第16話 クラス発表

 何一つ共通点がないと思われる。

 いや正確には魔帝の子孫には当たる、だがヒュウガで魔帝の存在を、聞いた事もない。

 色々な書籍とかを読んだ事があるが、魔帝の存在もなかった。

 まずユーグリアに伝説的な魔法師、それもボクは初耳だった。

 執事長から渡された魔道具の時も、理解ができていなかった。

 だけどユウナさんの説明で、魔帝については理解した。

 ただ関係性は血筋以外ない筈。


「ボクとその魔帝の関係性なくないですか?」

「一見するとない。どちらかっていうとリステリにある」


 そうだ、一番の魔帝の関係性としてはユウナさん。

 代々と魔帝について伝わっているし、魔帝に愛された魔道具。

 それだって実際にある、今はボクの手元にある。


『それでもクロ、君が昇格戦で出した魔法の威力。それに異常な程に魔力を放出している魔道具。その二つが魔帝の秘められた力と推測している」


 理事長の言っている事は的を得ている。

 ボクの突然として現れた魔法に、化け物みたいな魔道具それに血筋。

 もしボクに魔帝の力があれば、ユウナさんの実績になれるだろうか。

 それならばこのまま魔帝の力を、胸がこれで何度目か分からない程、ドクン、ドクンと打つ。

 何かに体が支配される感覚。表現するとしたら強大な、力が体を覆い支配下に置こうとしている。

 ダメだ、このままだと何かに支配される。


「クロ君大丈夫? 顔色悪いけど?」

「ゆ、ユウナさん?」


 ユウナさんの声でボクの体は、まるで解放されるように軽くなった。

 今の一体何だった? 魔帝の力を欲しった瞬間だった。

 体が強大で手に負えない力に、支配されそうになったのは。

 魔帝の力は本当に存在し、普通の人は制御できない気がする。

 いや……一人だけできると思う人物がいる。

 ヒュウガの長男、シン。

 ヒュウガの歴史の中で史上最高傑作。

 並外れた魔力量に五大元素のを持っている。

 彼奴ならば魔帝の力を所有しても、逆に支配をしそうだ。

 でも、もし彼奴が魔帝の力を持った場合、独裁が始まる。


「あの魔帝の固有魔法と魔力って、何ですか?」


 ボクがずっと頭に残っていた事、それを疑問を解くように言葉にだした。


「固有魔法は未だに不明。魔力は判明している」

「それは何ですか?」

「無限さ」


 魔力が無限? 五大元素ではなく無限? 一体どういう事だ。

 理事長は追加で情報を語った。


「五大元素と違う魔帝だけの魔力。五大元素の全てが使え……」


 何となく理解はできた。五大元素より優れ、相手の魔法や魔力を消せる。

 対特化魔法師の魔力ともいえる。

 だからこそ伝説の魔法師かもしれない。


「結局ボクはどうすればいいんですか?」


 理事長はボクの言葉に考えるように、表情を曇らせる一方。

 魔帝の力を秘めているとすれば、ソロモンはボクをどうする気だ? 考えられる可能性。

 それは魔帝の力を無理矢理にでも引き出し、利用しユーグリアに貢献。

 ボクは生きる兵器にされるだろう。

 そんな事はごめんだ、もし使うとしてもユウナさんの為。それ以外は考えられない。

 理事長が考えられる可能性を語ったら、ボクは多分利用される。

 意志を関係なしだろうな、今の実力では理事長には勝てない。

 戦闘での経験値、魔力の流れを考えれば、余計に勝てる可能性はゼロに等しい。


「結論から何ともいえない。とにかくクラス発表待ってくれ」


 そういい理事長は医療室から出て行き、ボクとユウナさんの二人が残される。

 結局何だったんだ? ただ魔帝の説明をされたに過ぎない。


「取り敢えず家に帰ろうか」

「はい」


 ユウナさんが成すままに、ボクらは学園を後にする。

 リステリ家に着くと、執事長が出迎えてくれた。

 ユウナさんは自分の部屋に行ったが、ボクは執事長に止められる。


「クロさんはちょっとこっちに来て下さい」

「了解です」


 執事長と共にある場所に向かう。執事長室ではなく、特訓部屋に入る。

