第43話 鬼 VS エリア

 そこは、見渡す限りの森が広がるエリア。

 所々には大きな岩の壁があり、その下には多くの生き物が住まう。

 そんな場所へと、吹き飛んだ山脈の一部が降り注ぐ。

 

「こちら支援施設。作戦は成功。鬼達はエリアの山脈を破壊し潜入しました。」


 本部へと送られた報告は、エリアの支援施設からのものだ。

 それを聞いたギルド長が聞き返す。


『……山脈からか。今はどうしてる?』


「鬼達が戦闘を開始。それと共に、エリアの一部が崩れ始めています。」


 その報告通り、エリアでは鬼同士が争い始めていた。

 それにより、エリアもまた崩れ始めているようだ。


『しかし、エリアは広い。時間を稼いでくれるはずだ。』


「そうですね。あっ、近くの巣の飛竜が鬼の方へ!」


『飛竜? 巣を守りに来たか。』


 飛竜とは、翼を生やした二足歩行の竜。

 体が大きくない分、空や地上を素早く動ける。

 そんな飛竜が、争いを続ける鬼達へと向かう。

 そして、そのまま草食鬼竜へと襲いかかる。


ずしーーーーーーん!


 襲撃を受けた草食鬼竜は、押し倒されてしまう。

 流石の草食鬼竜も、加速を付けた攻撃には耐えられなかったようだ。

 上に伸し掛かった飛竜は、草食鬼竜の首に噛み付いた。

 その時、水鬼達が動いた。


キシャアアアアアオンッ!


 飛竜に向けてブレスをぶつける。

 それを受けた飛竜は、耐えきれずに吹き飛ばされてしまう。

 すぐさま立て直して羽ばたいた飛竜だが…。


グオオオオオオオオオオッ!


 飛びついてきたコングの鬼がしらに、胴体を掴まれてしまう。

 そして、そのまま落下すると共に地面に叩きつけられてしまう。

 その衝撃で地面が大きく割れ、飛竜が割れ目へと飲みこれていく。

 それから逃れるように、鬼達が避難する。


戦闘区域の崩壊。それと共に、鬼達が別の方向に動き始めました。


早いな、もう少し争って欲しかったんだが。


 そんなギルド長の思惑とは別に、鬼達が散らばっていく。

 それは、多くの生き物の巣を踏み荒らす事を意味する。

 それにより、追い出された影が草食鬼竜を襲う。


グウウウウウオオオオオオオ!


 その正体は、草食鬼竜よりも一回り小さい肉食の大竜。

 骨格は同じだが、大きく違う点としては首が草食よりも長い。

 そんな大竜が、巣を荒らしに来た敵に突っ込んだ。


グオアッ!


 突進して、草食鬼竜をよろめかせる。

 その隙を狙って、首元に噛み付いた。

 そして、食いちぎろうと引っ張るが…。


アアアアアアアアッ!


 悲鳴のような雄叫びを上げて飛び退く大竜。

 そして、悶絶するように顔をあちこちにぶつけ始める。

 その口からは、粘り気のある液体が流れている。

 草食鬼竜の体液を受けて苦しんでいるのだ。

 その隙を、草食鬼竜は逃さない。


グルオオオオオオオオオオオオオオッ!


 暴れる大竜の下に頭を押し付ける草食鬼竜。

 そのまま、掬い上げるように吹き飛ばす。

 飛ばされた大竜は、空高くへと舞い上がる。

 その直後、草食鬼竜へと小さな影が集まってくる。


ガアッ。


ガウッ。


 その正体は、大竜の子供達だ。

 草食と違って、子供を連れ歩くのが肉食だ。

 それらが、親の敵として草食鬼流を襲いかかるが…。


グルアアアッ!


 容赦ない尻尾が、子供達を吹き飛ばす。

 すると、それを見た親が突っ込んでくる。

 子供を守るためだろう。

 だがそれは、突然の爆発で防がれる。


ずどーーーーーん!


 辺りに広がる爆発が、親も子供も森の樹でさえも吹き飛ばす。

 更には、赤い液体と共に爆炎の壁が吹き荒れる。

 それにより、辺りが赤い海へと変わり果てる。

 その近くでは、地割れが森を突き進む。

 そして、そこからは水鬼竜が飛び出した。


キシャアアアアアッ!


 飛び出した水の鬼竜は、そこにいた小さな飛竜へと噛み付いた。

 先程の飛竜の子供だろう。

 その子供を咥えたまま、地面の中へと潜ろうとするが…。


グアオッ!


 もう一匹の大きな飛竜が、水鬼竜の首に噛み付いた。

 子供たちの親、つまり飛竜のつがいだ。

 首を咥えたままの飛竜は、水鬼竜を引っ張り出そうと力を込める。


グッ、グオッ、グオアッ!


