第21話 ユウナと風紀員長の関係性


 風紀員長がボクの方に近付いて来た。

 相変わらずニヤニヤとしていた、流石に疲れた為、できる事であれば相手をしたくないと思えた。


 お疲れクロ、家の連中は強かっただろう?」

「ムカつく程にね。それより魔道具を使ったのが一番の驚きですよ」


 風紀員長の顔が急に真剣になった。地面に落ちている魔道具を拾い、少し悲しそうな表情を浮かべていた。


「魔道具はね、本来素晴らしい物何だよ、それでも道具に頼るのを嫌う連中は多い」

「道具を使えば落ちこぼれ、魔法師失格とも言われていますね」


 ボクはまだ魔道具を使った事はない。

 それでも魔道具の素晴らしさは理解している。

 魔力が合っても魔法を使えない人間は、一定数存在する。

 そんな人たちが戦う手段として、魔道具が存在している。

 少し前までは、魔道具は世界的に使われていた。

 だがある一族によってほぼ廃棄されたらしい。

 風紀員長は魔道具を見つめ、やはり悲しそうな笑みを浮かべる。

 この時、ボクは風紀員長の気持ちが分かったような気がした。


「わっちはね友人の為にも、魔道具を世界に広めたい。その為にはこの学園からだ」


 話しを聞いている中で風紀員長は、魔道具を心から愛しているように、感じとれた。

 決してそれだけではなく、友人の為とも言った。

 その友人が誰かは見当が付く。


「風紀員だけの暗黙のルールがある。それはね魔道具を所有する事」


 それならば大量に落ちている、魔道具の理由として理に適っている。

 一つ、問題を挙げるとすれば、風紀員の一人一人の力が強いけど、まるで魔道具を活かし切れていない。

 本来であればロングソードを、使っているボク相手に楽勝で勝てる。

 それでも魔道具の特性を活かせていない。

 風紀員長は意識的に、魔道具の理解はしている、他の連中も一緒かといえばきっと違うだろう。

 一つ一つの魔道具は強力だ、もし特性を知り、使いかった次第で風紀員長にも勝る。


「一つ聞いてもいいですか? 風紀員長とお嬢様はどんな関係柄ですか?」

「お? 気になっちゃう? なっちゃう?」

「あっじゃあいいです」


 そこまでしつこく言われると、聞くのを躊躇ってしまう。

 すると風紀員長はボクの腕を掴んでくる。


「ごめん! お願い聞いて……何その顔!?」


 あまりにも懇願された為、聞く事にした。

 多分、ボクは風紀員長が驚くような表情をしたのだろう。

 と、楽観的に考えていた。


「わっちとユウナは簡単にいうと幼馴染」

「昔からの仲なんでしょう?」

「そうそうわっちがまだリステリの分家の時なぁー。本当懐かしい」


 ん? 今さらっと凄い事言ったね!? リステリの分家? 風紀員長が? 確かに名家だから合っても不思議ではない。

 ただボクは一度も聞いた事がない。ユウナさんや執事長に一切教えて貰ってない。

 そもそも分家自体ある事が初耳だ、リステリにあるならば、ヒュウガにもある可能性が高い。

 風紀員長がリステリの分家か、強い理由に少し納得している自分がいる。

 風紀員長の言葉に、倒れている風紀員が起き上がった。

 全員驚愕の表情を浮かべている。

 ピンク髪の女性も唖然としている、ユウナさんは遠くを見つめていた。

 どうやらここにる全員、知らない様子だ。

 それを何も考えずに風紀員長は平然と言った。

 この状況だけみると、頭が痛くなってくる。

 当の本人は何も気にしてない様子。


「なんか言ってはまずかった?」

「そういう訳じゃないけどさ、普通考えなしで言う?」

「わっちはそんな人間だ、諦めろ」


 風紀員長は体を伸ばして呑気にいった。

 その姿は自由気ままで、どこかシンを思わせる所が合った。

 彼奴とは全然違う、それでも同等か少しの差がある程度の強さ。


「もうここで言っとくか、クロ。風紀員の中でユウナの事をよく思っていない奴はいる」


 その言葉を聞いた瞬間、ピンク髪の女性以外は、バツが悪そうに顔を伏せていた。


「それでもわっちはユウナの凄さを知っている!」

「簡潔に言うと?」

「ユウナは風紀員では協力関係。そこに君の力を貸して欲しい」


 風紀員長は手を差し出してくる。力を貸すならば手を握れって事か。

 ボクは何一つ迷う事もなく手を握る。

 風紀員長は握り返してくる。そのまま少しの間、手が繋がった状態。

 するとユウナさんがこちらに近付き、勢いよく腕を振り上げ、ボクらの腕にチョップをしてきた。


「いっ痛いな! 何をするのユウナ?」

「別に……」


 ユウナさんは顔を背けていた。どうしたのかは分からないが、何となく怒っているような気がした。

 確証はない、ただの勘。

 ピンク髪の女性が咳払いをし、空気が変わった。

 まるでタイミングを見計らっていたようだ。

 だがおかげで助かった。流石にあの空気のままだったら気まずい。


「さてとここでお開きにしようね。リステリは新しいクラスに向かいな」

「クロ、君だけはまだここに残ってね。他の奴らは見回りに行って来い!」

「はい!」


 風紀員たちは立ち上がり、急いで部屋から出ようとしたが、一向に外に行けてない。

 それを見て風紀員長は溜め息を吐き、ピンク髪の女性に目を向けた。

 反応するように手を合わせると、空間は縮み、風紀員は外に出ており、ボクも扉近くまで居る。

 出れた事が分かった風紀員は、急ぎ足で向かっていた。

 ユウナさんも部屋を出た、ボクに手を振って、静かに消えていた。

 部屋に残されたのはボクと、風紀員長にピンク髪の女性。

 何か言われるのかとビクビクしていると、何処からか椅子を出してきた。


「まぁ取り敢えずそこに座って」


 言われるがままに座ると、また何処からか机が出てきて、机の上には紙が並べられている。

 その紙の内容に思わず驚愕してしまう。

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