第40話 鬼達の反撃
地震によって地面が割れていく。
海に面する地面を中心に広がっていく。
主に、鬼が争っていたあたり。
度重なる攻撃で、地面がダメージを負っていたのだろう。
それにより、地層がずれていく。
「なんだ?」
「じ、地面が。」
水鬼竜がいる場所の地面が割れる。
その割れ目の間に、水鬼竜が落っこちた。
そこに、瓦礫が落ちていく。
「地面の下に落ちたぞ。」
「や、やったのか?」
普通の生き物なら、このまま生き埋めになるだろう。
しかし、相手は鬼なのだ。
水鬼竜が落ちた割れ目が動き出す。
「いや、生きている。逃げろ。」
違和感に気づいたハンターが逃げ出す。
その直後、地面が渦を巻くように沈んでいく。
「な、泳いでるのか? ここは地面だぞ!」
ここには水一つない。
だけど、水鬼竜が泳いでいる。
地面の土を砕きながら泳いでいるのだ。
「大きくなってるぞ!」
「に、逃げろ!」
ハンター達が慌てて逃げていく。
それもそのはず、渦の大きさが段々大きくなってるからだ。
飲み込まれまいと逃げるハンター達。
しかし…。
ずどーーーーん!
渦の中から飛び出た水の柱が地面を割る。
すると、その割れ目からハンター達が落ちていく。
「「「うわーーーーーーっ。」」」
落ちたハンター達が、渦の中へと飲み込まれていく。
そして、そのまま渦の一部へと変わっていく。
「駄目だっ! 止まんねぇ!」
渦は留まることを知らずに大きくなっていく。
更には、自走船まで飲み込んで砕いてしまう。
岩も、自走船も、人も、全てを砕いて渦の一部に変えていく。
そして、地震の影響を受けたのは水鬼竜だけではない。
「うわっ、地面が揺れるっ!」
草食鬼竜の戦場もまた揺れていた。
足場に苦しむ草食鬼竜を、右へ左へと揺らす。
そして、そこら中の壁へと打ち付ける。
「おい、見ろ。奴の体の表面が剥がれていくぞ!」
「な、なんだありゃ!」
壁に打ち付ける度に、表面の黒い塊が取れていく。
そこからは、草食鬼竜の鱗が見えてくる。
更には、赤と黄色の混ざったような体液が飛び出してくる。
「なんだっ、ぐわあーーーー!」
その一部がハンターの上へ。
すると、そのハンターがもがき出す。
「あぢーーーーーっ!」
あまりの高温に手で払うも、そこに練り気のある液体が移る。
それを払おうとするも、そこに新たに付着する。
そして、肌が段々ただれていく。
「助けてっ、熱いっあっづいいいいいいい!」
「待ってろ! 今っ!」
当然、その対策は取ってある。
冷やして固める用の液体を手に取り蓋を開ける。
その直後、二人のハンターもろとも爆発する。
ずどーーーーーん!
「「ぐあーーーーーーっ。」」
爆発により、ハンター達が吹き飛んだ。
しかも、そこに目掛けて体液が大量に降ってくる。
爆炎の中から飛び出た液体が辺りに散る。
しかし、ハンター達は吹き飛ばされた体勢のままで避けられない。
「がああああああああっ!」
爆発をもろに受けて倒れるハンター達が、飲み込まれていく。
それを受けたハンター達の絶叫が響く。
「ま、まずい!」
「ここは逃げましょう! 早く船に!」
急いで逃げようと、自走船へと逃げるハンター達。
そのまま自走船へと辿り着こうとした時だった。
下から吹き出た爆炎で、自走船が吹き飛ばされてしまう。
「ぐわあーーーーっ!」
吹き荒れる爆炎は、自走船を砕いて灰へと変える。
中の人間ごと、ちりと変わる。
しかも、爆炎はそこからだけではない。
「か、囲まれたぞ!」
見渡せば、あちこちから爆炎の柱が立っている。
その爆炎が、ハンター達の逃げ道を塞いでいく。
「ど、どうすんだよ!」
「くそっ、固める液体ぶっかけて道を作るしかねぇ。」
「そ、それだ! 急ごうぜ!」
幸いにも、赤い液体を固める道具がある。
各ハンターに配られたそれを取り出し爆炎へと突っ走る。
その時だった。
グオオオオオオオオオオッ!
