第9話 課外授業
「じゃあバスに乗ってけー」
先生の一言で生徒たちが順々に乗っていく。
今日から問題の課外授業が始まる。天気は快晴でそれが一日中続くとされもってこいの1日となる。席についてすぐにBが声をかけてきた。
「なぁなぁA」
「おん?」
「お前来たんだな。」
「おう」
「来ないと思ってた。」
「は、は、は‥」
まぁ参加しないつもりだったから否定はしないけど。不参加だから1番前の席とかになるかと思ったら、真ん中らへんの割と悪くない位置にいた。おそらくBがそこを選んだのだろう。
「まぁ来てくれて嬉しいけどな〜」
「そうか?」
「いつもいる奴がいないとつまんないしなー。」
「お、おう。」
Bという人間は、どうやら生粋のお人好しのいい奴みたいだ。
「ところで、寝るのか?寝るなら適当に動画でもみるけど」
「珍しくちゃんと寝たから適当にゲームしようかなって思ってたけど。」
「そういえば顔色いいな、どうした?」
「課外授業が楽しみでちゃんと寝たんだよ。」
「嘘つけよ。」
まぁ嘘だけど。たまたまバイトがなくなって寝る量が増えたのと飯をしっかり食うことになったことも大きいのだろう。
「じゃあこの機会だし、色々話そうぜ。」
「いいけど、何を?」
「そうだな‥‥何隠してるんだ?」
「は?」
急に何を言い出すんだ、こいつは。
「だから俺に話すことないのか?」
ふざけるつもりはなく、真剣にこちらを見つめる。
「‥何もないな。」
目を逸らしながら、答える。すると呆れたのかため息をついた。
「じゃあ、質問を変える。学校が終わったら何してるんだ。」
「バイト」
「何時から何時まで?」
「日によるけど、だいたい18時から22時くらい。」
「‥‥」
こんなにしつこく聞いてくるなんて、珍しい。俺とBは元々そこまで干渉しない。適度な距離をとりお互いが嫌なことはしない。
「どうしてそこまで聞いてくるんだ?珍しい。」
「だってお前、何にも話してくれないじゃん。」
「そうか〜?」
「そうだよ、今みたいにはぐらかしたり、適当なことしか言わないし。言いたくないなら別にいいけど。」
言えるわけがない、この歳で夜勤してるなんて‥
「お前は秘密主義なのか、俺のこと信頼してないから言わないのかそこに関しては何も言わない。ただ‥」
Bな顔を見てふと思う。なぜ、他人の話なのに自分のことのように悲しそうな顔をしているのか分からない。
「お前の生活はまともじゃない。いつか、ぶっ倒れるぞ。」
「そうかもな。」
「自覚あるならなおせよ。」
「善処する。」
ったくと呟いて前に向き直る。
「ところで、お前彼女いねーの?」
「いると思うか?」
「まぁないわな。」
「なんで、聞いたんだよ‥」
こいつ、喧嘩売ってるのか?自分がモテるから嫌味でも言いたいのだろうか。
「お前にも、いつかできるといいな。」
「まぁ忙しいから無理だな、今は」
「そう言うことじゃねーよ」
「どう言うことだよ。」
「彼女じゃなくてもいい、お前が信頼できる人間ができたらいいなって話」
なるほど、こいつはこいつなりに心配していたらしい。
「ありがとな、なんか気を遣ってもらって」
「そんなつもりない、お前があまりにも酷いから仕方なく言ってやったんだよ。」
「耳が痛いな。まぁほんとにやばくなったらお前に相談する。」
「約束だぞ。」
「あぁ」
すまんな、B。その心配は杞憂だ。俺は1人で生きていける。いや、生きていくしかないのだ。他人を頼る、相談する。大事なことだろう、しかしそれは他人に頼らなければならない人だからこそ言えることだ。俺は違う。ストレスを溜め込むことはしないし夜勤のバイトも3ヶ月も経てばある程度なれる。俺は自己完結ができているのだ。口約束をしたが、おそらく破ることになるだろう。もし破らないとなった時、その時の俺はおそらくもうすでに壊れているのだろう。
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