第36話 七の地区の脅威

 ハンター達が鬼を攻撃を与えていく。

 それに対して、鬼がしらが拳を振り上げる。


「来るぞ!」


 攻撃を受ける鬼がしらが地面を叩く。

 ハンターへと拳が迫るが、合図で下がりそれを避ける。

 それでも、その一部を掴んで持ち上げるが地面が柔らかく手から溢れる。


「なんだぁ、砂遊びか? つってな。てめぇの事は聞いてんだよ!」


 構わず攻撃を再開するハンター達。

 こうなる事は、事前に本部から知らされていたのだ。

 その状況を知らされたジェネルが呟く。


「鬼がしらは、地面の土を使って攻撃する。資料に書かれていた通りだわ。」


 ベージュ達によってもたらされた資料。

 そこには、鬼達の攻撃方法も書かれている。


「土を使うようだから掴む事すら出来ない柔らかい砂場を用意してあげたわ。上手く行って何よりね。」


 柔らかい砂ならば、掴む事も持ち上げる事も出来ない。

 それでも、掴んだ砂を投げるも空中でばらけてしまう。

 その中をハンターが進んで迫る。


「敵の攻撃は気にすんな! そのままぶちかませぇ!」


 地面の土を上手く活用する。

 だから、柔らかい砂地を選んだ。

 そのおかげか、鬼がしらは思うように攻撃が出来ない。

 そして、同じような事は他の場所でも起きている。

 草食鬼竜が、足を滑らして壁に衝突する。


「はっはーっ! あいつ転けやがったぞ!」


 体勢を立て直すも、再び滑って壁にぶつかる草食鬼竜。

 どうやら、上手く動く事が出来ないようだ。

 その隙を狙って、ハンターが雄叫びを上げながら迫る。

 その状況を聞いたジェネルが呟く。


「鬼と言っても大竜。不安定な体型だと、足場が悪い地面は堪えるようね。」


 アンバランスな体型だから、足場が悪い岩地を選んだ。

 こうも動きが悪いと、どうしようも出来ないようだ。

 さらに場所は変わって、高い崖に囲まれた場所。

 激しい水の柱が、崖を吹き飛ばす。


「はっ、どんどん崩してけっ!」


 上から破片が降ってくるも、ハンター達は動じない。

 何故なら、破片が降ってくるのはハンターにだけではないからだ。

 実際に、破片の一部が水鬼竜に直撃する。

 その状況を聞いたジェネルが呟く。


「その調子よ。水鬼竜のブレスは、全てを砕く。ならば、砕かせてあげればいいだけ。」


 破片を砕こうと未鬼竜が上へとブレスを吐く。

 しかし、それが崖をさらに崩して破片を降らす。

 その岩の影から接近したハンター達が斬りかかる。

 さらに場所が変わって、激しい風の吹く海の近く。

 空中の鬼鳥竜が、風に煽られ大勢を崩す。


「ここなら、奴の翼も粉も封じられるだろう。恨むんなら、その自慢の大きな翼を恨むんだな。」


 羽ばたこうと翼を広げれば、強い風が襲いかかる。

 大きい翼なら、その力も大きいはずだ。

 当然ながら、それぐらい強い風なら粉程度なら簡単に吹き飛ばしてしまえるだろう。

 その状況を聞いたジェネルが呟く。


「鬼鳥竜の弱点は強力な風。これぐらい強い風なら恐れるものは何もないでしょう。」


 風が強ければ、自慢の粉も翼も無力。

 こうして、各地の鬼を封殺する。

 それぞれの鬼の特徴から対策をねった事により出来た技だ。

 そして、それを叶えるのがこの自然の環境。

 様々な環境がおりなす、七の地区だから出来る技。


「どうかしら、七の地区を堪能してくれているかしらね。まぁ、例の資料のおかげで、上手く対応出来た所もあるけど。」


 例の資料による情報のお陰で、実践に出来た作戦だ。

 それがなければ、こうも上手くはいかなかっただろう。

 そう考えている間にも、ハンター達の攻撃が続く。

 それに対して、鬼達が反撃するもやはり上手く行かない。

 こうなれば、鬼達もただのモンスターだ。

 しかも、人間には環境のデメリットは小さい。

 環境を生かしたハンター達の攻撃を成すすべもなく受けていく。


「これで、どうよ!」


「全然怖くねぇこのまま行くぜ。」


 ハンター達の優勢で戦闘が進む。

 鬼達の反撃の様子は見られない。

 誰もが勝利を認識するその時だった。


ぐおおおおおおお。


 どこからか、雄叫びが聞こえた。


「ん? いったい何が。」


 テントから飛び出したジェネルが辺りを見渡す。

 複数の声が重なったようなのが聞こえてくる。


「後ろから? そんなまさか?」


 声が聞こえてきたのは、鬼と戦う場所とは逆の方からだ。

 嫌な予感を感じるジェネルに職員が慌てたように声をかける。


「六の地区から連絡です!」


「六の地区から?」


「鬼がしらが現れたそうです!」


「えぇっ!?」


 突然の情報に、驚愕するジェネル。

 それもそうだろう、六の地区は戦場とは逆の位置にある。

 そんな所に、鬼がいるはずはない。

 なにより、今戦っているはずだ。


「本当なの? なんでそんな場所にっ。」


「それが、コングの群れに襲われたと思ったらその親が現れたそうです。」


「コングの群れ? 確かに、資料に書かれていたけど。でも、消息は途絶えている。てっきり全滅したものかと思ってたけど。」


 例の資料には、確かに鬼がしらの子供の事が書かれていた。

 しかし、八の地区が突破された後の事は書かれていない。

 それ故、戦闘に巻き込まれて全滅したと考えていたのだ。

 それが実は生きていて、気づかぬ内に突破されていたとは考えられない。


「今は?」


「ハンター達が応戦しています。」


 どうやら、急に現れた鬼がしらとハンターが戦っているらしい。

 そんなありえない事に疑問に思うジェネル。

 すると…。


ぐおおおおおおおお!


 再び雄叫びが聞こえてくる。

 今度は、複数の声に一際大きな声が混ざっている。

 それに、一匹の鬼が反応した。


「大変です!」


「今度は何っ!」


「鬼がしらが移動を始めたようです!」


「なっ、一体何が起こってるのよ。」

 

 現場にも、雄叫びは届いていた。

 それを聞いた鬼がしらが、声の方を向いて吠えた。

 そして、一瞬の内に姿を消した。


「き、消えたっ。どこだ!」


 突然の事に、ハンター達が狼狽える。

 しかし、上にある気球からは見えていた。


「奴は跳んだ! 急いで追ってくれ!」


 その言葉に、ハンター達が慌てて自走船に乗り込んでいく!

 そして、移動した鬼がしらの後を急いで追いかける。

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