第39話 ユウナが狙われた理由

「ほう? 好きにしていいか」


 魔人は口角を上げ、不適な笑みを浮かべた。

 なんでこんな時に足を止める! こういう時こそ体を動かせ、オレの気持ちとは裏腹に体は動かない。


「リステリ言った言葉は取り消せないぞ」


 魔人の言葉に妙な圧力がある、気を抜くと気押されそうだ。

 ここで負けては駄目だ、オレが来た意味がない。


「フッ、まぁいい、リステリ貴様には大事な役目が存在する」

「役目? 役目って一体なんなのよ!」

「そこの無能もしっかり聞いてろよ」


 魔人は相変わらず歪な笑みを浮かべ、ペラペラと説明をしだす。


「リステリ、貴様は魔帝の力を秘めている、それは貴様の家系が関係している」

「えっ私に魔帝の力が……?」


 魔人は説明を辞めない、ユウナさんは複雑そう表情を浮かべる。

 正直ユウナさんに魔帝の力が、あるのは妥当な話しだ。

 魔帝とリステリの関係性的に、不思議ではない。


「魔帝の力は力でも世の中に出してはいけない、禁断の力さ、それを我々のボスは必要としている、その為にも魔帝が生涯愛した剣を寄越せ!」


 どうやらオレの推測は見当外れのようだ。逆にこれを予想できたら凄い。

 そもそも魔帝の力ってなんだよ! ますます理解ができない。

 禁断の力ってなんだ? そんなの今考えている暇はないか、目的を忘れるな。

 あいにく魔帝の魔道具、奴が欲っしてる物はオレが所持している。


「なぁ禁断の力ってなんだ? それに何故魔帝の魔剣が必要?」


 少しでもいい話題を振って時間を稼げ、話しはしっかり聞く、それでも戦略を練る。


「魔帝は人類の中で最強の魔法師、様々な力を所有し、その中でも封印をされた力がある、それはリステリ家ですら知らない」


 逆になんでお前は知っているんだよ、とツッコミたいが、さっきから言っているボスが関係している。

 一体どんな奴かは想像つかない、一つ確かな事は知的だ。


「禁断の力、『禁羅支配ヴァルナノヴァ』」


 全く分からない、ユウナさんも唖然としているし、『禁羅支配ヴァルナノヴァ』がどれまでの強さかは測りしれない。


「知らなくても可笑しくはない、『禁羅支配ヴァルナノヴァは、自分を含む定めた空間の中で魔法を封殺し、倍増して反射をする」


 それの何が禁断の力なのか、分からない。あくまでオレはだ、ユウナさんの顔色が悪くなる。


「その力だけならばまだ可愛い、相乗させ剣によって一撃を払う」

「無能は分かってないが、流石は所持者でリステリだ。魔帝の剣は魔帝の全ての力が注ぎ込まれている」


 一つの力だけで考えると軽い物だ、それに魔剣を合わせれば別の話し。

 魔帝の魔剣は魔帝の力が注がれている、それにさっきの力を相乗させれば、恐ろしい。

 魔帝の力を倍増して放っているのだから。

 更なる向上の力や、相手に反射を更に苦しめるって、力もあり得る。

 まだ解明されてない未知数の力が、魔帝の剣には存在する。


「さぁ話しは終わりだ、リステリお前にはこの扉の先を開け、オレと来て貰う」

「ユウナさん開けては駄目だ。こっちを気にかけなくていい」

「でも……」


 そんな心配そうな顔をしないでくれ、前まであんなに信用があったのに、今ではもうない。

 やっぱ負けるのは嫌だな、一回負けただけでこの様だ。


「ボクを信用して下さい。今度こそは必ず勝ちます! 一緒にソロモンへ帰りましょう」

「ッ!! うん! 一緒に帰ろう」


 これで安心をしてくれたのか、分からない。

 戦略は全く練れなかった、正確には練ったが全て通用しない。

 何とかするしかないな。

 ロングソードを握り直し、構える、オレは別に剣士でもなんでもない。ただの執事だ。


「なんだ交渉不成立か、だったら死ね!」


 魔人は手を合わせ、膨大な魔力量のエネルギー弾を生み出す。

 あの時のように斬り捨てれるかは不明、それでもやるしかない。


「来いよ、斬り落とす」


 魔人は器用にエネルギー弾を、片手に持ち、放った。

 物凄い速さで迫ってくる、剣を上段に構え振り下ろす。

 タイミングはよく、エネルギー弾の真上に刃が入る。

 くっそ!! 全く刃が通らない、それ所か押され始めてきた。


「人間の無能如きが防げない」

「確かになぁ、前の自分だったら防げてないさ」


 でも今は違う、あの時──ドルグアの魔人と対戦した時と違い、オレには専用の魔道具がある。

 金色の指輪で精密な魔力操作、魔力を出すのは今でも苦手だ。

 だが、この指輪のおかげで解消されている。ロングソードに魔力を注ぎ、纏わせる。

 腕にも魔力を流し、剣がスムーズに入り、エネルギー弾を切り落とす。


「おいおい何をした?」

「見て分からんか? エネルギー弾を切り落としたに過ぎない」


 ユウナさんも魔人も驚いている、不思議ではないだろう、あの時は全く何もできず、敗北した。

 直後、エネルギー弾が爆散し、オレと魔人の間に煙が立つ。

 これにより視界は奪われる。


「邪魔くさい煙だ!」


 魔人の苛立つ声が聞こえる、視界を奪われば、無闇には動けない。

 それは普通の場合だ、魔力の流れ、気配を感じれるから場所把握はできる。

 まず、魔人と戦闘より、ユウナさんの確保が先。

 音と気配を殺し、ユウナさんに近付く。


「ユウナさん大人しくして下さいね」


 小声で話しかける、ユウナさんは相槌を打つ。

 魔人は煙をひたすらに払っている、今ならば隙がある。

 連れ出すタイミングかもしれない。


「兄ちゃん、好き勝手されたら困るぜ」


 男の声と共に体が硬直する、最悪な事に煙も晴れた。


「遅いんだよ馬鹿野郎。こんなガキから満足に情報を聞き出せないのか?」

「あ? 誰の手柄だと思っている!!」


 口論? この時脳裏に通路での話し声を思い出す。

 あの時の会話、やっぱりこいつらか、それよりこの男、何処から出てきた? 体はまだ硬直している。

 けれど、片腕くらいは動かせる、魔人ではなく、この男ならば捻り潰せる。


「調子乗っていると殺すぞ! クソ人間が」

「なんだとてめぇ……!」


 ロングソードを放し、右腕を勢いをつけ振る。

 右手の裏拳が男の顔面を捉える。男は勢いに乗って、地面に転がる。

 それを見た魔人が腹を抱えて笑い飛ばす。


「ギャハハハ、やられているじゃねぇかバーカ。ケッケッケ」


 今の衝撃で体が正常に戻る。

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