第17話 エリート様の登場!!
まるで王子様のご登場だ。音も気配も一切感じなかった。
一体誰だ? こいつ、ユウナさんが抱えられているのに、ジタバタと暴れ解かれる。
青髪の少年の腕からユウナさんが離れ、青髪の少年は少し不服そうにしていた。
ユウナさんがトコトコと、ボクの傍にまで来る。
青髪の少年がこちら凄い形相で、睨んできた。敵対心剥き出しだ。
「余所見しているんじゃねぇよ!」
「邪魔だ」
青髪の少年の冷酷な声音が、耳に響く。それと同時に、ガラの悪い男が吹き飛んだ。
今何が起きた? 攻撃したのは分かる。
魔法ではあるだろう、それでも魔力が一切見えなかった。
感じる事もできなかった。
「ねぇクロ君、あの人には気を付けて! この学園では黒虎のレベルだから」
うぅ!? ユウナさんの一言に思わず、絶句をしてしまう。
黒虎!? 学園の中でもトップクラスの実力者。あの青髪の少年が何年生か分からない。
もしボクとユウナさんと同じ、学年だったらこれから化けるだろう。
でもあの青髪、何処かで見た気がする。
髪と目の瞳が同じ色だ、やはり見覚えがある。全く思い出せないが。
それでも黒虎だ、警戒する事に損はない。
「なぁリステリ前から言っているだろ?」
え? いきなり喋ったかと思えば、話しの内容も意図も不明。
こいつ一体何が目的だ? ユウナさんを抱えて助けた。
それで今の発言、何か深い関係性でもあるのか?
「僕の婚約者になって、僕のサポートに回れ!」
婚約者? え? 青髪の少年の言っている事が不明だ。
ユウナさんはどう思っているんだろ? 顔を覗き込んでみる。
ユウナさんの表情が今まで、見た事ないくらいに不快そうにしていた。
あ、うん、これ深い関係性とかではない。
ユウナさんがただ単に嫌っている。
「前から言っているでしょ! 嫌だよ、私は君の婚約者なんかにならない」
ユウナさんの声が空間に響く、さっきまで黙っていた周囲の人間が、コソコソと何かを言い出した。
そこで有名な家系の名前が出る。
その名前を聞いて、ボクは青髪の少年に感じていた物。それが解消された。
真っ青な青い髪に同色の瞳が特徴の家系、フォスト。
持ち前の頭脳と優れた洞察力で、ユーグリアに勝利を届けた軍師。
ヒュウガとリステリの陰に埋もれた名家。
昔、パーティーで一回だけ拝見した事がある。確か若き鬼才の軍師、そう呼ばれていた。
まさかこの学園で再び、出会すとは思ってもいなかった。
ある事は頭に過ぎる、もしフォストがボクを思い出していたら? 考えただけで身震いがする。
「だったらそこの執事を殺せばいいのか?」
「えっ。く、クロ君は関係ないよね!?」
「今動揺したな? そいつを消せば手っ取り早い」
うわぁー話しが勝手に進んでいく。ボクの尊重とか一切ないやん。
いつもの事だからいいか。問題はユウナさんを困らせた奴。
フォストの方に体を向けると同時に、自分ができる力での圧を掛ける。
フォストは特に何も感じてない様子。それ所か魔力の流れが円を描いている。
凄いなと思うと同時に腹立たしい。
「何だい執事君? 僕とやる気かい?」
「ボクは命令にない限り、貴方とは戦わない。だけどあんまりお嬢様に迷惑を掛けるならば、全力で潰す」
「流石風紀員に選ばれる奴の言う事は、僕たちと違うな!」
一々感に触る言い方。これは挑発か? 敢えて挑発に乗って見る? その選択肢もある。
フォストの言葉に感化されたのか。ボクに対して貶す言葉が飛び舞う。
フォストはニヤニヤと笑みを浮かべていた。
これがお前のやり方──流石だな鬼才の軍師。
言葉が飛び舞う中で暴言も入っている。
本当に見事だよ、普通だったら動揺したりして、襲い掛かる。
そこでフォストが返り討ちにする。いいシナリオだ。
フォストの為の最高のシナリオ。
でも悪いなぁボクは、そんな分かり易いシナリオには乗っからない。
暴言? 貶し? それが一体どうした? ヒュウガで散々受けてきた。このくらい屁でもない。
「どうした? 挑発は終わった?」
「執事君、メンタルどうなっているの?」
フォストはボクの顔を見て、ドン引きしている。
ボクは別にメンタルが強い訳ではない。ただ何も感じなくなってきた。
フォストは右手をゴソゴソと動かし、何かをするのが分かった。
詠唱なしで魔法を撃つ気か? 念の為に反撃の構えを取る。
と、考えた時、フォストの右腕を捻り上げる人物がいた。
背丈はボクと同じくらい、黒衣のローブがフォストの右腕を掴んで捻っている。
その時始めて、ボクはフォストの魔力が見えた。
五大元素のどれでもなく雷。稀にいる五大元素が、組み合わさりできる魔力。
ガラの悪い男が倒された仕組み、それは目に見えない雷魔法。
「ちっ! 離せぇ!」
フォストは右手を雷で弾いた。すると黒衣のローブのフードが落ちた。
思わず見惚れそうに、なる程の艶のある銀髪。
真っ赤に燃えるような真紅の瞳。
端正で綺麗な顔立ちをしている。一見女子にも男子にも見える、中性的な顔。
その姿を見て、フォスト以前に他の生徒の顔色が悪くなっていく。
ユウナさんもその一人だ。どうやら目の前にいる銀髪の人。この人は学園で有名人って所だろ。
「何であんたがここにいるんだ!?」
「別にわっちがここに居っても、可笑しくはないだろ?」
「いや驚きですよ! 普段顔を出さない。あの神出鬼没の風紀員長が現れるなんて!」
「ユウナぁ君、見ない内に生意気なったね?」
ユウナさんがボクの後ろに隠れる。
「空色の髪に緑色の瞳を持つ少年。君が新しい風紀員の一人だね、よろしく!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます