第44話 コングの鬼がしら VS ドラゴン
鬼ガシラとドラゴンの距離が一瞬にして縮まる。
迫る鬼がしらの腕と、ドラゴンの尻尾。
両者、雄叫びを上げながら攻撃を繰り出す。
ウグアアアアアアアア!
グオオオオオオオオオ!
それらがぶつかると、激しく弾きあう。
それでも、鬼がしらが反対の拳を振るう。
先手を取ったのは鬼がしらだ。
ウグオオオオオオオオオ!
雄叫びを上げながら、拳をドラゴンの顔へと叩きつける。
攻撃を受けたドラゴンが、後ろへと逸れる。
グオアッ!
しかし、すぐさま体勢を直し鬼がしらへと頭突きを与える。
更に、一回転して振った尻尾をコングの鬼がしらへと叩き込む。
それを受けた鬼がしらが吹き飛ぶ。
「鬼がしらとドラゴンが衝突。戦闘に入りましたっ。」
『頼むぞ。ドラゴン。』
鬼を止められるのは、もうドラゴンしかいない。
ドラゴンの勝利を願うギルド長。
そんなドラゴンが、倒れている鬼がしらへと飛びかかる。
グオオッ!
鋭い爪で、鬼がしら肩をしっかりと捕まえ抑える。
そうして動きを止めると、口から炎を溢れさす。
炎を吐く準備だ。
そのまま胸に溜めた炎を吐き出そうとするが…。
ウガアアアアアアアアッ!
コングの鬼がしらが、ドラゴンの顔を殴りつける。
その結果、口から放たれた炎が逸れて地面を焼く。
炎を逸らした鬼がしらは、ドラゴンを蹴りとばして引き剥がす。
そのままドラゴンは、地面へと倒れる。
そこに、起き上がった鬼がしらが飛びかかる。
ウガアアアアッ!
鬼がしらが拳を振り下ろす。
それに対して、起き上がったドラゴンが尻尾で横を叩いて逸らす。
更に、その隙を狙って炎を吐く。
ウガアッ!
それを受けた鬼がしらは、腕で防ぎながら後ろに下がっていく。
度重なる攻撃に耐え続けた腕に、炎など効くはずもない。
しかし、勢いまでは耐えられず体勢を崩してしまう。
その隙を、ドラゴンは見逃さない。
グオオオオオアアアッ!
炎を吐き終わったと同時に前に出る。
そして、鬼がしらへと胴の横から突っ込む。
それにより、更に体勢を崩す鬼がしら。
グアアッ!
更に、ドラゴンの攻撃は続く。
よろめく鬼がしらに、翼で勢いよく打ち付ける。
その勢いで、鬼がしらの腕の盾が解かれる。
そして、止めとばかりに追撃の尻尾を打ち付け吹き飛ばす。
ずがががががっ!
その攻撃を受けた鬼がしらは、背中から地面に落っこちる。
その際、鬼がしらの腕が黒い何かに乗っかる。
ウガアッ。
起き上がった鬼がしらが、その黒いものを見る。
鬼がしらと戦う前に、ドラゴンが投げ飛ばしたものだろう。
その黒いものの周りには、コングの群れが集まっている。
ウガッ。
ウガガッ。
コングの群れが、黒いものを撫でたり顔を寄せたりしている。
よく見ると、それは黒く焦げたコングの姿をしている。
恐らく、コングの群れの王だろう。
ドラゴンにやられて焼かれたようだ。
それを見たコングの鬼がしらの眼を細める。
そして…。
ウガアアアアアアアアアァァァァァァッ!
鬼がしらが、力強く吠えた。
無残にもやられた同族を見て怒ったのだろう。
吠えながら、拳を上げるとドラゴンに迫る。
グオオオオオオオオッ!
それを見たドラゴンが炎を吐く。
ウガアアアアアアアッ!
それに対して、鬼がしらが炎に拳をぶつける。
ガアッ!
鬼がしらの拳とドラゴンの炎が激しく衝突。
押し合う両者。
すると、拳が炎を押し始める。
そのまま拳が突き進むと、ドラゴンの顔に直撃する。
ガアアアアアアアアアアアアアアッ!
そこから足に力を込めて拳を前に。
勢いよく拳を振り抜き、ドラゴンを殴り飛ばす。
ずしーーーーーーん!
攻撃を受けたドラゴンは、地面へと落っこちる。
そこに、鬼がしらの追撃の腕が迫る。
しかし、ドラゴンが飛んでそれを回避した。
グオオオオオオオオッ!
避けたドラゴンは、鬼がしらへと炎を吐く。
だが、その前に鬼がしらが前に出る。
ウガッ!
狙いは、ドラゴンの尻尾だ。
炎を避けた鬼がしらがは、尻尾を両手で掴んで下へと振り下ろす。
グオアアアッ!
これには堪らず、地面へと叩きつけられるドラゴン。
起き上がろうと、ドラゴンが顔を上げるも鬼がしらが殴りつける。
それでもと、ドラゴンが炎を吐きつけるが…。
ウグアッ!
鬼がしらが首を掴んでズラした事により、横へと炎が逸れる。
そして、首を掴んだまま持ち上げる。
グオアアアッ!
暴れるドラゴン。
しかし、首ががっちりと捕まっている為に動けない。
それでも暴れ続けるが、鬼がしらが首を掴む腕に力を込める。
ウガアアアアアアアアアッ!
そのままドラゴンの首を握りつぶすと、地面へと叩きつける。
ずしゃあああああん!
立ち昇る土煙。
それが晴れた時に現れたドラゴンは動かない。
ドラゴンは、絶命している。
この戦い、鬼がしらの勝利だ。
うがっ。
うが。
ドラゴンの首から手を離す。
すると、鬼がしら周りにコングの群れが集まってくる。
そのコングの群れと鬼がしらが目を合わせる。
ウガッ。
軽く鬼がしらが頷くと、森の奥へと飛び込んでいく。
その後を、コングの群れが着いていく。
鬼がしらを親と認め、鬼がしらがそれに答えたようだ。
前の親の事もあるが、親がいないと生き続けられない。
それが、自然の摂理なのだ。
『ドラゴンが死亡。鬼がしらが勝利したようです。』
「くそっ!」
その戦いの結果は、本部へと知らされる。
それを聞いたギルド長が、拳を壁に打ち付ける。
最後の希望を失った絶望は、遥かに大きい。
「それで、他の鬼は?」
『エリアのモンスターを蹂躙しながら進んでいます。その被害、四十。』
「エリアですらも無理なのか。だが、崩壊の速度が遅れているか。」
最初よりも、崩壊する速度が遅れている。
モンスターを蹂躙しているとはいえ、その戦闘で崩す速度が遅れているのだろう。
「この時間が最後の希望か。」
絶望的な状況だが、ギルド長は諦めない。
すぐさま、新たな作戦を考え出す。
その時、部屋の扉が開く。
「ギルド長! 最後のハンターを送りました!」
開いた扉から現れたのは、ギルドマスターであり付き人のストロークだ。
鬼の対策として送るハンターの確認をしていた。
どうやら、集めた全てのハンターを送ったようだ。
「本当かっ、ストローク?」
「はい。確認した者は全て。」
「そうか。なら、我々もすぐに出るぞ!」
「えぇ、準備は済ませていますよ。」
ギルド長とストロークは、部屋を出て自走船へと向かう。
鬼達を止める為に、ギルド長自ら動き出す。
「これ以上、すきにはさせん。」
今もなお暴れる鬼達。
それから逃げる避難民。
それを助ける為に動くハンターギルド。
この地獄は、まだまだ続く。
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