 きっと執事長は呼んだって事は、何か理由があるのだろう。

 この部屋に来るのは昨日ぶりってか、最近毎日来ている。

 この部屋から魔力を充満しているのは、始めて来た時から感じていた。

 だけど魔力の流れを感じ、見えるようになり、この部屋の流れが目に入る。

 決して綺麗に回っている訳ではない。

 だけど、様々な乱れで保っている。不思議なくらいに。


「執事長ボクに何か用ですか?」

「クロさん魔法を使ったらしいですね。リフドルから聞いてます」


 執事長の言葉の中にボクは、聞きなれない名前が合った。


「リフドルとは?」

「あっ? なんだ彼奴名前を語らなかったのか」


 執事長はブツブツと一人で、何かを呟いてる。


「ソロモンの理事長の名前ですよ」

「そう何ですね、全く名前ってか自己紹介なかったですね」


 ユウナさんも理事長本人も、名前には触れなかった。

 魔帝に関しては触れたのに、あの人自分の名前は一切語らなかった。


「あのバカ名前を言ってねぇのかよ、いい歳して」

「執事長は理事長と知り合い何ですか?」

「ワタシと彼奴はソロモンの同期ですよ。古い仲で腐れ縁」


 執事長は呆れながらも少し楽しそうだ。

 でも意外だなぁ執事長と理事長が、ソロモンで同期……ちょっと待て? 今ボクが魔法を使ったのを知っていた。

 しかもそれを理事長から聞いた。

 実は理事長がボクに魔帝を、見出したのは執事長と話したからか? それだと点と点が通る。


「どうかしましたかクロさん?」

「執事長は何を企んでいますか?」

「何も……君に魔帝の剣を託したのは、ちょっと訳はあるかもですが」


 今軽く濁されたな、ボクの推測は合っている可能性が高い。

 この魔道具は本来誰か、所有者がいるのではないか? 学園で体が支配される感覚の時から、ずっと頭の中に残っていた。

 この魔道具には#本来の所有者__・__#がいる。


「執事長、魔帝の事はユウナさんから聞いてます。これには本来の持ち主がいるのでは?」


 ボクの言葉を皮切に、執事長の空気が変わり部屋の魔力が更に乱れる。

 この一言は執事長が悟られたくない事。

 つまり本当に持ち主がいる。

 もしボクの前に魔道具の所有者、そいつが現われればこれは奪われるだろ。

 本来はそんな事を考える必要はないかもしれない。でもボクは知りたい。

 これの本来の持ち主は誰なのか。


「執事長誰ですか? こいつの本来の持ち主は?」

「まさかこんなに早く気付かれるとは、予想外でした。それはまだ決まってないですが、ヒュウガの長男に受け継がれる予定でした」


 やはりか認めたくはない。それでもこれを唯一、使いこなせるとすれば彼奴だけだ。

 シンはヒュウガの最高傑作以前に、ユーグリアに置いて、現代の魔帝といえるだろう。


「それを本来の所有者になる方に返しますか?」


 執事長の問いにボクは口角を上げた。

 すると呆気に取られたような、表情をしている執事長。

 多分今ボクは穏やかな笑みを、浮かべているだろ。

 自分でも不思議なくらい、穏やかな顔をしている。

 もう決心は特に付いてる。あんな奴に魔道具は渡さん。

 それにこれを使いこなせば、彼奴にだって勝てる可能性はある。

 ユウナさんの右腕で最強でいる為、それには彼奴は絶対障壁になる。


「返す訳ない。貰った時にも言いましたが、こいつを使いこなします」


         ◇

 無駄に広い空間には魔力が漂っている。

 真ん中に一つの黒い線が入っている。

 大きく二つに色が分かれている、白と黒。

 これはクラスの境界といえる、白い方は高く、黒い方は反対に低い者。

 そして今ボクらは真ん中に立っている。まるでそれを囲うように、椅子が設置されており、こっちを品定めをするように見ている。

 壇上の上には理事長が立っている。

 ニヤニヤと不気味な笑みだ。


「やぁやぁ集まってくれたね諸君。それでは本題に入ろうか。ユウナ=リステリとクロのクラス分けを発表する」


 ユウナさんの体が少しピクッとした。それを見て座っている連中は笑っている。

