第23話 魔人と激突

魔人の赤い双眸がこっちをギロッと睨む、ボクを見て、ほんの少し髪が逆上がる。

まるで獣が警戒をしているようだ、魔人は腕を動かし、何かの動作をしていた。

すると、だんだんと腕が変色し、赤黒くなり魔力が集まっているのが分かる。

直感的にこれを喰らったらまずい! ボクは腕を引き腰を落とす。

この剣でどこまで防げるか分からない。それでもさっき魔力の塊を真っ二つにした。

少しは自分を信じてみるか!


「おい新入り、勝てそうか?」


構えを取り、魔人の攻撃を待っている間。風紀員の人が語りかける。


「多分。今の手応え的には何とか。それでも周囲の被害を抑えれません」

「だったらそこはオレらがカバーする!」


先輩らしい事を言われてしまった。遠回しに魔人との勝負を任されしまった。

風紀員として選ばれて初日、そしてソロモンに入って二日目。

まだ二日だってのにとんでもないな、このまま行けばどうなる? そこでボクは考えるのをやめた。

未来の事を思う希望に満ち溢れている。けれど、風紀員長の発言を思い出し、考えるのを自然とやめてしまった。


「……バッ、ドゥ」


魔人の聞き取れない言葉が頭に響く。

思わず頭を抑えたくなる程だ、でもそれはできない。

気を抜けない、抜いた瞬間、ユウナさんたちが危ない。

ロングソードを握る手が強まる。

魔人から濃密度のエネルギーが、集まっていく。

それはだんだんと大きく膨れ上がり、綺麗な円の形をした、赤い球体。

ハハッ、赤い球体を見て思わず口角が上がる。喜びではなく絶望。

こんなのまとも相手にしろ? 冗談じゃない! 絶対に死ぬ。

だとしてもボクはやらないといけない。

腕が震えるのが分かる、歯を食いしばり、覚悟を決める。

と、同時に放たれる、音速を越える速さで、眼前にまでくる。

急いでロングソードを振り上げる、おもっていたよりスピードが、速かったその為、反応が遅れてしまった。


「ッ!!」


ロングソードに重心が乗っかる、これは赤い球体の重さ。

今すぐにでも離したいくらい重い、ピキッと音がなる。

その音にボクの額から汗が流れ始める。

魔人はニヤリと笑い、手をバンバンと叩き、面白がっている様子。

くっそ喜びやがって! うぅぅ、体を捻り、赤い球体ごと、薙ぎ払う。

球体は爆散し、その衝撃がもろに当たる。

後方に吹き飛び、背中に鋭い痛みが走る。

壁に激突し、一瞬意識が朦朧とした。

歯を食いしばってなかったら、確実に気絶をしていた。


「おい大丈夫か!?」


風紀員の一人がこっちにかけ寄り、心配をしてきた。

ありがたいけど、こっちに来るな馬鹿野郎。

壁にもたれながら立ち上がる。その時、右腕に違和感を感じた。

さっきまでの重さと違い、びっくりする程軽い。

パッと右腕を見ると、特に損傷はない。

しかし、ロングソードの刀身部分が、無くなっていた。

あの時に刀身が跡方もなく、消えてしまった。


「大丈夫です。それよりお嬢様を」

「お、おう」


ロングソードはなくなってしまった。

次にどうやって、あのエネルギーを対処した物か。

魔力操作はまだ上手くはない。だったら考えなしに全快で行く! あの魔人のニヤニヤした顔を崩してやる。

足をゆっくり、ゆっくりと進める。

魔人は体を揺らしながら突進してくる。

チッ!! いきなりか!? 魔人の変則的な拳がボクを捉える。


「ハハッ。このくらいじゃあ止まらんぞ」


急な変則的な攻撃には驚いた。でも、痛くはない。

魔力を全開にした事が正解だった、もし出してなかったら、どうなっていたか想像もできない。

魔人の攻撃は一瞬止んだが、たて続けに殴打が飛んでくる。