後ろからの雄叫びに、ハンター達が振り向いた。
そこにあるのは、いまだに立ち込める爆煙。
その中から、草食鬼竜が現れる。
しっかりとした足で、ハンター達へと迫る。
先程の爆発で、不安定な足場ごと吹き飛んだのだ。
ふ、ふざけやがって!
液体の入った瓶を戻して武器を握るハンター達。
そして、そこに再び爆発が迫る。
更に場所は変わって鬼鳥竜と戦う戦場。
二匹と同じく、ここも地震の影響を受けている。
ここは、地割れが起きている海の近くだ。
その地割れが、鬼鳥竜の足場の地層をずらしていく。
「はっ、これなら風に耐えながら戦えるぜ!」
割れた地面に足を引っ掛けるハンター達。
これで、風に耐える余裕が出来る。
でもそれは向こうも同じ。
ずれた地層に足をかける鬼鳥竜。
「あ、あいつ。真似しやがって。」
「だが、それだけでどうにかなるものか。」
足で耐えたとて、翼に受ける風の影響は大きい。
なので、上手く動く事が出来ないであろう。
しかしその考えは、簡単に打ち砕かれてしまう。
足場を蹴った鬼鳥竜が回る。
「なっ!」
回った事により、風もまた鬼鳥竜の周りを回る。
その風は壁となり、鬼鳥竜に迫る風を流す。
「何かする気か。警戒しろ!」
異変に気づいたハンターが、仲間たちへと呼びかける。
しかしそれはもう遅い。
何故なら、既に反撃が始まっているからだ。
風の壁で突風を防いだ鬼鳥竜がもう一回転。
さらに、もう一回転。
まだ一回転。
まだまだ一回転。
とにかく回り続ける鬼鳥竜。
すると、次第に風の壁が竜巻へと変わる。
「報告にあった奴か。自走船まで下がれ!」
それを見たハンター達が引いていく。
何故なら、その情報は知らされていたからだ。
次第に大きくなっていく竜巻に対して、自走船が下がっていく。
「頼んだぞ!」
ハンター達が自走船の後ろに飛び込んだ時だった。
自走船から炎が飛び出す。
その炎は、渦巻く竜巻へと襲いかかる。
すると、竜巻に炎が混ざっていく。
良いぞ! そのまま続けろ!」
「おらっ、蒸し焼きにしちまえ!」
炎を巻き込んだ竜巻で鬼鳥竜を焼き尽くすつもりのようだ。
しかし、竜巻は止まらない。
それどころか、炎の混ざった竜巻が勢いをまして大きくなっていく。
「どうなってんだ?」
鬼鳥竜が炎に焼かれる気配がない。
炎をまとったまま竜巻は渦巻き続ける。
次の瞬間、渦の勢いが一気に増す。
それにより、炎が自走船を襲う。
「ぐあっ!」
「くそう、なんで効かねぇんだ!」
突風の勢いは、留まることを知らない。
勢いを増した突風は、炎をかき消しながら大きくなる。
「はっ、笑えるぜ。」
ハンターの一人が乾いた笑いをしながら呟いた。
その直後、突風に巻き込まれて吹き飛んだ。
他のハンターも、自走船も、吹き飛んだ。
地面の土も吹き飛んだ。
この台地に、二度目の巨大な竜巻が巻き起こったのだった。
各地から聞こえる破壊の音。
その音に影響されてか、コングの鬼がしらも動き出す。
地震により、上に被さる土が減る。
そのおかげか、埋まっている両腕が土から出る。
「しまった!」
ジェネルが気づくも、どうする事も出来ない。
鬼がしらが、腕を地面について力を込める。
「くっ、早くとどめを!」
「分かってらぁ!」
ハンター達が鬼がしらへと向かう。
そのまま武器を叩き込もうと構えるが。
ウオオオオオオオオオオオオッ!
