第50話 広がる犠牲
グオオオオオオオ!
まず動いたのは草食鬼竜。
地面の割れ目に頭を埋めると、勢いよく跳ね上げる。
その直後、割れた地面に沿って炎の壁が現れる。
その勢いで地面の割れ目も大きくなり、避難民を飲み込んでいく。
ウガアアアアアアアッ!
それを避けた鬼がしらが避難民ごと地面を叩く。
それにより、割れ目に落ちた避難民が押しつぶされていく。
さらに地面が浮き上がり、周りへと広がる。
キシャアアアアアアオオオオオン!
浮き上がる地面を、水鬼竜がブレスで破壊する。
そのまま地面へと潜り渦を作る。
その渦に飲み込まれていく避難民達。
しかし、鬼達は下がって避ける。
同じく自走船も下がっていく。
「避難民が!」
「くそっ、巻き込むのもお構いなしか! 止めるぞ!」
避難民がまるでいないかのように暴れる鬼達。
鬼達の一挙手一投足に、多くの避難民が命を落としていく。
ギルドとしてこれ以上の犠牲は許せないのだが。
ウガアアアアアアアッ!
鬼がしらが地面を叩く。
それにより、地面が浮かび上がっていく。
そして、自走船の進む道を防いでいく。
「ぐうっ、周りこめ! 何としてでも止めるんだ!」
これでは近づく事すらできない
なので、入り込める道を探していく。
その時、鬼鳥竜が強くはばたく。
クエエエエエエエエッ!
空へと逃げていた鬼鳥竜が風を落とす。
それにより、あたりの空気が濁っていく。
鬼鳥竜の粉が風に混ざっているようだ。
「鬼鳥竜の粉っ! くそっ、逃げろ!」
こうなってしまえば近づけない。
浴びてしまえば、止めるどころではなくなる。
そうして逃げる間にも、鬼鳥竜が粉を撒き散らす。
「皆っ、逃げろ! その粉だけは浴びるな!」
ガルシアが叫んで呼びかけるも、その粉が広がる速度は早い。
近くにいた避難民達は、雄叫びを上げながら頭を抱える。
そして、その避難民達が土ごと鬼がしらに掴まれる。
ウガアアアアアアアッ!
その土ごと掴んだ避難民達を振りかぶると、鬼鳥竜へと投げた。
空へと散らばった避難民達の一部が、絶叫しながら鬼鳥竜へとぶつかっていく。
しかし、鬼鳥竜は華麗に避ける。
「やめろーーー!」
ガルシアが叫ぶも、それで辞めるような相手ではない。
さらなる避難民を掴むと、再び鬼鳥竜へと投げる。
外れた者は、他の避難民の頭上へと無差別に降ってくる。
ウガアアアアアアアッ!
キシャアアアアオオン!
それでも、更に掴んだ避難民を投げる鬼がしらへ。
しかも、そこに渦から飛び出した水鬼竜が水のブレスで襲いかかる。
クエエエエエエエエッ!
それを滑空しながら避ける鬼鳥竜。
さらに、そこにボウガンの矢も飛んでいく。
「撃て撃てっ! 奴らを止めるんだ!」
鬼達へとボウガンの矢が降り注ぐ。
しかし、気にする素振りもない。
相手にする必要はないと思われているようだ。
「くそっ! アルハーク! 罠を!」
「無理です! こうも暴れられると、仕掛ける場所が掴めません!」
罠は一度仕掛ければ動かす事が出来ない。
それなのに、右往左往と動かれては仕掛ける場所が分からない。
出来るのは、こうしてボウガンを撃つことだけだ。
そんなハンター達を横目に鬼鳥竜が動き出す。
クエエエエエエエエッ!
そのまま頭上を周り、高度を下げる。
そうして、水鬼竜の後ろへ周って襲いかかるが…。
グオオオオオアアアアアアッ!
水鬼竜にぶつかる瞬間、草食鬼竜がとびかかる。
そのまま頭上からのしかかる。
その勢いで、地面へと叩きつけられる鬼鳥竜。
だが、そこに鬼がしらが迫る。
ウガアアアアアアアッ!
草食鬼竜を殴り飛ばす鬼がしら。
殴られた草食鬼竜は、鬼鳥竜から離れてよろめく。
グオオオオオオオッ!
