第30話 クロ専用の魔道具
ユウナさんの一言、それにボクは手の方を見ると、数個の魔道具と思わしき物が、ユウナさんの手の中に合った。
手の方から凄まじい魔力を感じる、床に落ちていた魔道具とは、比にならない程の魔力。
ユウナさんはボクに渡す、それと同時に体をふらつかせ倒れる。
ボクは腕を伸ばし、ユウナさんを受け止める。
「ごめんね、こんなに強い魔道具を作ったの始めてだからさ」
どうやらボク専用の魔道具製作、相当な魔力と体力を消費する。本当に有難い事だ。
ボクの為に自分が疲れるのに、魔道具を作ってくれた。
寝息が聞こえる、ユウナさんはボクの腕の中で眠っていた。
「本当にお疲れ様です」
この人には色々と敵わない、ボクはユウナさんが起きるまで、その場にずっと座っている。
どのくらい時間が経ったか、分からないけど、ユウナさんは起きた。
少し寝ぼけていたが、だんだんと顔が真っ赤になっていき、離れようとする。
ボクはユウナさんから手を離さず、体を抱えたまま、激しく抵抗され離れた。
面白半分で意地悪を、するんではなかった。
痛い目に遭った、激しい抵抗の中で、裏拳が顎に直撃した。
本当に痛い、ユウナさんって思った以上に力が強い。
「もう意地悪しないでよ! 眠った私も悪いけど、とにかく魔道具の説明をするね」
ユウナさんは少し怒りながらも、ボクに魔道具を渡してきた。
金色の指輪と黒い手袋、ユウナさんから受け取る。
「指輪は魔力を底上げし、繊細な魔力操作ができる、その黒い手袋は肉弾戦用ね」
指輪は魔力の底上げと魔力操作、今のボクにとっては有難い代物、問題はこっちの黒い手袋。
肉弾戦用ってどういう事?
「クロ君はさ魔法使えるじゃん? それでも肉弾戦をしようとする」
「元々肉弾戦メインで鍛えていたからそうですね」
「クロ君の攻撃ってさ少し変なんだよね。拳を当てるだけで相手を吹き飛ばす。それは腕力ではない」
腑とドルグアの言葉を思い出す。まるで魔法で肉体を覆っている。
ユウナさんの発言、相手をすぐ吹っ飛ばす事ができるのは、ボクの力ではない。
だとしたら一体なんだ? 仮説としては魔法。
そんな事あり得るのか? 普通に考えればありえない。
「その黒い手袋は魔法を防ぎ、魔法を砕く事ができる。対魔法の手袋、名付けるならばソニアの手袋!」
ソニアの手袋、これがあればフォストの魔法も対処できる。
今のボクの戦闘スタイルにとって、この魔道具は最高の代物。
「こっちの指輪が私からすれば最高傑作かも、ある有名な魔法師の指輪をモデルにしているんだ」
ユウナさんは嬉しそうに語る、ボクはそんなユウナさんを見ると、自然と口角が上がる。
それから軽く、指輪の使い方を教わった。
魔法の原動力はイメージ、それを指輪に魔力を流す事で、ある程度、自由な魔法を生み出せる。
勿論、魔力操作で範囲も火力も決めれる。
「これは君だけの魔道具、他の誰でもない。君専用の魔道具」
ユウナさんは魔道具を見て、誇らしげな表情をしている。
◇
「はぁはぁ。これでも喰らいやがれ!」
複数の火球が飛び舞う、それを手で弾き、放った人物の眼前で拳を止める。
両手を上げ、降参の姿勢を取った。ボクは腕を振り下ろす。
「お前本当強過ぎ」
「まだまだすよ。もっと強くならないと」
風紀員の先輩は呆れた表情をする。他の先輩も苦笑をしている。
魔導戦まで、後二週間を切った。
思っていたより早く開催だった、本来は冬の季節にやる。
今回は特例で夏前に行う、魔導戦を宣言されて役一月って所。
執事長や、風紀員の先輩たちと模擬戦をたくさんしてきた。
これでどのくらい、フォストに通用するかだ。
魔導戦に参加するって事で、執事業は今休止中。その分、かなりといっていい程、執事長に絞られた。
肉弾戦の対人はかなり上達した、魔法は多少。
肉弾戦に関しては執事長が師匠ではある。
だけど、魔法の師匠は誰一人もいない。
「やっぱクロ、お前も優勝を目指すのか?」
「お前も? 特に目指してないです。ただ、あのフォストには勝つだけです」
ボクが魔導戦の為に、強くなろうとしたのは、彼奴に勝つ為だ。
それにしても壊れた筈の、ロングソードを再び、渡されるとは思わなかった。
魔道具使用はいいのは聞いたけど、流石にロングソードはダメだよな? 折角ならば活用したい。
「いい意気込みだなー。風紀員長に当たらない事を祈っとけよ?」
「えっ? あぁ確か前回の覇者なんでしたけ?」
「そうそう。今回は二連覇目指すんじゃねぇかな?」
正直、あの人が優勝しようがどうでもいい。今、ボクがやるべき事はフォストに勝つ。それだけだ。
いずれはあの人を越え最強になる。
とにかく、フォストを倒すのがボクの目標。
そろそろ……ユウナさんの所に行くか。
ボクは風紀員の先輩に頭を下げ、部屋から出て行く。
魔道具を作ってくれたあの日を境に、ユウナさんの特訓に手伝っている。
時折り、妙な動きをされるから怖い。
下手にボクが動けば怪我をさせてしまう。
ユウナさんとの特訓は、結構慎重に行っている。
特訓して思った事は一つだけある。
ユウナさんは魔道具を使った戦闘では、かなり強い。
ボクに勧めた補助魔道具もあるだろう。それでも、ボクと真正面から戦えっている。
「ユウナさん来ました」
「来たねクロ君、今回も特訓お願いします」
ユウナさんとの特訓では、何故かボクが師匠になっている。
そんな事、本来はできないんだけどな。まぁユウナさんから頼まれたもんで、断れなかった自分が悪い。
二週間後。
いよいよ準備期間が終了し、ソロモン恒例の魔導戦当日。周りの生徒から緊張を感じ取れる。
それはユウナさんや他の風紀員も一緒。
『魔導戦がまもなく開始されます。生徒の皆さんは魔技場に向かいましょう。
何処からか声が聞こえた、その声を聞き、一斉に生徒は動き出し、魔技場に入る。
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