第41話 鬼達の進軍
朝日が顔を出し大地を照らし始める。
その大地で、あらゆるものが吹き飛ぶ。
それと共に、人の悲鳴も上がる。
「逃げろ! 逃げるんだああああああっ!」
逃げ惑う人々が、迫る脅威から逃げる。
そこに、一陣の風が吹く。
すると、逃げ惑う人々同士で争い出す。
「おい、何をするっ。う、うわああああっ!」
各地で争い合う人間の声が響き渡る。
それに引き寄せられるように影が落ちる。
そして、人の群れの中へと着地する。
そこに現れるのは、鬼鳥竜。
争い合う人間を食べ始める。
「森だ! 森に隠れろ!」
森の近くにいた人々は、その中に隠れた。
遮蔽物の中にいた方がマシと考えたのだろう。
すると、森が丸ごと吹き飛んだ。
吹き荒れる樹や土と人の群れ。
そこに現れるのは、コングの鬼がしら。
全てを吹き飛ばしながら突き進む。
「山だ! 急いで登れ!」
山を登りだす人々。
高い所に逃げれば追って来ないだろうと考えたのだろう。
すると、山が爆発し砕け散る。
それに巻きこまれた人の群れが空へと吹き飛ぶ。
そこに現れるのは、草食鬼竜。
大地を赤い海に変えていく。
「うわあっ、地面がっ!」
砕けた地面から水が走る。
その地面の中から現れた水の柱が、更に地面を砕いていく。
そこから飛び出た影が、逃げ遅れた人の群れを食い荒らす。
そこに現れるのは、水鬼竜。
割れた地面に出来た道を次々と切り開いていく。
「助けてくれええええっ!」
「ハンターはどうしたっ!」
助けを求める人々。
しかし、助けは来ない。
必死に逃げるも、簡単に命が散る。
鬼の前に、人は手も足も出ない。
それからハンターが着いたのは、被害が大きく広がった頃だ。
「逃げろ! 全力で走れ!」
逃げ惑う人々の中を自走船が走る。
その上から、ハンター達が叫んでいる。
避難民を逃がす為、鬼達を逃がす為。
しかし、それらの自走船が上空から降ってくる大岩に叩き潰されてしまう。
「ぐあっ!」
「ちくしょうが! 隠れてないで出てこ…。」
投げ出されたハンター達が、襲撃を行った鬼へと怒鳴る。
すると、そのハンター達の上へとコングの鬼がしらが降ってくる。
土と共にハンター達が吹き飛んだ。
奴らが隠れる訳がない、逃げる訳もない。
そのまま、人を叩き潰しながら進んでいく。
こうして、更に被害が増えていく。
そして、その情報が本部へと知らされる。
「六の地区からの報告! 七の地区が崩壊! 鬼を止められなかったそうです!」
「何だとっ!」
情報を知らされたギルド長が叫んだ。
送り込んだのは、上級のハンター達だ。
それが、一夜にして滅んだというのだから無理もない。
「鬼はどうなった!」
「各地に散らばりこちらへと進んでいるようです! 被害は甚大のもよう!」
「くっ、ハンターはどうした!」
「たどり着くなり崩壊しています! もはや、鬼達を止められません!」
「ぐうっ!」
あまりの事に頭を抱えるギルド長。
想像していた以上の被害だ。
必死に新たな作戦を考える。
「罠だっ。奴らの先に全ての罠を集結させるんだ!」
「了解っ! 指示を出します!」
六の地区へと指示が飛ばされ、ハンターへと伝達される。
すると、鬼が来るであろう場所に罠が張られていく。
その横に、武器を構えたハンター達が控える。
それからしばらくの事。
「鬼が来たぞおおおおお!」
ハンターの一人が叫んだ。
その直後、少し先の大地が吹き飛んだ。
その吹き荒れる大地の中から、コングの鬼がしらが現れた。
「鬼がしらって奴か!」
「突っ込んでくるぞ!」
コングの鬼がしらが突っ込んでくる。
その前には仕掛けられた罠がある。
仕掛けた場所に間違いは無い様だ。
鬼と罠の距離が縮んでいく。
「かかれっ!」
その時を祈りながら待ち構えるハンター達。
すると、その祈りが届いたのか鬼がしらが罠を踏み込んだのだが。
ずごーーーーーーん。
罠ごと地面が吹き飛んだ。
その罠は、ハンター達の視界の前で砕け散らばっていく。
しかし、それだけでは終わらない。
「拳が来るぞっ!」
ハンター達を見つけた鬼がしらが拳を振り下ろす。
それを受けたハンターは、軽く潰されてしまう。
その一撃に迷いは無い。
「こちらを敵と認識しているのかっ!」
「まずいっ、来るぞ!」
鬼がしらの目には、明らかな殺意が籠もっている。
人類を敵と定めたものがする目だ。
当然ながら、殺める事に躊躇はない。
その殺意によって、あっさりと散っていくハンター達。
その事が、本部へと知らされる。
「鬼がしらが罠を突破!」
「なっ!」
「他の鬼達も罠を突破しているようです!」
「ふ、ふざけるなぁ!」
怒り任せにギルド長が吠える。
どうやら、他の鬼達も同じく罠を突破しているようだ。
「いったいどうしてなんだっ。」
「どうやら、罠そのものを踏み砕いているようです。」
「なっ、小型のドラゴンなら捕まえれる罠なんだぞ!」
本部が扱うぐらいなのだから強度もある。
それほどの罠が、作動する前に踏み砕かれたのだ。
「どうすれば、奴らは止まるんだ! 何をすれば!」
答えられるものはいない。
それも、当然の事だろう。
全ての力をぶつけた後なのだから。
「この先の地区は大きな町がある場所です。ここで止めないと沢山の被害が出ますよっ。」
「分かっている。分かっているのだがっ。」
大陸の中心ほど大きな町が沢山ある。
そうなると、沢山の人も住んでいる。
しかし、そんな事はギルド長も知っている。
「取り敢えず、馬車をかき集めるんだ!」
「していますが、足りませんよ。」
今まで上手く逃げれたのは、比較的人が少ない町だったからだ。
大きな町に住むような人を運ぶだけの馬車はない。
「やはり、止めるしか無いかっ。しかし、ドラゴンすら止める罠も効かないとなると。ん? ドラゴン?」
悩んでいたギルド長が、ハッとしたように顔を上げた。
何かに気づいたのだろうか。
「五の地区の海沿いにエリアがあっただろう。そこにドラゴンが生息していたはずだ。」
「えぇ、報告されています。」
実は、エリアは他にもある。
そもそも、エリアの監視の為に人が集まり流通も生まれる。
町の側にエリアがある事は不思議ではない。
「よし、そこに鬼達をぶつけよう。モンスターにはモンスターだ。」
「しかし、そうなると六の地区の避難民はどうするんです?」
「エリアの反対側に避難させる。それと同時に、エリアに鬼を誘導する。」
片側は避難民で、その反対側に鬼達を誘導する。
そうすれば、すれ違う事は起きないだろう。
避難民の犠牲も減らす事が出来る作戦だ。
「なるほど。では、職員に知らせます!」
「あぁ、頼んだぞ。」
こうして、新たな作戦が伝えられる。
その間にも、犠牲者を作りながら鬼達は進んでいく。
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