 何度も首を引っ張ると、そのまま地面へと叩きつける。

 すると、その勢いで水鬼竜の口から子供が離れる。

 それに怒った水鬼竜が飛竜にブレスを放つが、飛竜は飛んで避ける。


グガアアアアアッ!


 お返しとばかりに、水鬼竜へと炎のブレスを放つ。

 しかし、二度目の水鬼竜のブレスが飛竜のブレスを粉砕。

 更に、炎のブレスを貫いたブレスが飛竜に直撃する。

 それにより、落ちてきた飛竜を水鬼竜が咥える。


キシャアアアアアッ!


 咥えた飛竜をあちこちにぶつけ弱らせると、地割れの中に引きずり込む。

 その直後、大きな渦が発生し子供もまとめて引きずり込む。

 その渦の先で、大きな羽の鳥が羽ばたいた。


ピギャアアアアアアアアッ!


 鱗で覆われた鳥竜と違って、全身が羽毛の大きな鳥だ。

 渦に驚いて飛び上がったのだろう。

 その大羽鳥の頭上から、鳥鬼竜が飛びかかる。


ずどーーーん、ごごごごっ!


 そのまま地面に押し付けるように落下する鬼鳥竜。

 大羽鳥は、鬼鳥竜の爪に捉えられて動けない。

 すると、仲間を助けようと三匹の大羽鳥が飛びかかる。


ピギャッ。


 まずは、ー匹目が鬼鳥竜に襲いかかる。

 しかし、鬼鳥竜が翼をぶつけて吹き飛ばす。


ピギャァ。


ピギャッ。


 すると、今度はもう二匹が順番に襲いかかる。

 鬼鳥竜が一匹目を蹴飛ばすと、もう一匹を尻尾で叩き落とす。

 華麗に攻撃を決めた鬼鳥竜だが、そこに岩が落ちてくる。


ウキャキャッ。


 岩が飛んできた方を見ると、大きな猿のモンスターがそこにいた。

 普通のコングと違い、顔と体が小さく腕が長い。

 そんな大猿が、新たな岩を放り投げるが…。


クエエエエエエエッ!


 強烈な風を起こし、岩ごと大猿を吹き飛ばす。

 その隙に、爪から逃れた大羽鳥が空へと逃げるが…。


キシャアアアアアッ!


 飛び出てきた大きな蛇が丸呑みをする。

 更に、それでは足りないと鬼鳥竜に突っ込むが。


クエエエエエエエッ!


 尻尾で首を叩いて逸し、首元を咥え込んだ。

 そのまま鞭の様に振り回し、起き上がった大猿に叩きつける。


ウキャアアア!


 吹き飛んだ大猿が悲鳴をあげる。

 すると、森の奥から大猿の大群が押し寄せる。

 それを見た鬼鳥竜は、回転を起こして竜巻を作り全てを吹き飛ばす。

 そんな鬼鳥竜は、暴れる大蛇を咥えたまま空へと飛び去る。

 そうしながらも、逆らう敵を潰しながらエリアを進む鬼達。


「エリアの崩壊度、三十を超えましたっ。止まりません!」


『なっ、同じモンスターでも無理と言うのかっ。』


 新たなモンスター達が襲いかかるも歯が立たない。

 いずれも、崩れゆく地面の下へと沈んでいく。

 その時だった。


グアアアアアアアアッ!


 森に雄叫びが広がる。

 直後、大きな炎が空へと走る。


「な、なんだっ。」


 支援施設の上の部屋に備えられた部屋から職員が見渡す。

 しかし、樹に隠れて見る事が出来ない。

 その上がった炎の元で聞こえたのは確かだ。

 そこには、何かに咥えられた黒い塊があった。


グオッアアッ!


 それを咥えた何かは、地面へとそれを吐き捨てる。

 その周りにはコングの群れ。

 何かは、その群れへと近づいていく。

 後ずさるコングの群れ。

 すると、そこにもう一つの影が現れる。


グオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!


 その影の正体はコングの鬼がしらだ。

 そこに飛び込むように現れると、そのまま何かの影へと殴りつける。

 その勢いで、何かの影が支援施設から見える場所へと吹き飛んだ。

 その正体は…。


「ドラゴンっ。」


 四足で地面に立ち、背中には大きな翼が生え長い首と尻尾を持つ生き物。

 その口の牙と手の爪には、鉄ですらも歯が立たない。

 物語のモンスターの象徴として描かれる程の有名で最強のモンスター。

 それがドラゴンだ。


グオオオオオオオオッ!


 そのドラゴンが立ち上がると、鬼がしらに向かって咆哮する。

 そして、殺意を向けた眼で鬼がしらを睨む。

 それに対して、鬼がしらも睨み返す。


ウグオオオアアアアアッ!


グオオオオオオオオオッ!


 睨み合い吠え合う二匹のモンスター。

 そして、同時に相手に向かって飛びかかる。

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