それよりも先に、鬼がしらが土から出る。
その勢いで、空に散った土がハンター達を襲う。
「ぐああっ。」
土に埋もれるハンター達。
代わりに、鬼がしらが自由になる。
「遅かった。」
対処した所でどうにもならなかっただろう。
それでも、止められなかった事実がジェネルに襲いかかる。
自由になった鬼がしらが高く跳び上がる。
「に、逃げて!」
「えっ。」
土から這い出ようとしたハンター達に呼びかけるジェネル。
しかし、呼びかけも虚しく呆けた顔のまま鬼がしらの拳に潰されるハンター達。
そして、そのまま拳は全てを吹き飛ばす。
「きゃあっ!」
ジェネルもまた小竜と共に飛ばされる。
空へと吹き飛ぶハンター達を目に焼き付けながら。
ただ、幸いにもジェネルが吹き飛んだのは横だ。
「ぐうっ。」
地面に何度も体を打ち付けながら転がっていく。
それから止まったのは、かなりの距離を転がったときだった。
側には、小竜も落っこちる。
「ううっ。」
呻き声を上げながら、薄っすらと目を開ける。
そこには、雄叫びを上げながら何度も拳を地面に叩きつける鬼がしらの姿があった。
(勝てるわけがない。)
心の中で呟くジェネル。
その圧倒的な力で、心がへし折れたのだ。
(無理よ。人間が勝てる相手じゃない。)
抵抗する気も起きない。
このまま意識を失い殺されるのを待つ。
その時だった。
「おい。あんた、何してるっ。」
「?」
「つーかどうなってんだよ。これ。」
聞き覚えのある声だ。
その声がする方を見ると、三匹の小竜がそこにいた。
その上には、ベージュ達三人がいた。
「どうしてここに?」
「避難民が少ねぇって思ったから見に来たら、鬼がしらに吹き飛ばされるあんたが見えてな。どうやら、生きてるよな。」
どうやら、ほとんど来ない避難民達の様子を見に来たようだ。
そうしたら、先程の現場に出くわしたようだ。
「おい、気づかれるのも時間の問題だぞ。」
「だな。急いで逃げるぞ。」
鬼がしらとの距離は近い。
砂埃が隠してくれてるが、いつ気づかれるかは分からない。
しかし、ジェネルは起きようとしない。
「行って頂戴。私が逃げる訳にはいかないわ。」
「言ってる場合か。これ以上、あんたがいてどうなるんだっ。」
「何も出来なかった。だから私は。私もここで。」
ハイグルのように命をかけて食い止める。
恐らく、そのつもりだろう。
「はぁ、ハンターってのは上も下もだな。」
「それがハンターよ。」
「だからって、むやみに命をかけるもんじゃねぇだろうに。」
命をかけるのは、ハンターにとって当たり前の事だ。
しかし、無駄に散らす事ではないはずだ。
「いいか? ここで死んだら終わりだ。でも、生きてりゃ救える命もあるだろう。違うか?」
「でも、私なんかに。…きゃっ。」
思い悩むジェネルを立ち上がった小竜がくわえる。
どうやら小竜は、まだ戦う気のようだ。
「どうやら、そいつはまだやる気のようだぜ。お前が諦めてどうする。」
「そうですよ。マスター。」
「ん? あんた達は。」
声がした方を見ると、小竜に乗った職員達がいた。
街に残っていた職員達だ。
ベージュに近づくと、紙の束を手渡す。
「これは?」
「鬼達との戦闘の記録です。勝てないと見込んで情報を集めたんです。勝てる者たちに託す為に。」
受け取ったベージュが中身を見る。
そこには、三匹の戦い方が書かれていた。
「情報を伝えてくれた職員は落とされて殺されました。そうなると知った上で、これを伝えてくれたんです。勝つために。その上司の貴方が諦めるんですか?」
「それは。」
ここで諦めたら、部下の命を無駄にしてしまう事になる。
それが上司として正しい事なのだろうか。
そんな話をしていると、足音がこっちに近づいてくる。
「気づかれたか。急ごうぜ。」
どうやら、砂埃の向こうが騒がしいと気づいたようだ。
こちらに向けて歩いてきている。
「逃げましょう。勝つために。」
「…分かったわ。」
小竜に降ろしてもらったジェネルが背中へと乗り上げる。
その間にも、影が見えるまで近づいてきている。
「まじでやばいって!」
「大丈夫。逃げましょう!」
「おし、行くぜ!」
受け取った資料をファイルに入れて鞄に戻したベージュは、小竜を走らせる、
その後を、他の小竜が一斉に追いかける。
そして、砂埃の向こうから鬼がしらが現れる。
しかし、そこには誰もいない。
何とか間に合ったようだ。
鬼達を残して、一同は崩れ始めている大陸から逃げていく。
そして、その後を鬼達が追いかける。
邪魔な敵を消して動き出す。
バラバラに別れた鬼達が、大陸内部へと進軍する。
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