第3話 問題児の問題

「お疲れ様でーす。」

「A君、お疲れ様」

pm10時、店長に挨拶して更衣室に入る。学校が終わり一度家に帰り仮眠をとったあとバイトに入る。今から夜勤なのだ。

ここで疑問に思うだろう。なぜ働いているのか?

俺は15歳の高校1年生、年齢詐称してるわけでもない。店長はそれを知っている。ならなぜ働けているのか、それは俺と血のつながった人間によりこの労働基準法を無視した行為を平然としているのだ。

店長に事情を話した時、難色を示した。当然だろう、未成年が夜中に働くことなんて本来できないのだから。これは、俺が夜勤をさせてくれと頼んだわけではない。あいつらがそうするように指示出し立場上店長は断れず今に至っている。

更衣室から出るとパソコンと睨めっこしている店長がこちらに振り向く。

「A君、今日もよろしくね‥でも、しんどいと思ったら帰るんだよ?」

「店長、ありがとうございます。俺は大丈夫です。」

店長はまだ1ヶ月の付き合いだが、人柄もよく接しやすい。みんなからも信頼され好かれている。暴挙に関しても法を犯すのが嫌なのではなく、俺の事を思ってずっと渋ってくれていた。

(子供が夜勤をするなんてダメだ、体調を崩す)

(高校生としての生活があるのだから、今しかできないこともある。バイトなんてしてる場合じゃないよ)

それでも、夜勤ができているということはそれだけ、あいつらの権力の強さというのが分かる。もし、バレたとしても有耶無耶にするのだろう。

「君のご両親には、この状態はよくないってずっと言ってるんだけどね‥ごめんね。聞く耳すら持ってくれないんだ‥」

「その気持ちだけで充分ですよ、ありがとうございます。それよりも店長こそ大丈夫ですか?あれに刃向かったりしたら、急にクビなんてこともありますよ?」

「あはは‥そうだね。その時は転職活動を頑張るよ。」

「‥‥‥」

そう言って笑っているが、店長の立場を見ると本当は笑っていられるようなことはない。あれは自分に逆らう人間や能力ない人間はすぐにでも切る。店長は結婚していて奥さんもいる。いきなりクビになったら、とても困るのではないだろうか。それでも明るい表情してるのは店長の器の大きさなんだろう、俺はあんなふうになれない、自分のことで手いっぱいなのに他人の心配なんてしていられない。

「俺のことは気にしてもらえることは助かりますが、店長今仕事大丈夫ですか?」

「あ、そうだった‥」

店長はあまりパソコン関係の仕事が苦手で俺が代わりにやることがしばしば、

本来なら俺と油売ってる時間はないのだ。

「じゃあ、俺はバイトの時間なんで行きますね。」

「A君」

「はい?」

振り返ると店長は真剣な面持ちで俺を見てる。

「いや、なんでもない。頑張ってね。」

「‥? はい、頑張ります。」

控室から出る時にチラッと見た時の店長の顔はどこか悲しそうな顔をしていた。もうあの表情を見るのは何回目だろうか‥

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