第52話 最強の援軍
「レベリアラ!?」
「レベリアラ嬢!?」
レベリアラを見た父のアルハイクとルーベンシャが、驚きのあまり叫ぶ。
危険な戦場に、いるはずのない彼女が現れたとなると当然だろう。
「そのまま前進!」
そのレベリアラを乗せた自走船が鬼達へ向かう。
だが、その前に穴に落ちた鬼がしらが起き上がる。
「あんたも邪魔よ!」
そう言って、設置型のボウガンの矢を撃つレベリアラ。
その矢は空を進み、鬼がしらの顔へと直撃する。
すると、鬼がしらが手を滑らすように穴へと再び落ちる。
「まず一匹。」
鬼がしらが落ちた穴を横切る自走船。
そのまま、次の鬼へと目指す。
「レベリアラ嬢が危ない。助けないと。」
「いや、何かするつもりだぞ?」
ガルシアの言葉通り、レベリアラが次の矢を装填する。
そして、上空へと矢を放つ。
その矢が鬼鳥竜へと直撃すると、もがくように落っこちる。
「一体何をするつもりだ?」
「さぁ。って、危ない!」
アルハイクの視界の中で、レベリアラの乗る自走船に草食鬼竜が襲いかかる。
だが、それに対してレベリアラが新たに装填した矢を顔にぶつける。
そして、そのまま草食鬼竜が怯んだ間に横を抜ける。
「こっちよ!」
方向転換した草食鬼竜が自走船を追いかける。
だが、更にもう一発の矢が顔に刺さる。
すると、もがくように暴れて顔から地面に落下。
直後、爆発と共に穴が開き草食鬼竜が落ちる。
「二匹目ね、次よ。進路を右へずらして!」
レベリアラの指示で自走船が右へとずれていく。
そして、水鬼竜に追われる自走船と入れ替わるように前へ。
その際、レベリアラが矢を放つ。
「来るわよ! 回り込むように全速っ!」
レベリアラの言葉通り、振り向きざまに水鬼竜のブレスを放つ。
そのブレスは、地面を砕きながら上へ。
自走船を掠めるように飛んでいく。
その時、水鬼竜が砕いた地面が爆発する。
「かかったわね。」
爆発したのは、水鬼竜の真横の地面だ。
爆発と共に穴が開き、水鬼竜の上半身が落ちる。
更に、首が地面に落ちた事により再びの爆発。
土が穴へとなだれ込み、水鬼竜を埋める。
「三匹目!」
嬉しそうに、レベリアラが拳を上げる。
罠が通じた事が嬉しいのだろう。
しかし、そんなレベリアラへと鬼鳥竜が飛びかかる。
「横だ! レベリアラ!」
「え?」
アルハークの叫びにレベリアラが振り向いた。
レベリアラに、鬼鳥竜の大きな影が落ちる。
それでも、レベリアラの目付きが戻る。
「知ってるわ…よっ!」
丁度、設置し終えたボウガンの矢を放つ。
それと同時に、自走船が全速で回避する。
それにより、鬼鳥竜が再び地面へ。
すると、爆発と共に地面に穴が開き鬼鳥竜が落ちる。
「四匹目。残念だったわね。」
レベリアラは、鬼鳥竜が来るのを見ていた。
その時に、水鬼竜のブレスを回避したついでに鬼鳥竜を罠がある方へと誘導していたのだ。
これで、全部の鬼が穴へと落ちた。
「おぉ、やったぞ! 鬼どもがっ!」
「だが、落としただけじゃあ意味がないぞ。」
落ちたのなら出ればいい。
そんな事が出来ない鬼達ではない。
実際に、鬼達が穴から這い上がる。
だが、レベリアラは笑う。
「そんな事、知ってるわよ。」
レベリアラがぼそりと呟いた。
その時、それぞれの罠から線が引かれていく。
そのまま線は、地上を走り伸びていく。
「な、何がっ。」
驚く一同の前で、線が罠同士の真ん中にて合流する。
直後、引いた線から蔦が飛び上がる。
「これが私の…。」
そして、その蔦が縮むように短くなっていく
それと共に、鬼達も引きづられように寄せ集められる。
「最高傑作よ。」
暴れる鬼達だが、無慈悲にも蔦の収束は止まらない。
