第10話 入学の準備

「ねぇクロ君。どうしてあんな事になった?」

「ボクはただユウナさんの期待を応えたかっただけです」

「期待か……あれほぼ冗談のつもりだったのにな。でもありがとうね」

「御礼を言われる立場ではありません。ボクは執事長に負けてしまった」

「ん? 何か勘違いしているぽいけど? 君の勝ちだよ」

「は、はい!?」


 ユウナさんの言葉で起き上がる。すると頭にチョップを喰らう。

 ユウナさんは不機嫌そうな表情をしてる。

 あ、命令破ってしまった。どうする戻るか? いや流石にこれ以上はまずいな。

 大人しくこのままでいよう。

 それでも少しユウナさんから距離を置く。そしてユウナさんの真正面に座る。


「どういう事ですか?」

「いやどうと言われても? 君はあの時勝ったんだよ……」

 

       ◇


 ユウナさんの話しからすると、ボクは壁に衝突し倒れ込んだ。だけど数秒経った頃に立ち上がり、執事長を殴り飛ばし、気絶をするように倒れた。

 ボクが起きる数分前まで、執事長も気絶していたらしい。最後の一発で勝負に決着が着いた。

 待ってこれはどうなるんだ? 結果的には倒した事になる。

 つまり学校に行く許可を貰えたのか?


「あ、クロ君、レードさんが後で例の部屋に来いって」


 例の部屋、執事長とボクが特訓に使っている部屋の事。早々に勝ったって思い込んでは駄目だ。続きの可能性が高い。

 身を引き締めていかないと。

 ボクは立ち、服についた砂ぼこりを払う。黒い色の執事服の為、汚れは目立つ。ある程度払えたから向かう事にした。


「クロ君。レードさんとの話しが終わったら私の部屋に来てね」

「……分かりました」


 今日は本当に忙しい一日だ。

 でもまぁ主人の命令、笑顔を守る為にはいたしかたない事。

      

       ◇


 魔力で構成された部屋の前にいる。そこにはこないだまで、なかった看板が合った。

 看板には特訓部屋と書かれていた。

 扉を開け、中に入ると、今までと比にならない程の魔力が充満している。

 部屋の真ん中には執事長が座り込んでいる。目を瞑っていた。一歩部屋に進む。


「待っていましたよクロさん」


 さっきとは違い穏やかな表情に声音。その声と表情に一瞬、気を抜いてしまった。すぐに気を引き締める。今の執事長は敵対心を持っているかは、定かではない。油断は命取りになる。

 警戒をしろ、悟られない程度で臨戦体勢を取る。一瞬でも気を抜かない。


「そんなに警戒しないで下さいよ。まぁここに呼ばれたら無理って話しですね」

「何の為に呼び出したんですか?」

「簡単な話し。ワタシの完敗です。君はワタシの予想を上回った」


 予想を上回ったか、これは油断を誘う為の言葉の可能性。


「正直悔しい。君との勝負で負けるつもりはなかった。でも君の意志は強かった」

「執事長要件を言って下さい」

「ユウナ様をお守りを下さい。入学を許可します」

「本当ですか!? と言いたいけど条件付きですよね?」


 執事長は笑みを浮かべ、腹を抱えて笑い飛ばしていた。いつもの礼儀正しさも品性も今は全くない。

 これがこの人の素なのか? 流石に演技ではないと思う。

 もしこれが演技だったら恐ろしい。



「はっはっ、こんな短期間でワタシの事理解されているとは──条件は学校で最強に成れ」

「それは何の為にですか? リステリ家の保身ですか? それとも執事としての誇りを?」

「そんな嫌味たらしく言わないでくれ」


 執事長は立ち上がる動作をし、奥にある壁に向かって歩きながら、ボクと話しを進める。


「その全てとも違う。ユウナ様の立場を考えても、君は必ず最強にならないといけない。それがユウナ様を守る最短であり効率的な事」


 なるほど的を得ている。学校に行って守るだけでは駄目だ。もし交流際が合った時どうする? 今のままだとユウナさんの立場を落とす。

 それならば、学園を踏み台にしても最強になる。リステリの執事──右腕としてもだ。

 決心を固めていた。その時──布で隠された棒状の物を差しだされる。

 執事長の表情は真剣であり、固い意志を感じた。

 受け取る。すると体内に不思議な感覚が襲い掛かる。直後痛みに襲われた。

 その痛みは今までの比ではなく、表す事はできない。

 体の細胞一つ一つに入り込む感覚。


「はぁはぁ……」


 布で隠された物を受け取ってから、膝を付いてた。意味が分からないくらいに息苦しい、一歩動くだけで痺れる。

 くそっ! 一体何が起きているんだ? まるで力に呑み込まれるようだ。


「クロ君。それはね魔道具であり魔剣何です。それは曰く付きのぶつ


 魔道具? 魔剣? 執事長の言っている意味が分からない。自分自身で確かめる。

 痺れる体の力を振り絞り布を取る。

 そこには!?


「それは名を封印されたぶつ。かつてとされています」

「つまりこれを使いこなせって事ですね?」

「ええ、君にならば使いこなされると思っている」

「正直──とんでもない化け物を渡してくれたなと思っていますよ」

「きついか?」

「きついすよ。でもこれすら使いこなしてボクは最強になる」

「その意気です。それはワタシからの入学祝いです」


 執事長はそういうと手を差し出してきた。その手を取り、ボクは立ち上がる。

 次の瞬間、頭に鋭い痛みに体がフラフラしてしまう。一瞬でも気を抜けば意識を持っていかれそうになる。

 何とか踏み止まり部屋から移動する。

 部屋をする時、執事長に会釈をして抜け出す。

 後はユウナさんの所だ。

 急ぎ足でユウナさんの元に向かう。

 ユウナさんの部屋に入ると、色々と物があり、何だろうと思った。ボクを察してか淡々と説明をしてくれた。

 学園に必要な物に制服。そして刀剣袋が合った。

 ユウナさんは知っていたんだな。ボクにこの化け物を渡される事を。それにしてもよくこんな短時間で必要品を集めれた物だ。と感心をしていると。


「これ全てね。いざクロ君が入学する時の為に密かに用意していた」

「準備万端な事でー」


 少し呆れてしまっている自分がいる。

 それでもユウナさんと執事長には感謝をしている……。

 今日は本当に疲れる一日だった。

 ベットに横たわりながら感傷をする。

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