だが、草食鬼竜も負けじと突進を与え鬼がしらを吹き飛ばす。
さらに、息を激しく吹いて一回転。
激しい爆発が、他の鬼を吹き飛ばす。
だが、それだけでは終わらない。
ずごおおおーーーーーん!
粉に着火して激しく放火。
その爆発による炎は全ての粉へと移り広がっていく。
「「「うわーーーーっ!」」」
全てを飲み込んでの大爆炎。
人も鬼も字面をも、全てを飲み込み焼き尽くす。
そして、爆炎はガルシアの所にまで燃え広がる。
「ぐうっ、今度はなんだ!」
「粉塵爆発か?」
「いや、それほどの密度はない。粉に何かあるんだろう。」
粉塵爆発を起こすには相当の密度が必要だ。
だが、向こうが見える程度の粉で起こるとは思えない。
ならば、粉に何かがあると考えるのが普通だ。
「燃えやすい素材という事か。」
「だろうな。それだけかもしれないが。」
「そうなると、最悪の組み合わせだ。」
鬼鳥竜の粉と草食鬼竜の炎。
これらの組み合わせで、いくらでも先程の大爆炎が起こるという事だ。
だが、それにより一つの活路が開かれる。
「だが、これでもう粉がない筈だ! 突っ込め!」
粉がなければ近づける。
しかも、浮いた地面も吹き飛び崩れている。
それに気づいたガルシアの指示で、自走船が動き出す。
目指すのは、炎で焼かれてもがく鬼達へ。
「我々も続け!」
それを見て、ガルシアの意思に気づいたストロークが叫ぶ。
それにより、他の自走船も動き出す。
それらの先頭を走る自走船。
その船首で、ガルシアが武器を構えて叫ぶ。
「突っ込めーーーー!」
自走船で鬼がしらへと突っ込みのしかかる。
そして、そこからギルド長が飛び込む。
「今が勝機だ! かかれ!」
ガルシアと鬼がしらの視線が交差する。
そして、鬼がしらの顔へと剣を振り下ろす。
他のハンターもまた同じように飛びかかる。
ウガアアアアアアアッ!
だが、鬼達もただではやられない。
のしかかる自走船とハンター達を、いとも簡単に振りほどく。
それでも、地面に叩きつけられたガルシアが立ち上がる。
「まだだ! 立って戦うんだ! 命ある限り!」
まだ動ける。
ならば、動くしかない。
避難民の犠牲を止める為に。
「かかれーーー!」
「「「おおおおおお!」」」
ガルシアが叫びながら走り出す。
それに合わせて、他のハンターも叫びながら走り出す。
「私らも手伝うぞ!」
「分かってます!」
ガルシアとルーベンシャもボウガンで応戦する。
それでもこちらはただの人間だ。
鬼達の一振りで吹き飛んでしまう。
「無事か! ギルド長!」
「ぐうっ、無事だ! まだ戦える!」
吹き飛ばされてなお立ち上がるガルシア。
他のハンター達も動けるものは立ち上がる。
だが、そこに鬼達が迫る。
「ギルド長! そっちに!」
「くそっ!」
どうやら、先に邪魔なハンター達を始末する事にしたようだ。
まるで、俺達の戦いの邪魔をするなと言わんばかりに。
それでも、ハンター達は止まらない。
「せっかくのチャンス。手放してたまるか!」
あまりの激しさに、今まで見ている事しか出来なかった。
しかし、今こうして立ち合えている。
引く選択などあるはずがない。
「死んででも殺す! かかってこい!」
迫る鬼がしらにギルド長が向かう。
それは、無謀な行動。
それでもギルド長は武器を構える。
交差する二人。
その直前、鬼がしらの顔が爆発する。
ウゴアアアアアアッ!
「な、なんだっ!」
もがくように怯む鬼がしら。
その顔は、激しい煙に包まれる。
しかも、それだけではない。
「どうなってやがる!」
あちこちから爆発と共に煙が上がる。
そして、鬼達の視界を奪っていく。
よく見ると、浮いた地面の後ろに小竜に乗った職員達がいる。
「無茶しやがるぜ。ほら、しっかりしろ!」
ガルシアの背後から声が聞こえてくる。
そこにいたのは、小竜に乗ったベージュ達。
丸い何かを手に持ち、ガルシアを見下ろす。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます