第6話 不完全燃焼な思い
屋上に着くとすでにCさんはおり、屋上から学校の様子を見渡していた。
「Cさん」
「A君‥」
声と共に振り返る。
俺との勝負に負けたのが悔しかったのか、悲痛そうな顔をしていた。テストごときでそんな表情をするのか。
「結果はもうとっくに分かってるから、確認する必要があるかな?」
「いや、ないわ‥」
「そう、なら俺はこれで。これからはクラスメイトとしては仲良くしてもらえると助かる。」
「‥‥」
反応を示さないのでそのまま屋上を後にしようとすると、
「A君!」
「ん?」
振り返ると神妙な面持ちで俺を見ている。
何て言うべきかと口をパクパクしてしどろもどろとしていた。
「何?」
「あ、えっと‥」
声をかけたのはいいもののその内容が決まっていないのか黙ってしまう。
「本当に、このままでいいの?」
「なんのこと?」
ようやく絞り出したことはとても抽象的で何を表しているのか、いまいちよくわからない。
「本当にその生活のままでいいの‥?」
「‥?俺はいいと思ってるよ?」
「‥そう」
Cさんは俯く、表情が髪で隠れてよく見えないが声からして少し落ち込んでるふうに見えた。
ここで、前に感じた違和感を聞いてみることにした。
「Cさんはなんで俺の生活を気にするの?」
「え?」
「俺に対して憤りを感じるのは分かるし、迷惑もかけたから嫌われててもおかしくないって思ってる。でも今のCさんは明らかに俺の生活を直そうしてる。」
「そ、それは‥」
違和感を感じたのは勝負の内容からだ。俺に対して苛立ちなどがあるなら、もっと嫌がらせだったり自分の気が晴れるような罰ゲームにできただろう。しかし、Cさんは俺の生活を改める。それはまるで俺の体を気を遣ってるように感じた。
「あまりにも‥見ていられなかったから‥」
「それは、なんかすいません‥」
俺はCさんに嫌われてると思っていたが、あまりに酷かったので温情をかけられたのかもしれない。
「あなたの方が成績がいいの分かった。悔しいけどそれは事実。だからって、成績がいいからずっと寝てるのがいいとは思わない。それに明らかに体を壊すような生活してそうだもの」
「そ、そんなに?」
「自分の顔、鏡見てる?」
話の内容はごもっともな話だし納得はした。どうやら、Cさんは、成績がいいから自由にしすぎというのと俺のことを気にかけてくれてる。
「気を遣ってくれてありがとう、でもごめん。俺は今の生活を変えるつもりはないんだ。」
「‥どうしても?」
「うん」
「そう‥」
彼女は静かに呟くと左手で拳を作っていた。
少しの間沈黙が流れる、俺は彼女を見る。見れば見るほどとても美人でスタイルがいい。こりゃ人気になるわけだ。俺のことも本気で心配してくれてるっぽいし‥あれ?
「ん‥?」
「どうしたの?」
「いや、なんでもない。」
彼女の顔を凝視していたら、またもや違和感が生じる。今度は分からない‥しょうがないか。
「じゃあ、話は終わったっぽいし俺はこれで」
その言葉を最後に屋上を後にする。
「どうしたらいいの‥」
彼女は彼がいなくなった後、ボソッと呟くのだった。
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