 あぁ不愉快だな! 地面に魔力をぶつけるか? コンコンと音が空間に反響する。

 すると笑っている連中、スゥッと静かになり静寂が起きる。


「結論からいおう、リステリを赤玄に昇格。クロは不問とする」

「なんでクロ君は不問何ですか!」


 理事長の言葉が言い終わると、同時にユウナさんが講義の声を出した。

 理事長と周りの連中の視線が、変わった。

 それもその通りだ、理事長に反発を起こすって事は、この学園に逆らうのと同義。

 本来ユウナさんは嬉しい筈だ、最底辺から中間に上がったのだから。

 でも決して喜んではいない、それは彼女の優しい性格が許さなかった。

 ボクのクラス不問が、ユウナさんは許せなかったのだろ。


「ワシに文句があるのかリステリ?」


 淡々と言っているがその一言には、相当の圧が掛かっている。

 ユウナさんの体が震え始める。今にでも恐怖で竦みそうになっている。

 その証拠に魔力の流れが波のように、乱れている。

 さてと一体どうした物か、どうやってユウナさんを庇えばいい? いい言葉が全く思い付かない。


「文句はありますよ! クロ君の不問が意味が分からない!」

「あの? ボクってこの学園に入れないんですか? クラス不問だと」

「いや君は入学して貰う。クラス不問の風紀員として」


 次の瞬間、周囲の連中はザワザワとし、ユウナさんはボクの手を掴む。

 その顔は恐怖から解放され、希望しかないって感じだ。

 顔が近い、顔を遠ざけようとした。だけど体が動かなかった。

 自分の意志とは反対に動かない。

 そんな時、頭が風紀員という単語、それがぐるぐる回っている。


「風紀員って何ですか?」


 頭にぐるぐる回っていた事を、自然と言葉に出していた。


「あれ? ワシ教えてなかったけ?」

「聞いてねぇよ」


 理事長は顔を逸らす、思わずかユウナさんは吹き出す。

 釣られるようにボクは笑った。

 周囲の人たちは信じられないような、表情をしていた。

 だけど、これは全く面白い、さっきまで威厳を張り偉そうにしていた。

 それなのに今は顔を背けている。

 あぁ面白く、愉快な気持ちになれる。

 だけどそろそろ本題に、入って欲しい物だ。


「ンンッ! 風紀員は学園の秩序を守る集団さ」


 尚更ボクが選べる意味が分からない。

 何故白麟を飛び越えて風紀員? 


「クロ君凄いじゃん! 風紀員なんて、普通はなりたくてもなれないよ?」


 ユウナさんは自分のように嬉しがっている。でもそれがどのくらい凄いか、自分では全く理解してない。

 いやそもそも! 説明受けてなかったし、仕方ないよね? 自分で自問自答して何か悲しくなってきた。

 理事長は上の空だった、あの人本当にこの学園のトップかぁ? ちょっとポンコツ。


「まぁいい、取り敢えず解散だ」


 そう言い残して理事長は、魔力の粒子となり消えた。

 その場に生徒だけが残された、理事長が消えたと分かったのか。

 ガヤガヤと騒いでる、中にはユウナさんの昇格に文句の声が聞こえる。

 またボクの風紀員に対して、納得のいかない連中もいる。

 まぁ無理はないか、たった一日で見知らぬ奴が、風紀員になり、または底辺が中間に昇格した。

 納得がいかず不満だらけなのは、不思議ではない。

 でもこれが現実、嫌でも認めて貰う。

 すると、ボクより十センチ以上、背丈が高いガラの悪い男が、目の前に立ち塞がった。


「貴様が風紀員? ふざけるな!」


 いきなり現れて怒声を浴びた。

 面倒くせぇなこいつ、いきなり怒声上げてきた。


「これが現実だ認めて下さい」


 淡々と声色を低くし言う。ボクは敬語使うのは基本はやめない。

 だけどユウナさん以外には冷たくする。

 次の瞬間、迫力がある拳が振り降ろされる。

 避けようと思い、ユウナさんに目をやるが青髪の少年がユウナさんを抱えていた。


「はぁ!?」

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