ボクは反撃ができないでいた──しようとしていない。

魔法、魔力戦ではボクは不利だ。だけど、肉弾戦となれば勝機がある。


「なんで彼奴攻撃しないんだ?」

「どうせビビっているんだろう」


ボクが反撃をしない事に、周りにいる生徒たちがボソボソと言っている。

そんな事言う暇あれば、どっかにかくれるか消えて欲しい物だ。

確かに反撃をすればいい話しだ。それには一つ問題がある。

反撃をした場合、ユウナさんが巻き込まれる。

直線上にユウナさんたちがいる、ボクの攻撃は相手を吹き飛ばしてしまう。

そうなると、反撃をしたくてもできない。

どうか気付いて欲しい!


「彼奴まさか!? リステリちょっと来い!」


直線上の風紀員と、ユウナさんが動き始めた。

それに魔人が気付き、方向転換し、向かって行こうとする。

魔人が一歩、足を踏み込んだ時、服を掴む。すると魔人が止まる。


「やっぱりな!」

「えっ何がですか?」

「彼奴はお前を巻き込まないようにしている」


ある程度、離れたのが分かった。だから、拳を握り振り抜く。

魔人の体を捉える。宙に浮き、吹き飛んでいた。


「やっと殴れた! ここからが反撃開始だ!」


歩みを進めて、魔人に追撃をしようと試みる。魔人はばっと起き上がり、飛びついてくる。

横に体をずらし躱す。続け様に膝蹴りを喰らわす。

その時、始めて魔人から血飛沫が舞った。

苦し紛れに手を振り回す、軌道が簡単過ぎる為、受け流し、一撃、また一撃を当てる。

とうとう魔人は膝をついた。これで終わりだ! 腕を振りあげる!? 凄まじい嫌な予感が襲う。咄嗟に距離を置く。


「ハハハッ、まじで危ない!!」

「カッカッカ。お前……殺す」


魔人は片言だけど、今ボクを殺すと言った。

それを証拠に魔人の右手には、禍々しい剣を持っている。


「あれが魔剣」


風紀員長と話している時、急に入った緊急連絡。

それを聞いてから魔人と対決。少し腑に落ちない所が合った。

それでも今解消された、奥の手として魔剣を隠していた。

どのくらいの力を持ち、威力があるか分からない。

だからこそ油断ができない。

魔人は魔剣を振り回す、まるで棒切れを振っているようだ。

けっして、剣技──剣術ともいえない。

それに関してはボクも、人の事はいないな。


「それにしても禍々しい過ぎる!」


軌道は一定、だがそれを補う程の禍々しいさ、魔力量。

簡単には避ける事ができる、それでも一撃でも当たれば命がない、と思わせる程の存在感。

これが魔剣の力か、上段からあ振り降ろし様に、蹴りを合わせ、魔剣が弾き飛び地面に突き刺さる。

魔人の顔が絶望に変わっていく、そのまま回し蹴りを魔人に叩き込む。

魔人は倒れ、体がピクリともしなかった。


「本当にこれで終わった」


思ったより体力を使ったな、魔力を全快とも考え物だな。

戦いが終わった事に一斉に歓声が、広まる。それを見て、ボクは少しホッとしてしまう。

ユウナさんの所に向かいたいが、魔剣が一番、気になる。

魔剣の所に向かい、引き抜く。


「これが魔剣、禍々しいな。厳重に保管するか処分をした方がいいだろ」


次の刹那、ユウナさんの悲鳴が聞こえる。

ユウナさんの所を振り向くと、さっき倒した魔人がユウナさんに襲い掛かっている。

このままじゃあまずい! ユウナさんが危ない。

ボクは急いで向かい、魔人を引き離す。

魔人は抵抗し、ボクは押し倒される。

だったら!! ──魔人の胸に魔剣を突き刺す。

        ◇

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