寝ても眠たい症状だな。」
「へぇ〜」
「そうなんだ〜」
まぁ寝てないけど、それっぽいことを言っておけば、それなりに納得してくれるから、助かる。
「A君ってB君たちとしか関わってないから、どんな人かと思ったけど、普通なんだね。」
「ちなみに、最初はどう思ってた?」
「ヤバい人」
「で、デスヨネー」
自業自得だが、直接言われるとグサリとくるものだ。女子ってストレート攻撃強すぎ‥
「だって、入学式来ないし、次の日遅刻だし、挙げ句の果てずっと寝てるんだもん。あ、やばい人だと思うじゃん。」
「耳が痛いな‥」
「正直、同じ班でうわってなっちゃった、ごめんね⭐︎」
「あの、ね?俺も人だからね?ストレートに殴るのはやめてね?刺さるから。」
てへぺろみたいな顔されましても‥
「まぁ、今はそうでもないから大丈夫大丈夫!」
「そうっすか」
一時はどうなるかと思ったけど意外とやれているみたいだ。そのかわりにもう1人の男子は全然喋らんけど‥
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