そして、そのまま鬼同士が直撃する。
ぶつかった鬼達は、弾きあって四方にすっ飛ぶ。
「なんだあっ!」
予想外の事で、一同の理解が追いつかない。
そんな一同の前で、鬼達はもがいている。
そして、近くの邪魔な鬼達と殴り合う。
「何て事だ。」
蔦を解こうとするも、お互いが邪魔をして解けることはない。
その中から鬼鳥竜が飛び出すも、引きずり降ろされてしまう
その勢いで、ほかの鬼も引きづられ衝突。
「なんて事だ、あの鬼達がこうも簡単に止まるとは。」
「やりおった。レベリアラ嬢が鬼達を制圧しおった。」
大人達がいかなる策を講じても、鬼達を止める事が出来なかった。
そんな鬼達が、こうして身動きが取れなくなっているのだ。
それでも鬼達は、蔦を振りほどこうと暴れる。
しかし、お互いが引っ張り合って動けていない。
「鬼を止められるのは同じ鬼だけ。一匹だけ違うようだけどね。」
鬼鳥竜を除く三匹の鬼が引っ張りあってはぶつかるを繰り返している。
そんな中、鬼鳥竜が無抵抗に引っ張られている。
だが、鬼達は力だけではない。
草食鬼竜の体が赤に染まる。
「なっ、レベリアラ! 離れろ!」
アルハイクが叫ぶと、草食鬼竜の体から体液が飛び散る。
それでも、レベリアラの顔は変わらない。
何故なら、体液が飛んだ瞬間に空へと燃え上がったからだ。
「今度はなんだっ!」
レベリアラが仕掛けた罠は終わらない。
燃え上がった炎は、草食鬼竜全体へと広がり体を包む。
更に、蔦へと移り他の鬼へと広がっていく。
それにより、鬼全体が激しく燃え上がる。
「罠が終わりなんて言ってないわ。ざまぁ見なさい。」
体を燃やされて暴れる鬼達。
しかし、炎が消える事はない。
もはや、一同は見ているだけしか出来ない。
「まさか、なにか仕込んでたのか?」
「あぁ。罠に落ちた際に滑るように落ちてたが?」
罠に仕込んでいた物。
それは、発火性の液体だ。
穴に流れ込むように、罠に仕込んでいたのだ。
「滑る上に燃えてくれる。これ以上の物は無いわね。私が考えたんじゃ無いけど。」
熱を操ると聞いて、燃えやすく滑る液体を選んだのだ。
それが、鬼達の体を焼いているのだ。
それでも、耐えながら立ち上がる鬼達。
「くっ、これでも無理か。」
「当然よ。そもそも、外的損傷を与えようとは思ってないもの。でも、既に出来た傷には染みたでしょ?」
人から受けた傷は無くとも、鬼同士で着け合った傷はある。
そこへのダメージはあったはずだ。
しかも、燃えたはずの蔦が束ねられたゴム状の物へと変わっている。
「なんとか蔦だけ燃えてくれたようね。簡単には逃がさないわ。」
蔦の中には、束ねられたゴム状の紐が隠されていたのだ。
しかも、蔦だけが燃えるように計算していたようだ。
「さぁ、勝負はここからよ!」
そう言って、レベリアラがボウガンの矢を設置する。
まだまだ戦う気のようだ。
それを見たガルシアが大きな声で笑う。
「ふ、ははっ、あははははっ! いいのかお前達! 俺達が苦しんだ鬼どもが嬢ちゃん一人に弄ばれているぞっ! 悔しくないのかっ!」
鬼達の戦いに手も足もでなかった。
そんな鬼が、たった一人の少女に苦戦しているのだ。
その事実は、ハンター達を動かすには充分だ。
「はっ、そんなの決まってらぁ。」
ハンター達が自走船から飛び降り走り出す。
そして、身動きの取れない鬼達へ襲いかかる。
それを見たレベリアラも動く。
「そう来なくっちゃね。私達も行くわよ!」
レベリアラの指示で自走船が動き出す。
人類と鬼達の命をかけた戦いが始まる。
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